ガレリア・イスカ通信

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2011年 03月 06日

菅井汲「年賀状」(1982年)

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菅井汲が1982年の年賀状として制作したシルクスクリーン版画。二つ折り、左頁下の小枠に鉛筆サイン。カタログレゾネ未収録。詩人大岡信の『菅井汲―回想と展望』によれば、二人は1981年の初夏に菅井のパリのアトリエで共同制作を行なったとあり、この年賀状jはそのとき作られた作品「耳ヲ彩ルモノ」(大岡信ことば館収蔵)の構図を用いている。菅井は1963年にパリ青年ビエンナーレ参加のためにフランスにやってきた大岡と意気投合し、大岡の朗読に墨書というパフォーマンスの共演を果しているので、1981年の共同制作は二度目のコラボレーションとなる。また1983年にも日本で同様の即興制作のイベントを開催している。

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●種類:New Year Greeting(Carte de vœux)
●サイズ:150x100mm(150x200mm)
●技法:Silkscreen
●発行:Sugai Kumi
●制作年:1981

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画像:菅井汲+大岡信「耳ヲ彩ルモノ」1981年。《大岡信ことば館》ウェブサイトより転載

一九八一年初夏。菅井汲のアトリエ。パリ。 私は菅井が用意してくれた何枚もの純白の紙に、自作の詩の断片を筆で書く作業に没頭していた。おのおのの紙の余白部分に菅井汲の絵をつけてもらって、二人の合作のアルバムを作ろうというのが私のもくろみだった。 共同で作品を作るという考えに私が惹かれるのは、作業を通じていやおうなしに露顕してしまう参加者各人の秘められた頑強な個性に興味をもつからである。ふだん一人だけで制作している時ならば孤独と沈黙の城壁の内側にまもられている各人の隠れた個性も、共同制作という場の中では、揺さぶられ、攻撃され、対話を必要とし、自己を主張し、なおかつ最終的には他者と協力して、新しい作品世界を築きあげるために努力しなければならない。 しかしそれはそれとして、私が菅井汲に対して共同制作を誘いかけたのには、もう一つのひそやかな理由があった。菅井にとっては初めての経験であるに違いないこんな仕事を通じて、もし菅井自身の作品に新しい展開の徴候が生じるようなことがあったら、どれほどすばらしいだろうかと、私は考えていたのである。私は菅井汲と知り合って二十年になるが、一九八一年の初夏のころ、何者かが私の胸内でしきりに囁くのを聞いたのだ。菅井汲は今新たな転機に立っていると。(『菅井汲―回想と展望』より 大岡信)。《大岡信ことば館》ウェブサイトより転載


大岡が予感した“菅井汲の新たな転機”の兆候が画面に現われるのは、1983年頃のことである。


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by galleria-iska | 2011-03-06 20:36 | その他 | Comments(0)


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