ガレリア・イスカ通信

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2010年 10月 12日

ガレリア・イスカ通信開始のお知らせ

ガレリア・イスカ(galleria iska)は実際の展示空間ではなく、美術に関して、過ぎ去ってしまった時間や空間の中での出来事の記憶を呼び覚ましてくれたり、それにまつわる時代の空気や匂いを感じさせる“物”たちの収蔵庫です。この収蔵庫に収められる物は、“もの”という実体を離れ、ある種の普遍的価値を供え得る美術品そのものではありません。ある特定の時間における何かを伝えるために作られ、その役割を終えれば忘れられ、捨てられてしまう運命の、儚い存在が過ごした時間の断片で、物の存在をなぜるように過ぎていく風のようなものといえるかもしれません。わたしたちは空気の対流としての風によって時間の経過を肌で感じることできるし、生きとし生きるものの気配を有らしめることも知っています。しかしながら常にその痕跡を残すことなく過ぎ行く風そのものに対しては、その存在を省みることはあまりありません。そのような存在として、通常、エフェメラ(ephemera)と呼ばれたりする一過性の紙製の資料を、ここでは、その素材やフォーマット、形式に関して、もう少しその解釈を拡大しつつ取り上げていこうと考えています。

さてガレリア・イスカという名称ですが、わたしの30年来の愛聴版である、ジャズ演奏家で作曲家のウエイン・ショーター(Wayne Shorter)が風をテーマにひとつの叙事詩を編んだ「Odyssey of Iska(イスカの冒険)」というアルバムに因んで付けたものです。、“ISKA”はナイジェリア北部に居住しているハイサ人が用いるハイサ語で“風”を意味する言葉で、このイスカという透明感のある音の響きに共鳴する言葉として、イタリア語で画廊を意味するGalleria(ガッレリア)の慣用的な表記として広く使われているガレリアという言葉を組み合わせました。ウエイン・ショーターは“ISKA”を次のように語っています:
Iska is the wind that passes, leaving no trace...
続けて、
Imagine―The wind having been born with a formless soul that travels through time and space―with a life of its own; seeking life, encountering the realities and fantasies of man and his endless journey―The wind―so vast in scope, so boundless as to suggest infinity in absolute form―taking all that exisits,(past, present and future), on a once in a lifetime odyssey...以下略
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Wayne Shorterのアルバムジャケット:左「Odyssey of Iska」 右「Moto Grosso Feio」(こちらのアルバムに“ISKA”という曲が収録されている)

もうひとつ挙げておきたいのが、16世紀のフランドルの情報発信地であったアントウェルペンでヒエロニムス・コック(Hieronymus Cock,c.1507-1570)なる版画家が開いた「四方の風に乗って(In de Vier Winden)」という名の印刷出版を行なう店です。1548年に開業したこの店では、ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel,1525-1569)の下絵を元に作られた銅版画を含む夥しい数の銅版画が刷られ、国内はもとより、四方の風に乗ってヨーロッパ各地に売られていきました。今のようにテレビもインターネットも無い時代に、版画という複製手段によって表象化された、宗教や道徳、教育、年中行事などに関わる、ありとあらゆるイマージュを、世界に広める役割を果たしていました。この、何かを運び伝えるという、風の性質を看板に戴いたコックの店も、わたしの記憶にしっかりと根付いて消えることはありません。

ここで紹介するものの中には複数所持しているものもあり、オークション等に出品可能なものもあります。興味のある方は、このブログへのコメント欄からお問い合わせ下さい。
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by galleria-iska | 2010-10-12 17:45 | はじめに | Comments(0)


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