ガレリア・イスカ通信

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2017年 09月 19日

シャガールの夜会プログラム・カバー「Couverture de Programme de la Soiree...」(1972)

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一週間が土、日、月と三日で終わってしまうような感覚を覚えるようになって久しいが、今年ももう九月半ば過ぎであるという事実、また何処へも出掛けない、誰とも会わない、まるで引き籠りのように過ごしてしまっている自分に気付き、愕然としてしまう。連れ合いが行きたがっている「奈良美智展」の終了日も近づいてきている。

今回取り上げるのは、1968年にインドネシア第二代大統領に就任したスハルト将軍((Soeharto, Haji Muhammad Soeharto,1921-2008)夫妻を迎え、時のフランス大統領ジョルジュ・ポンピドー(Georges Pompidou, 1911-1974)夫妻主催により、ベルサイユ宮殿の劇場(Château de Versailles, Théâtre Louis XV )で1972年に11月13日に催されたバレエによる夜会のためのプログラムである。演目はバレエにはとんと縁がないので受け売りになってしまうのだが、20世紀を代表する振付家とされるモーリス・ベジャール(Maurice Béjart,1927-2997)の振り付けによるオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ(Salome)』をもとにしたリヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』の一場面「今宵のサロメはなんと美しいことか(Comme la princesse Salomé est belle ce soir(How beautiful Princess Salome is tonight)」とミハイル・フォーキン(Michel Forkine)が振り付けを行った、フレデリック・ショパンのピアノ曲を管弦楽に編曲した音楽によるバレエ『ル・シルフィード(Les Sylphides)』。

表紙絵は、1942年の『アレコ(Aleko)』(註1)を初め、幾つもバレエの舞台美術を手掛けたロシア出身のフランス人画家マルク・シャガール(Marc Chagall, 1887-1985)による青色を基調とする舞台背景画(décor)で、もう1点、それとは対照的に明るく華やかな色調で描かれた、シャガールが1958年から1959年にかけて舞台美術を手掛けたバレエ『ダフニスとクロエ(Daphnis et Chloé)』の舞台背景画が挿入されている。限定はおよそ600部で、招待者用に刷られたものであろう。このプログラムの評価は200~300ユーロというところである。シャガールは1963年にも夜会のプログラムの表紙絵を担当しており、そちらは1961年制作のオリジナル・リトグラフ(註2)が使われている。前に一度に入札金額を渋ったため、手に入れ損ねたことがある。たしか500ユーロ前後、邦貨にして6,7万円で落札されたように記憶する。昨年、フランスのオークション会社のひとつで、パリに本店を置くアデル・ノルドマン(Ader Nordmann)主催のオークションに出品され、見積価格500~600ユーロのところ、見積価格の下限の三倍、1500ユーロで落札されている。プログラムという、物としての役割を終え、リトグラフ自体の美術品としての価値に収斂した結果であるのかもしれないが、同時に、プログラムが特定の人たちに向けてのものであり、市場に出回らないという特殊性と相まって、稀少性が高められことも、その要因のひとつとなっているかもしれない。一方、歴史や文化的側面を語る上での証としての評価が直接価格に結びついたとは考えにくい。

プログラム本体の印刷は、国主催の催しということで、図版とは別に、1640年にルイ13世が設立した王立印刷工房(Manufacture royale d'imprimerie)を前身とするフランス国立印刷局(Imprimerie nationale, Paris)で行われている。もちろん組版職人によって組み上げられた活字による活版印刷である。

●作家:Marc Chagall(1887-1985)
●種類:Cover art
●プログラム:375x274mm(375x527mm)
●イメージサイズ:380x413mm
●技法:Offset
●発行:Imprimerie nationale, Paris
●限定:ca.600
●紙質:Arches
●印刷:Bussière Arts Graphiques, Paris
●制作年:1972
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Décor de Chagall pour Daphinis et Chloé. Offset, 258x362mm
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註:

1.現在、バレエ『アレコ(Aleko)』の舞台背景画4点のうち3点が青森県立美術館の「アレコ・ホール」に展示されていてる。以下、シャガールが舞台背景画(décor)等の舞台美術を担当したバレエ:
1942年:バレエ『アレコ』、音楽:チャイコフスキー
1945年:バレエ『火の鳥(L’Oiseau de Feu)』、音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
1958年~1959年:バレエ『ダフニスとクロエ(Daphnis et Chloé)』、音楽:モーリス・ラヴェル

