ガレリア・イスカ通信

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2010年 12月 13日

平和のワイン「Vino della Pace」(1985~)

数年前にある作家のポスターを探していたところ、見慣れないものに目が留まった。“Vino della Pace"、平和のワインと呼ばれる白ワインに貼られるラベルとのことだった。なぜか未使用のものだった。ちょっと胡散臭い名前だと思ったが、通常のワインラベルにはないその大きさと質感に、捨てがたい魅力を感じてしまった。版画とは謳っていないが、どう見ても版画にしか見えなかった。これは集めるべきではないか、それも一滴のワインも飲まずして。妙なことになってしまったが、でもよい。ワインラベルの収集家ではないのだから。ワイナリーの紹介によると、平和のワインは、イタリア北部、スロベニアと国境を接するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州(Friuli-Venezia Giulia)で生産されている白ワインで、コルモンス醸造組合(Cantina Produttori Cormons))の畑に世界各地から寄付され植えられた450種類以上の葡萄から作られているのだそうだ。1985年に生産が始まり、毎年三人の第一線で活躍する作家によるオリジナルデザインのラベル(label(英),etiquetta(伊),etiquette(仏))に、平和のメッセージを添え、世界中の元首に贈られているとある。ということは、日本では天皇家となる訳だが、果たして受け取ってもらえているのだろうか。出荷されるワインの本数は10000本と、それほど多くはないが、ラベルの希少価値が高まることは当分の間なさそうである。単品売りと、三種類をセットにしたものなどがあるらしい。ただし、目的はラベルであるので、ワインの味がどうだこうだと言う気は毛頭ない。と言うより未だ口にしたことがない。

本題のラベルだが、ワインラベルというと、高級ワインの代名詞とも言われるフランス・ボルドーのシャトー・ムートン・ロートシルト(赤ワイン)が有名で、1945、6年頃から20世紀を代表する作家のデザインがラベルを飾っており、コレクターも多いと聞く。2008年には日本でもラベルの原画展が開催されている。現代作家にラベルのデザインを依頼する例は他にもあるが、やはりオーナーの美術に対する関心と情熱があったればこそ実現できるわけで、お金を積んで何とかしようなどいう魂胆では此処まで長くは続けられない。ここでは新たなラベルの歴史を築きつつある、と言うよりもう既に25年の歴史がある、“ヴィーノ・デッラ・バーチェ”のラベルを出来るだけ取り上げてみたいと考えている。

ラベルの構成については、シャトー・ムートン・ロートシルトのラベルの場合は、ワインの身元や品質証明などに空間を割いているため、作家のデザインはラベルの上部、面積としては全体の五分の一程度の狭い空間に収められている。そのため、作家にとっては構図上の制約が大きく、どうしても画面が窮屈なものにならざるを得ない。一方、平和のワインは、横長のフォーマットを用い、ラベルの中央部分をデザインに充てるという、デザイン中心の構成を採っているので、作家は通常の作品製作に近い感覚でデザインを行なうことが出来る。勿論、それだけでデザインの良し悪しが決まるわけではないが。

承知の通り、シャトー・ムートン・ロートシルトのラベルのデザインを引き受けた作家は、ピカソ、ミロ、ブラック、マッソン、ダリ、シャガール、ウォーホル、キース・へリングなどなど、世界的に有名な作家が多く、相当な報酬が支払われているのかと思いきや、自分がデザインしたワイン(数量は不明)が送られてくるだけだそうだ。ただしワイン自体が高価なので、金額に直せばそれなりのものになるのかもしれない。“平和のワイン”も同じ方式を採っているようなのだが、こちらは価格が低いので、概ね平和への奉仕ということになるのであろう。とは言っても、ラベルは単なる原画の印刷ではなく、様々な版画の技法を用いて作られた歴としたアート作品になっており、小さな現代美術コレクションと位置付けることができる。デザインに参加している作家はイタリア人作家が中心となっているが、ヨーロッパ、アメリカはもとより、南米、アジア、オセアニアの作家も取り上げている。日本からは、これまでに三人の作家がデザインに参加しているが、フルクサスとも関係の深い前衛芸術家、小野洋子もその一人である。
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by galleria-iska | 2010-12-13 18:29 | ヴィーノ・デッラ・パーチェ | Comments(0)


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