ガレリア・イスカ通信

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2011年 04月 27日

ホルスト・ヤンセンのポスター「Kunstverein Hamburg」(1966)

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ケストナー協会(Kestner-Gesellschaft Hannover)での回顧展(1965年12月9日~1966年1月9日)が終わって間もない1966年1月15日から2月13日にかけてハンブルク芸術協会(Kunstverein Hamburg)で開催されたホルスト・ヤンセンの展覧会を告知するポスター。イギリスの19世紀末美術を代表する挿絵画家、オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley, 1872-1898年)(1)の白黒のペン画世界を再現する際に用いられたライン・ブロック(2)と同じ技法である亜鉛版エッチング(Strichätzung)によるポスター第一作。ヤンセンはこのポスターで、それまでのリトグラフによるポスターや招待状の制作で培った独自のグラフィック・スタイルを、亜鉛版エッチングの中間調のない性質を利用することで、より明確化し、初期の木版画に用いた黒ベタによる姿態表現と多彩な表情を持つ線描とを融合させ、またそれと一体化したヤンセン独自の書体によるレタリングによって、ポスターという表現形式に独自の様式を創り上げている。ポスターは、白と茶色の用紙にそれそれ500枚づつ刷られた。

描かれているのはヤンセン自身(右)とハンブルグ美術学校の一年先輩で銅版画の手ほどきを受けたこともあるパウル・ヴンダーリヒ(Paul Wunderlich, 1927-2010)(左)。ヴンダーリッヒは当時版画家として注目を浴びる存在になりつつあり、パリのデジョベール工房で精力的に版画制作を行なう一方、母校のハンブルク造形芸術大学(前のハンブルク美術学校)の絵画・版画科教授(1963年~1968年)として後進の指導にもあたっていた。そんなヴンダーリッヒをライバルとするヤンセンは、二人が仲良く音楽に興じる姿を、戯画風に描いている。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakate)
●題名:Kunstverein Hamburg
●サイズ:620x440mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1966(14/1.66)

註:
1.ビアズリーは、...きわめて独創的な挿絵を生み出した。凝った装飾性と、浮世絵版画に学んだ白と黒の平面による構成の大胆さ、そして流れる線の美しさが融合したそれらの作品群は高い完成度を示し、世紀末芸術の代表的作例として今日でも高く評価されている。

2.それを可能にしたのが、1880年代に実用化されたライン・ブロック印刷という、素描の複製技術であった。この技法は、写真製版を利用した腐食銅版画の一種で、従来の木口木版などの方法ほどには、手間も熟練した技術も必要とせずに、原画を再現することを可能にした。ただしハーフ・トーンが出せないという欠点があった。『アーサー王の死』や『サロメ』といったビアズリーの挿絵の多くはこの技法で刷られていたが、そのために作品の質が保たれたまま、比較的安価な書籍の形態で、多くの人々が購入することができたのである。しかもビアズリーは、ハーフ・トーンが出せないという欠点を逆に利用し、白と黒の対比の美しさを最大限に生かした表現を生み出すことに成功したわけだが、こうした制作態度は、自作が複製され流通することを前提にしたものだったことを示している。このように、作品の複製手段という意味でも、作品の発表のための媒体という意味でも、また作者や作品についての情報を伝達するための媒体という意味でも、ビアズリーはメディアと密接な関係を持っていた芸術家であった。『世紀末の芸術の華 オーブリー・ビアズリー展』 川崎市市民ミュージアム 学芸員 中山久美子さん/藤原秀憲 一部改より抜粋。この部分は、ヤンセンの亜鉛版エッチングによるポスター、招待状、絵草子シリーズ、絵本などの制作意図にそっくり当てはまる。

参考文献:
「Horst Janssen Retrospective auf Verdacht」 von Heinz Spielmann, 1982


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by galleria-iska | 2011-04-27 13:16 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)


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