2.シャガールのオリジナル・リトグラフ(M.383, 1961)を用いた夜会のプログラム、1963年、限定:600。373x279mm、プログラムの印刷:
フランス国立印刷局(Imprimerie nationale, Paris)

Programme de la soirée donnée au Château de Versailles, Théâtre Louis XV le 30 mai 1963 en l’honneur du roi et de la reine de Suède par le général de Gaulle président de la République française.
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# by galleria-iska | 2017-09-19 14:13 | その他 | Comments(0)
2017年 08月 24日

パーケット・エディションの案内「Special offer for Parkett Editions」(2002)

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1984年に創刊され、今年の秋に通号100/101号を迎えるスイスの美術雑誌『パーケット(Parkett)』は、常に現代美術の最新の動向を展覧会情報とその評論による特集によって伝えてきた専門性の高い美術雑誌である。今回取り上げるのは、2001年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された“小さな美術館(the small museum)”を標榜するパーケット・エディション(Parkett Editions)の展覧会の反響に応えるため、2002年当時パーケット社が保有していた“パーケット・エディション(Parkett Editions)”の中から22種類を特別価格での提供する案内(裏側が申し込み用紙となっており、リストには22作品を掲載)と、それに付けられた各エディションの絵葉書全21点である。この案内が送られてきたのは、前に取り上げたことがある森万里子(Mariko Mori, 1967-)氏のマルティプル「Star Doll」(Parkett 54,1998)を購入していたからで、リストには草間弥生(Yayoi Kusama, 1929-)が2000年にパーケット59号のために制作した鏡を支持体とするシルクスクリーン・プリント「Infinity Net, 2000」(Silkscreen print on mirror, 255x210mm, Edition:70, $860)も載っている。近年値上がりの激しい草間作品の中にあって、この作品は今年7月1日、スイス チューリッヒのオークションハウス(Koller Auktionen AG, Zürich)に出品され、出版時の約10倍の値、9000スイス・フラン(CHF 9,000=約106万円)で落札されている。これで驚いていてはいけない。パーケットのエディションの中でもっとも高額で取引されているのは、ドイツの現代美術家ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter, 1932-)が1993年にパーケット35号のために制作した115点の油彩画である。そのうちの1点「Grün-Blau-Rot /Green-Blue-Red('789-59 Richter, 93')」(305x401mm, 115 unique works, oil on canvas)が2016年にロンドンのクリスティーズで開催されたセール「Post-War and Contemporary Art Day Auction」に出品され、手数込み230500ポンド(GBP 230,500=約3690万円)落札されている。画廊が提示する価格は間違いなく4000万円を超えることになるだろう。発売当初の価格が数千ドルであったので、100倍近くも値上がりしたことになる。リヒター恐るべし! 一方、我が「Star Doll」はと言うと、2004年にニューヨークのサザビースで3000ドル($3,000=約33万円)で落札されたのが最高値で、それ以降ずっと右肩下がりである...

●作家:Various Artists
●種類:Postcards
●サイズ:148x105mm(Box:120x160x8mm)
●技法:Offset
●発行:Parkett-Verlag AG, Zürich(Parkett Publishers, New York)
●制作年:2002
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註:

1.
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現在、パーケット出版から手に入れることができるポストカード集がこちら。168点のポストカードと64ページのテキスト。160x120x18mm(Susan Tallman, Deborah Wye, 「Parkett Collaborations & Editions Since 1984: New Postcard Set of All Artists' Editions with Text Booklet from Parkett's MoMA Show」Price Euro36.-/$48.-)
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# by galleria-iska | 2017-08-24 22:47 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2017年 08月 14日

美術手帖 第840号「Bijutsu Techo Vol.55 No.840」(2003)

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                 『美術手帖』創刊50周年記念特大号(Bijutsu Techo Vol.55 No.840, 210x146x48mm)
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            『美術手帖』の表紙(写真:村上 隆)(左)とフィギュアのパッケージの(右)

