ガレリア・イスカ通信

galleriska.exblog.jp
ブログトップ
2010年 08月 08日

キース・へリングのビニールバッグ「Pop Shop Plastic bag」(1985)

a0155815_2252149.jpg
a0155815_2252416.jpg

a0155815_22522694.jpg


キース・へリングが1986年のポップショップのオープンに向けてデザインしたトレードマークをアイコン化したキャラクターは、ステッカーやピンバッジ、紙袋に大量に刷りこまれ、また人目に触れる機会の多いビニールバッグにも使われている。モノクロ・ヴァージョンがオリジナルであるらしく、その後、カラーヴァージョンが幾つも制作された。キースの単純な輪と明快な色彩は、シルクスクリーン印刷によってさらに高められ、多くの若者の心を捉えた結果、街中、海辺、学校などでポップショップの宣伝に一役買うことになったことは想像に難くない。これまでに六種類のカラーヴァージョンの存在を確認しており、Pop Shop Tokyoヴァージョンを入れると七種類となる。

ひとつの美術作品として提示された訳ではないこのビニールバッグに刷り込まれた図像が、純粋な美術表現として意識化されるには、それが大量に生産され、消費されるという前提、つまり時間経過を伴う必要がある。これは通常の美術作品における図像の流布とは逆の発想であるが、現代社会においては、美術作品が一部のパトロンのために作品が作られることは無くなり、社会そのものが大量生産と消費によって維持されていることを前提にすれば、それはポップアートの方法論を更に先鋭化したものと言える。ヘリングは図像を作品というよりはメッセージと捉えており、従来の美術愛好家のような特定の層にではなく、簡潔な表現と視覚的な美しさ、そして端的なメッセージを理解できる全ての人々にたいして広く提示することを目指していた。ヘリングの図像は、ひとつの記号として認知されることで意味を終え、その図像は記憶として一端意識の底に降りていくことになる。しかる後、その物が与えられていた意味や役割、機能が失われると、今度は、物としての有り様ではなく、その物が生まれた社会背景や時代精神を象徴する意味を帯びた、新たな記号性を獲得するのである。そのとき図像は物に与えられた意味を超えた象徴的存在としての価値を獲得する。ヘリング自身においては、図像の流布とは、それが芽を出すかどうかは未知数ではあるが、ある意味布教活動と同じであると言える。ヘリングがそのことの意味を自己の作品(製品)の中に忍び込ませているとするならば、それを取り出すことで、ヘリングのポップアートの文脈を如何に自己表現に取り込んでいる作家であるかを知る手掛かりとなる筈である。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●題名:Pop Shop Plastic bag
●サイズ:484x425mm
●技法:Silkscreen
●製造:PAK 2000, New Hampshire

a0155815_22523521.jpg

製造元は同じだが、前の三点よりも更に色彩が強烈になっており、人体のプロポーションにも若干の変化が見受けられる。また、ポップショップのトレードマークがオリジナルとは異なり、キースのサイン(版上)も年記も記されていない。前の三点はキースの描いた画面比に合わせたフォーマットで作られているが、こちらのビニールバッグは、意図的かもしれないが、画面の収まりを無視したところがあり、そのぶん窮屈感を覚えるので、フォーマットに合わせて画面をトリミングした、ということも考えられる。こちらには三種類のカラーヴァージョンがある。

ビニールバッグを製造した《PAK 2000》は、1972年にスイスの大手の包装用容器メーカーによって設立されたビニール製の買い物袋の製造メーカー。紙製の買い物袋や包装箱の製造も行なっており、顧客には世界的なブランドが名を連ねている。
[PR]

by galleria-iska | 2010-08-08 23:17 | キース・へリング関係 | Comments(0)


<< ホルスト・ヤンセンの絵草子「L...      キース・へリングの招待状「Pa... >>