ガレリア・イスカ通信

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2010年 10月 17日

ルイーズ・ブルジョア展の招待状「Robert Miller Gallery」(1991)

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彫刻家のルイーズ・ブルジョワというと、1982年にロバート・メイプルソープが撮影した肖像写真が鮮烈な印象を残している。1911年生まれのブルジョワはそのとき71才ぐらいなのだが、自作の一抱えもありそうなブロンズ製のペニスを小脇に抱え、亀頭部分を親指と人差し指で摘まみ、まるで敵軍の大将の首でも取ったかのように、笑みを浮かべ立っている。このペニスを手に入れるという行為は、俗にいう『男根羨望』によって引き起こされるエレクトラコンプレックスの顕れと見るには年齢が行き過ぎているが、擬似的であるせよ、自分の手でペニスを生成させ手に持つという行為によって、エレクトラコンプレックスの対象である父親を乗り越えようとしたのではないか、と見て取れなくもない。というよりも、そのような内的要因を手掛かりにし創作行為に結びつけていくやり方は、ソフィー・カルのそれと重なるところがあるが、女性というものが常に自己の記憶と経験を、過去と現在との時間的・空間的隔たりを超えてかさね合わせ、新たな自己形成、自己増殖を続ける存在であることを知らされる。
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                   Robert Mapplethorpe 「Louise Bourgeois」(1982)

『男根羨望(phallic envy)』というのは、自分の身体にペニスが無いと気づいた女児が、男性優位社会における権力や指導力のメタファーである『ペニス』に羨望や劣等感、反感を覚えるというものらしく、この男根羨望の概念・発想は、ジグムント・フロイトが生きていた19世紀ヨーロッパの『男性中心主義(男権社会における男尊女卑的な風潮)』の影響をかなり受けているのだそうだ。

ロバート・ミラー画廊(Robert Miller Gallery)での7度目となる個展に出品・展示された作品「Ventouse(仏語:吸い玉)は、1990年(招待状には1991年と表記)に制作された大理石とコップと大理石に埋め込まれた電球による彫刻。最近では、2007年から2008年かけてポンピドー・センター、テイト・モダン、グッゲンハイム、MoCAを巡回したブルジョワの回顧展「Louise Bourgeois Retrospective」に出品されている。彫刻の写真は、ブルジョワや、ニューヨークで活躍するアーティストやミュージシャンの肖像写真を撮っているピーター・べラミー(Peter Bellamy)が撮影し、それをシルクスクリーンで印刷している。ブルジョワのロバート・ミラー画廊での展覧会は、MoMA(ニューヨーク近代美術館)で回顧展が開催され評判を呼んだ1982年の「Louise Bourgeois: Recent Sculpture」に始まり、1997年の「Louise Bourgeois: Hamlet Phelia」まで続く。

テート・モダンの作品紹介によると、「Ventouse」は、ブルジョワの創作活動における二つの異なる段階を繋ぐ彫刻で、伝統的な彫刻技法と彼女がノミの市で見つけた“吸玉放血法壜”とか“吸い玉”と呼ばれるものとよく似たガラス壜という“発見された物”を用いる現代的なやり方を結合させている。ブルジョワはその吸い玉を片方の大理石の塊に組み込み、“かさね”と名づけられた大理石の彫刻の中の球状の突出部を反響させてみせる。これはブルジョワが1990年代を通じて創造した野心的なインスタレーションにおいて更なる発展を遂げることになる重要な手法であった、とある。

●作家:Louise Bourgeois(1911-2010)
●種類:Invitation
●サイズ:231x183mm(231x367mm)
●技法:Silkscreen
●発行:Robert Miller Gallery
●写真:Peter Bellamy
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                    表紙
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                    裏表紙
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by galleria-iska | 2010-10-17 23:30 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)


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