私の好きな作家のひとりに、現代美術の潮流の中にありながらも描くことに新しい地平を見出した、ドイツの鬼才、ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)がいる。そのヤンセンの素描をコレクションに加えた現代美術家の村上 隆(Takashi Murakami, 1962-)氏デザインによるフィギュア「Miss Ko2/Blond」が特別付録として付けられた『美術手帖』(第840号)が発行されたのは、今から14年前の2003年(発行日は10月1日とある)。価格は通常よりも割高の2200円であった。事前に発売予告を見ていたので、田舎には数が回ってこないだろうと、若くして亡くなってしまった友人と一緒に知り合いの書店に頼んで先行予約をしたのだが、それは単なる杞憂に過ぎず、普通に書店に並んでいた。ただ、大阪の製菓・食品メーカー、江崎グリコ株式会社(Ezaki Glico Co.,Ltd., Osaka)が2001年から同じ大阪の模型製作会社、海洋堂と組んで発売した大人向けの「タイムスリップ・グリコ」に触発されて村上氏が制作した、一個300円ぐらいで買えるフィギュア付きの“食玩(食品玩具)”(註1)と比べ、美術出版社の欲の皮(?)が突っ張っていたのだろうか、いわゆる“オマケ感”が欠落しており、即座に完売とはいかなかったようである。もっとも、造形物に関する興味は共通しているものの、パブリックな価値を形成していく美術と個の愉しみに埋没していく“オタク”の間には大きな壁が存在していたことも、その要因のひとつであるかもしれない。

『美術手帖』と相前後して発売された“食玩(村上隆のSUPERFLATMUSEUM)は、誰にでも手に入るアートという触れ込みであったが、その販売は東京を中心とする都市部に集中し、先の友人が何軒ものコンビニを回ったが、実物を見ることは無かった。アートに触れ合う機会が少ない田舎(それは反面、アートに関心がないというリスクを伴うのだが)にこそ、それなりの配慮があってもよかったのではないか思う。そうすれば資金的に余力のある都市部の人間がそれを求めて田舎に集まり、田舎の人間も刺激を受けるという、新しい流通の形を構築できたかもしれない。しかしながら、実際は、立て続けに発表されたシリーズの販売効率を考慮してか、大半が東京一極集中配布となったのである。そしてその販売戦略の根幹をなすのは、版画等の美術作品における稀少性を謳った限定販売という手法によって購買意欲を煽り(刺激という表現では生ぬるい)、意図的にプレミアム感を作り出すことにあり、結果として、美術品市場におけるプライマリー・マーケットからセカンダリー・マーケットへの作品の流れのように、一次販売から二次販売へと繋がっていくことを見越したものであったと言えなくもない。この企てに、『芸術起業論』を著した村上氏ならではの、作家主導のアートにおける経営論的な戦略の一端を見ることができるのではないだろうか。

画家はかつて、何か対象となるものを描くとき、図像によってそのものの本質を表象化しようという試みた。その意味で画家は科学者と同じ客観的な目と思考を持つ存在であった。そのような探究心によって、画家は自身の脳を通して見えているものをよりリアルに表現することへと突き進んでいくのだが、神の造形物としての自然の美を探究することが限界を迎えたとき-それは19世紀、機械文明の発達や写真の発明などによって、人間の創り出したものに自然を凌駕する可能性を見出した時と重なり合う-そこに人間社会における様々な現象が新しい風景として立ち上がってきたのである。そして20世紀後半、行き過ぎた人間の内面的風景(純粋抽象)の表象化や形象そのものの否定によって、自ら袋小路に迷い込んでしまったのも確かである。19世紀末にウィーンで活躍した心理学者で哲学者のフランツ・ブレンターノ(Franz Brentano、1838-1917)によれば:
"全ての心的現象(心)は中世のスコラ哲学者が対象の志向的内在性と呼んだものおよび、完全に明確ではないが、対象つまり内在的対象と我々が呼ぶかもしれないものによって特徴づけられる...心的現象はそれ自体の内に志向的に対象を有する現象だと定義できる"
突き詰めれば、人は自分が見たいものしか見ることしかできないのであって、純粋芸術の行き着くところは何も描かない、無のなかに有を見る、というジレンマに陥ることとなる。それは言語表象においては可能であるが、何らかの形をもって表現するという視覚表象の場合においては、表象されるものより対象とされる概念が先行し、そのような芸術表現においては作品は必然的に概念に付随・補完するものとなる。一方、現代美術のひとつの潮流であるポップ・アートに於いては、コピー、借用、引用、パロディー、翻案、オマージュといった手法がさかんに用いられることとなる。マルセル・デュシャンの反芸術の継承者たる彼らも、絵画(あるいはオブジェ)という形式を採りながらも、別な意味で描くことを否定しているのである。

