ガレリア・イスカ通信

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2011年 05月 07日

ポール・デルボー展の招待状「Bateau Lavoir」(1972)

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1972年の2月5日にバトー・ラヴォワール画廊で催されたポール・デルヴォーの「Dessins et Gravures 1969-1972」展のヴェルニサージュへの招待状。その年の1月に制作されたデッサンを用いている。画面下にモノグラムのサインと年記(P.D 1-72)。蝶結びのリボンの付いた帽子を被る女性の横顔は、同じ1月にモノクロとカラーのリトグラフで制作された「Chapeau 1900(1900年の帽子)」にも使われているが、リトグラフでは蝶結びのリボンが強調され、帽子の装飾もより豪華なものとなっている。色刷りものでは、帽子のリボンと髪を結ったリボンは共に紫色で刷られており、高貴さを象徴する紫と美の象徴である蝶によって、描かれた女性になんらかの性格を与えようとしているかのようにも見える。と同時に、夢の世界と同様、絵画空間の中に画家の何らかの願望(欲望)が反映されていると見れなくもない。紫色のリボンや花飾りの帽子は、デルヴォーに限らず、ルノアールやピカソなど多くの作家が描いているが、女性の美や高貴さを表すとともに、それを非現実的で象徴的存在に変容させる小道具として用いられている。デルヴォーについては、社会通念や宗教上の理由から、裸体の女性に対する予断を避ける意味もあったのかもしれない。デルヴォーは1930年代に蝶結びのリボンを登場させており、後年、インタビューの中で、蝶結びのリボンをモチーフした理由について聞かれると、そこに何か象徴的な意味を感じ取ったことはなく、-その無意識な作用として知覚された-単に造形的な面白さに惹かれたからだ、と応えている。1937年に制作された油絵「バラ色のリボン」では、何らかの象徴的意味合いを感じさせる胸元に大きなバラ色の超結びのリボンを付けた裸体の女性が描かれ、1948年の「紫のリボンの女たち(Femme au noeud violet)」では、紫色のリボンを蝶結びにして髪を結った女性が登場する。

バトー・ラヴォワール画廊が制作したデルヴォーの三点の招待状は、招待状のために描かれたデッサンを版画用紙にリトグラフで刷っているため、オリジナル作品として扱われることが多く、海外のある業者は三点一組で1500ドルと、かなり思い切った売値を付けていた。
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●作家:Paul Delvaux(1897-1994)
●種類:Invitation(Carton d'invitation)
●サイズ:131x105mm(131x210mm)
●技法:Lithograph
●紙質:Arches
●発行:Galerie Le Bateau Lavoir, Paris
●制作年:1972

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図版:展覧会に出品されたと思われる、1972年1月の年記を持つリトグラフ「Chapeau 1900」。同じ版を使ったカラーリトグラフも制作されている。

参考文献:
「Paul Delvaux Oeuvre gravé」Préface, notices et catalogues par Mira Jacob, André Sauret, 1976
「ポール・デルボー展」東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、毎日新聞社、1975年
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by galleria-iska | 2011-05-07 12:08 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)


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