ガレリア・イスカ通信

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2011年 06月 22日

パウル・ヴンダーリッヒ展の招待状「Bateau Lavoir」(1985)

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パウル・ヴンダーリッヒという画家を意識したのは、1960年代からウィーンの幻想画家を中心に異端と呼ばれる画家を日本に紹介していた美術史家の坂崎乙朗(1928-1985)氏の著作「幻想芸術の世界 」(1969年、講談社現代新書) の第9刷(1975年刊)を読んでからだと思う。その頃、池田満寿夫の作品を表紙に使っていた「みづゑ」でも特集が組まれたりしていて、そこでヴンダーリッヒの、ハンス・ベルメール譲りの女体の稜線をなぞるように走らせる流麗なデッサン力の虜となった。ただヴンダーリッヒの作品集も見たことがない人間には、坂崎氏の、ヴンダーリッヒを知る人間には即座に了解される作品についての形容には着いていけず、専らモノクロの小さな図版に漂う禁断の誘いに目を注いだ。ようやく実物にお目にかかることができたのは、1980年に西武美術館で開催された「夢とエロスの錬金術 / ポール・ヴンダーリッヒ展」においてであったが、写真家のカリン・シェケシーと出会う前の初期の作品に投影されている自己破壊的な残虐性については、多少違和感を覚えた。

1986年に“洗濯船“という名のパリの画廊、バトー・ラヴォワール(Bateau Lavoir)を訪れた時にいただいた、同画廊主催のパウル・ヴンダーリッヒ展のヴェルニサージュへの招待状。展覧会は既に終了していたが、壁には未だ数点の作品が掛けられていた。いずれも東京で展覧された作品よりも後で制作されたもので、殆んどエアブラシだけで描かれているのではないかと思えた。招待状に使われているのは、1983年制作のアクリル作品「Madame Vaucluse(ヴォクリューズの婦人)」で、この構図は、1975年の「Die schöne Falknerin(美しき鷹匠」に描かれた人物の構図を下敷きに、幾分変更を加えたものである。ヴンダーリッヒの描く肖像画、特に真横から描いたものは、エジプトのレリーフ彫刻を彷彿させるが、特にその目の描き方に特徴がある。真横を向きながら、目だけは正面を向いており、本当はどちらが見られているのか、という気持ちにさせる。そのヴンダーリッヒも昨年召され、エロスにずっと寄り添っていた、フロイトのいうところの、攻撃や自己破壊に傾向する死の欲動であるタナトスにも終止符が打たれた。

●作家:Paul Wundelrlich(1927-2010)
●種類:Invitation
●サイズ:145x110mm
●技法:Offset
●発行:Bateau Lavoir, Paris
●制作年:1985
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by galleria-iska | 2011-06-22 21:08 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)


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