ガレリア・イスカ通信

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2011年 02月 25日

恩地孝四郎の装丁「Loving Service Seal Hanga」(1953)

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版画表現に新しい境地を切り拓いた恩地孝四郎(本名:恩地孝、1891-1955))と長谷川潔(1891-1980)はともに1891年(明治24年)生まれである。二人の関係について記したものはあまりないが、1931年に恩地らによって日本版画協会が設立されたとき、会員となった長谷川から恩地に敬意を込めて版画作品が贈られている。しかしながら、長谷川がフランスの地より帰郷することはなく、二人が肝胆相照らす仲になることは叶わなかったようである。

この冊子は、恩地が社団法人国際版画協会の理事長になった1953年に社会福祉法人中央共同募金会(1)の依頼で制作したもので、日本の木版画紹介という体裁をとっている。冊子は無綴じで、恩地のオリジナルカラー木版が表裏表紙を飾り、恩地の日本の木版画紹介の英訳と、北岡文雄(1918-2007)と品川工(本名:関野工、1908-2009)による10点の木版画シールが収められている。冊子が輸出用に発行されたのか、国内に居る外国人向けだったのか定かではないが、創作版画の旗手たる恩地に制作を依頼したにもかかわらず、依頼者の意向により、伝統的な日本風俗や情景を描いた作品となっている。恩地自身、創作版画が伝統に根ざしたものであることを否定している訳ではないが、依頼者の、日本の新しい版画表現を知らしめる機会を自ら閉ざす《文化度》は、日本文化の紹介において未だに続くステレオタイプ的なあり方にも通ずるところがある。

恩地が制作した二作品は、いずれも日本人の心に深く寄り添う雪景色を描いたもので、富士の山や庭先に積もった白い雪は、胡粉による重ね摺りで質感や立体感を表わしている。

●作家:恩地孝四郎(Onchi Kōshirō, 1891-1955)
●種類:Folder
●サイズ:285x215mm(285x425mm)
●題名:Loving Service Seal Hanga
●技法:Woodblock
●発行:The Central Community Chest of Japan, Tokyo
●制作年:1953


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裏表紙。イメージ:207x143mm
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刷り込みの落款
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版上サイン

註:
1:赤い羽根共同募金は1947年に社会事業として始められたが、1951年に社会福祉事業法の制定により共同募金連合会の設立が規定され、1952年に全国47都道府県共同募金会を束ねる社会福祉法人中央共同募金会が設立された。

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by galleria-iska | 2011-02-25 18:41 | その他 | Comments(0)


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