フィギュアという“オタク”文化の象徴を美術(アート)の文脈の中にどう落とし込むかという命題に対し、1960年代のポップ・アートが大衆文化と密接に結びつき、それを一種の社会的風景として捉えたように、フィギュアをという一種箱庭的小宇宙を彫刻へと拡大・変容せしめることによって成功への扉を開き、ジャパニーズ・ポップの呼称で捉えられこととなった。このフィギュアの制作はそれをフィギュアにフィードバックさせ、美術(アート)の裾野の拡張を図ろうという試みのひとつであるが、両者の相互浸透により、境界がより曖昧になってしまっているのは否めない。

●作家:Takashi Murakami(1962-)
●種類:Multiple
●サイズ:115x47x41mm
●技法:ATBC-PVC, ABS(Lacquer Paint)
●題名:Miss Ko2/Blond(Takashi Murakami's Superflat Museum)
●出版:Edition BT Magazine(Bijutsu Shuppan-Sha Co.,Ltd.,Tokyo
●制作:Kaiyodo Co., Ltd. Osaka
●原型師:Bome
●限定:20000(?)
●制作年:2003
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青島 千穂(Chiho Aoshima, 1974-)と村上 隆によるオリジナル・カバーアート「ネオ・ヴィーナスの誕生」《Original cover art 「The Birth of Neo Venus」 by Chiho Aoshima + Takashi Murakami, 2003》

註:

1.“食玩”として販売された『村上 隆のSUPERFLATMUSEUM』各シリーズ

●『村上 隆のSUPERFLATMUSEUM-ニューヨーク・エディション(New York edition)』
2003年9月14日発売。3000x4種=12000個。@300円
●『村上 隆のSUPERFLATMUSEUM-六本木ヒルズエディション(Roppongi Hills edition)』
2003年10月18日発売。15000x6種=90000個。@350円
●『村上 隆のSUPERFLATMUSEUM-コンビニ・エディション(convenience store edition)』
2003年12月8日発売。30000x10種=300000個。@350円
●『村上 隆のSUPERFLATMUSEUM-アーテリジェント・シティ・エディション(artelligent city edition)』
2003年12月20日発売。24000x3種=72000個。@350円
●『村上 隆のSUPERFLATMUSEUM-ロサンゼルス・エディション(Los Angeles edition)』
2004年5月17日発売。30000x10種=300000個。@350円
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# by galleria-iska | 2017-08-14 20:29 | その他 | Comments(0)
2017年 08月 08日

奈良美智のマルティプル(?)「Yoshitomo Nara Gummi Girl」(2006)

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前回の記事の中で触れた奈良美智(Yoshitomo Nara, 1959-)氏が2006年にデザインした「グミガール(Gummi Girl)」を、今は種々雑多な物入れとして使っている古い箪笥の中から取り出してきた。お土産として貰った筈なのだが、連れ合いが所有権を主張し始めているため、中立地帯である箪笥に入れてある。「グミガール」の髪の色は栞にある茶と青の他、赤、緑、黄土の計5色が用意されていたのだが、連れ合いが選んだのは茶色だった。その子には「マローネ(Malone)」という名が付いているようなのだが、記号以上の興味はない。販売広告などには、グミを食べ終わった後は、アートグッズや小物入れとして使えると提案されている。確かにそうやって使っているうちに、傷んだり、飽きたりして、少しづつ数が減っていくのだが、こと「グミガール」に関しては、前にも書いたが、現在も生産継続中なので、一体どれくらいの数(エッシャーの“キャンディ缶”は6800個、村上隆のSUPERFLATMUSEUM、所謂“食玩”は3000個~数万個)になるのか見当もつかない。無くなって初めて、見えなかった、あるいは別の視点から見た意味(=価値)が浮き彫りになってくるものである。そういう観点からすると、この先も長期に渡って箪笥の肥やしになる可能性が高い。
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●作家:Yoshitomo Nara(1959-)
●種類:Multiple
●サイズ:160x165x75mm(Multiple), 169x169x77mm(Box)
●題名:Gummi Girl - Malone
●技法:Painted Plastic
●製造:S and O(Sweets and Objects), Omotesando Hilles, Tokyo
●制作年:2006
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                          「グミガール」の栞(表)
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# by galleria-iska | 2017-08-08 20:04 | その他 | Comments(0)
2017年 08月 02日

奈良美智展の案内「Yoshitomo Nara for better or worse」(2017)

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                         2017年新作「Midnight Truth」

