ガレリア・イスカ通信

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2011年 06月 02日

ヴォルフ・フォステルのポスター「Starfighter」(1967)

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1964年にベルリンにルネ・ブロック画廊を開いたルネ・ブロック(René Block,1942-)は、版画の出版も手掛けており、1967年に開廊時の展覧会のタイトル「Neodada, Pop, Décollage, Kapitalistischer Realismus.」から取った「資本主義リアリズム」(1)を冠した版画集を企画・出版している。参加アーティストは、「資本主義リアリズム」の名付け親であるゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter, 1932),に、ジグマー・ポルケ(Sigmar Polke, 1941-2010), コンラッド・リューク(Konrad Lueg, 1939-), クラウス・ぺーター・ブレーマー(Klaus Peter Brehmer, 1938-1997), カール・ホルスト・ヘーディケ(Karl Horst HödickeK, 1937-), そしてこのポスターの制作者であるヴォルフ・フォステル(Wolf Vostell, 1932-1998)の六人である。

政治的関心を動機として制作されるヴォルフ・フォステルの作品には、暴力や破壊のイメージが報道の映像や写真から取り込まれる。ここでは1960年代の西側の主力戦闘機のひとつであったF104スターファイター(Starfighter)をモチーフとする作品を制作しており、1999年にニュヨーク近代美術館で開催されたの展覧会「Pop impressions Europe/USA」の図録によれば、フォステルはこの作品を、当時西ドイツで報道されていたスターファイターについてのスキャンダルにヒントを得て制作したとあり、使われている画像は、テレビで放映された映像を拡大したものらしく、走査線のようなものまでが描き出されている。西ドイツでのスターファイターの導入については、航空機メーカーのロッキード社が交渉を有利にするために西ドイツ政府役人に賄賂を送った疑いが持たれ、国防省を混乱に陥れ、軍のトップ三人が退くというスキャンダルにまで発展したのである。スターファイターは1960年代のドイツの再軍備の象徴として論議を呼び、また西ドイツ空軍では1965年と66年で47機が墜落するという大きな損害記録を作り、“widowmakers(未亡人製造機)”という渾名が付けられた。1962年から66年の間に61人のパイロットが墜落事故に遭い、うち36人が死亡しており、。西ドイツ空軍の運用全916機中292機が失われており、同機を導入した国の中では最悪の運用実績となっている。

この作品では、滑走路上に隊列を組む戦闘機の上部に沿って、またパイロットを取り囲むように銀色のラメのような金属片がコラージュされているが、この不釣合いなクリスマスツリーの飾り付けにも似た装飾によって、悲劇と暴力を生み出す兵器に対する強烈なアイロニーとなっており、そこには、ヴェトナム戦争と社会に対する批判を掲げた学生運動が激化する1968年にニュルンベルグの〈Institut für moderne Kunst Nürnberg〉で開催された「Von der collage zur assemblage」展の図録に引用された、ヴォステルの芸術の社会における役割についての意見、

The artistic treatment of destruction is an answer!
Documentation as permanent artistic protest and
rebellion of the conscious and subconscious mind
against the contradictions and inexplicabilitic of life.

が色濃く反映されている、とある。

版画作品と同時に、版画集を広告するためのポスターも制作された。ポスターの方が若干縦方向が長くなっている。

●作家:Wolf Vostell(1932-1998)
●種類:Poster(Plakate)
●サイズ:541x817mm
●技法:Silkscreen with glitter collage
●印刷:Birkle & Thomer & Co., Berlin
●発行:René Block for Stolpe Verlag, Berlin
●制作年:1967

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コラージュ部分を拡大した画像。

註:
1.現代美術用語辞典によると、ゲルハルト・リヒターが自身の手紙の中で使用したとされる「資本主義リアリズム」は、「ドイツ版ポップ・アート」を標榜するリヒター、ポルケ、リューク三人の芸術が「現代のマスメディアをきちんとした文化現象」とみなすとする、彼らの活動や作品制作のコンセプトを指しており、リヒターの出身である旧東側の概念である社会主義リアリズムに、旧西側の用語である資本主義を結びつけたアイロニカルな表現であったが、以後この概念は画廊やメディアによって使われるところとなる。ルネ・ブロックにとって「資本主義リアリズム」とは、東西に分断された戦後ドイツ、なかんずくベルリンの象徴だったようで、ブロック自身の定義に従えば、「資本主義リアリズム」には上記3人のほかヴォルフ・フォステル、クラウス・ペーター・ブレーマー、カール・ホルスト・ヘーディッケらが含まれる、とある。


参考文献:
「Pop impressions Europe/USA - Prints and Multiples from The Museum of Modern Art」by Wendy Weitman, The Museum of Modern Art, New York, 1999. pp.84-85


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by galleria-iska | 2011-06-02 22:14 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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