ガレリア・イスカ通信

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2010年 10月 30日

アンディ・ウォーホルの案内状「Leo Castelli Gallery」(1964)

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1964年にレオ・キャステリ画廊で行なわれたアンディ・ウォーホルの個展「Flowers」の際に作られたメイラー(ポスターサイズの案内状)。300部限定で制作されたサイン入りの版画ヴァージョンと同じ版を使って刷られており、このイメージを使った展覧会の告知用ポスターも存在している。現在は版画として流通しているサイン入りのものも、当時は“ポスター”(ウォーホル自身、告知を目的とするポスターの意味ではないが、絵画作品の安価な代用品と思っていた)として扱われていた。版画ヴァージョンと同時に刷られたメイラーは、ボーダーラインの内側で裁断され、封筒サイズに折り畳まれて、顧客や関係者に郵送されるか手渡しされた。

シルクスクリーンで刷られた花のイメージは数千を超えると言われているが、それらがキャンバス(画布)に刷られているために絵画作品として扱われ、300枚限定の“ポスター”とよばれた版画作品の十倍以上の価格で取引されている。それが大量に複製化されたイメージに相当する価値として認められるかどうか疑問であるが、そこには、たとえ恣意的であるにせよ、需要と供給の関係が存在しており、絶対的権威や価値が失われてしまった今日においては、そのような相対的なバランスのもとで価値の平均化が計られることが民主主義における富の偏在化を防ぐ手段でもあるのかもしれない。だとしても、そこにはやはり、「絵画(タブロー)」に対する信仰を利用した業者の思惑が見え隠れする。

同じような評価を得ているものに、ムンクの「マドンナ」(1895年~1902年)がある。こちらはリトグラフによる版画作品で、ムンク展には必ずと言ってもいいほど出展されるムンクの版画作品の代表作であるが、多くても年に数枚程度しかマーケットに現れないその稀少性と相まって、オークションでも常に数千万円超える金額で落札される第一級の版画作品である。ところが、この作品は限定数が切られておらず、ムンク美術館には数千枚が収蔵されているという。我が国の公立美術館は、明治期に定められた博物館法により、同一の版画作品を複数所蔵することか出来ないし、また収蔵品を資金調達やコレクションを充実させるために売却することも出来ないのだが、ムンク美術館はこの版画を資金調達のために使っており、数千万円の価格を維持するために、小出しにオークションで売却しているとの話を聞いたことがある。

この二つの作品は通常であれば、そのポスター並みの摺刷数から云って、見聞きするほど高額な商品には成り得ない筈であるのだが、一方は版画が絵画という形式を纏い、もう一方は大量に複製できる版画の特徴が消され、一点きりの絵画に等しい稀少性を帯びることで-それらは優れた絵画作品が備えていたアウラの属性でもある-半ば意図的にではあるにせよ、正反対の衣を纏う結果となっているのである。そうは言っても、世の中には数千万だから所有欲がそそられるという御仁も居ない訳ではない。否、必ずいる。彼らにとってそれら美術品は自らの地位や財産、また知性や教養を誇示するため道具であることが多く、そのもの自体の価値は“使ってなんぼのもの”といったところであるから、一般庶民のように高い買い物をさせられたとか騙されたとか言って嘆いたり、喰ってかかることもなく、ちゃんと商売として成り立っている。逆にへたな正義感(?)を振りかざせば却って不興を買う羽目になる。貧乏人は作れば良し、金持ちは買うが善し、と言うではないか???

●作家:Andy Warhol(1928-1987)
●種類:Mailer
●サイズ:557x557mm
●技法:Offset lithograph
●題名:Flowers(F.S.II.6)
●発行:Leo Castelli Gallery, New York
●制作年:1964
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by galleria-iska | 2010-10-30 18:37 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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