少し前のことであるが、連れ合いが、現在愛知県豊田市の豊田市美術館で開催中の展覧会「奈良美智 for better or worse - Works 1987-2017」の案内を頂いてきた。案内は四つ折りで、海外の画廊が展覧会の際に使うメイラー(Mailer)によく見られる、開くとポスターになるようにデザインされている。制作中(?)の新作「Midnight Truth」が置かれたスタジオを撮影したのは森本美絵(Mie Morimoto, 1974-)という若手写真家で、彼女は制作中の奈良美智(Yoshitomo Nara, 1959-)氏とその制作風景を撮影した写真集も出しているとのこと。奈良氏の作品は注目の現代美術作家ということで、テレビや雑誌で見にすることはあるが、絵画作品(タブロー)は未だ目にしたことがない。田舎に住んでいると、都会に出て行かないかぎり、画廊でのリアルタイムの経験というものは先ず無く、数年のタイムラグが必ず付いて回る。奈良氏の作品についても、東京あたりで突然火が付いことは全く知らず、しばらく経って、知り合いの画商が見せてくれた、奈良氏の作品を特徴付ける、愛らしく可愛い仕草のキャラクターとは真逆の、悪い子ぶってこちらを釣り目で睨みつける女の子を描いた小さなドローイングによって、ようやくその存在を知ったのである。たったそれだけのことで、後はあずかり知らぬ世界での出来事のように時が流れ、やがて世界でも注目される現代美術の作家となって再び現れた。当然のことながら、絵画作品は全く手の届かないところに行ってしまい、唯一の接点と言えるのは、東京の森美術館に行った連れ合いが、お土産として買ってきてくれた「グミガール」だけである。自分としてはこの「グミガール」の容器を、遠くは1963年にオランダの版画家エッシャー(Maurits Cornelis Escher, 1898-1972)がデザインして作られた製缶メーカー、フェルブリファ社の創立75周年を記念するブリキ製のキャンディ缶「Icosaëder(Verblifa Tin Can)」(註1)、近くは村上隆の“食玩”(こちらは未だ、オタク文化の象徴的存在であるフィギュアの呪縛から解き放たれておらず、美術界からのアプローチには疑問が呈されるかもしれない)に通じる、一種のマルティプルと見ていたのだが、作家が変わればその意図も変わるのか、「グミガール」は今も生産が続けられ、キャラクターグッズとしての商品価値の方が優先されてしまっているように見える。エッシャーのキャンディ缶がクリスティーズ等のオークションにマルティプルとして登場するにも35年の時を要したことを考えると、「グミガール」の容器も、その第一義的な意味が剥ぎ取られるまでには、まだまだ多くの時間を要すことになりそうである。それまで生きているとは思えないが。

そんな繰言はさておき、連れ合いはどうしても豊田市美術館の展覧会場に足を運びたい様子である。ただ、入場料はもちろん、田舎から都会に出るにはそれなりの費用が掛かる。そのやり繰りをどうするか、思案に暮れる毎日である。NHKの日曜朝の番組で特集でも組んでくれないかと、淡い期待を抱いているのだが。そういえば、以前、山梨県にあるキース・ヘリング美術館からお誘いを受けたが、旅費等に掛かる費用を工面することが出来ず、未だに訪れていない。貧者は-自己責任と言われればそれまでだが-そうやって文化から疎外されていくのであろう。

●作家:Yoshitomo Nara(1959-)
●種類:Leaflet
●サイズ:297x210mm(594x420mm)
●技法:Offset
●写真:Mie Morimoto(1974-)
●発行:Toyota Municipal Museum of Art, Toyota
●制作年:2017
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註:

1.エッシャーのキャンディ缶
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●作家:Maurits Cornelis Escher(1898-1972)
●題名:Icosaëder(Icosahedron)
●サイズ:140x140x140mm
●技法:Printed tin box with embossed relief
●限定:6800 + 300 were produced to replace any defects
●発行:Verblifa(De Vereenigde Blikfabrieken), Krommenie
●制作年:1963

オークションハウスでの落札値:
1998年:Christie's Amsterdam.......US $456(€ 395, Dfl.865)
2012年:Christie's Amsterdam.......US$7,907(€ 6,000)
2013年:Venduehuis Den Hagg......US$1,060(€800)
2014年:New Art Editions..............US$1,425(€ 1,075)
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# by galleria-iska | 2017-08-02 20:24 | ポスター/メイラー | Comments(0)