ガレリア・イスカ通信

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2011年 07月 01日

リチャード・ハミルトンの写真集「Polaroid Portraits」(4 vols.)

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1943年シュトゥットガルト生まれのハンスヨルグ・メイヤー(Hansjorg Mayer, 1943-)によって設立された出版社《Edition Hansjörg Mayer》は主に現代美術作家たちによるアーティスト・ブックの出版を手掛けており、中でもディーター・ロス(Dieter Roth,1930-1998)のアーティスト・ブックの出版に力を注いでいる。写真家、杉本博司(Sugimoto Hiroshi, 1948-)氏のバーゼルでの最初の回顧展の図録「Hiroshi Sugimoto - Time Exposed」もここが出版元であり、後に提携先のロンドンの《Thames & Hudson》から英訳版が刊行された。1956年のホワイトチャペル・アート・ギャラリーでの「This is Tomorrow」展に早くもテクノロジーによって大きく変貌しようとしている現代社会の様相をキッチュに捉えた写真によるコラージュ作品「いったい何が今日の家庭をこれほど変え、魅力あるものにしているのか」(そこには20世紀の後半が、絵画の想像力を凌ぐ映像の脅威の世紀であることが示され、絵画がそれに従うことになることが予見されている)を発表し、ポップアートの創始者となったリチャード・ハミルトン(Richard Hamilton, 1922-)の写真集「Polaroid Portraits」は、そのハンスヨルグ・メイヤー出版から、1972年の第一巻から最終巻となった2002年の第四巻まで、三十年という長いスパンで刊行された写真集であり、ハミルトンのアーティストブックである。

ハミルトンによると、彼がポラロイドカメラを最初に使用したのは、ポラロイド社が“オートマティック100型”を発売した1960年ことで、ICA(ロンドン現代美術研究所)で講演を行なった際に、ポラロイド社の創業者であるエドウィン・ハーバード・ランド(Edwin Herbert Land,1909-1991)がニューカッスル大学の写真学部に寄贈したポラロイドカメラ(オートマチック100型?)を借り、写真撮影のデモンストレーションを行なったのが最初で、ポラロイドカメラの即時性がもたらす効果は聴衆にとって未経験を驚きを与え、その後もポラロイドカメラを講演に用いることとなる。

写す側から写される側となった「Polaroid Portraits」の企画は、ポラロイドカメラが流行のアイテムになっていた1968年の3月に始まる。最初の撮影者はポップアーティストのロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein)で、3月16日、仕事場を訪れたハミルトンを自らの作品の前に立たせ、購入したばかりのポラロイドカメラを使って撮影したもの。またその年の秋にカナダのヴァンクーバーを訪れたときで出合った、“N.E. Thing Co.”こと、レイン・バクスターも偶然ポラロイドカメラを持っており、9月25日に作品を背景にハミルトンを撮影、ハミルトンは、自分が、作家の目を通して見、構成された画面の中にその作家の作品とともに居ることに感動する。ロンドンに戻ったハミルトンはポラロイドカメラを一台購入すれば、“take a photograph of me"と、友人の現代美術作家に写真を撮ってもらうことができ、愉しい企画なるであろうと考えた。ハミルトンは最初、作家の仕事場で作品とともに写真を撮ってもらうことを考えていたが、被写体にレンズを向け、シャッターを押すだけという行為に、作家のイマジネイションが加われることによって、写真は単なる記念写真ではなく、その作家の創造活動に関わる精神の足跡が残されることに気付き、写真撮影のシチュエーションには拘らなくなる。

1960年から70年代、そして80年代と、それぞれの時代の顔となった作家によるハミルトンの肖像写真は、急激にデジタルカメラへの移行が進み、ポラロイド写真への興味が薄れていった(ポラロイド社は2001年10月に約9億4800万ドルの負債を抱えて経営破綻する)2000年11月25日のカナダ人デザイナーのブルース・マウ(Bruce Mau, 1959-)まで全128点撮影された。写真は各巻に32点づつ収録されており、巻頭にはハミルトン自身によるセルフポートレイトが一点添えられている。128点のポラロイド写真は、最後の撮影日からおよそ一年後の2001年11月14日から2002年1月20日にかけてバーミンガムのアイコン画廊(IKON Gallery)で開催された「Richard Hamilton: Polaroid Portraits」展で展示された。

●作家:Richard Hamilton(1922-)
●編集:Richard Hamilton
●種類:Photo book
●サイズ:167x120mm
●技法:Offset
●限定:ca.4000
●発行:Edition Hansjörg Mayer, Stuttgart / London
●発行年:
Vol.1:1972
Vol.2:1977
Vol.3:1984
Vol.4:2002

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.................................《Self-Portrait 3.1.72》.....................《Self-Portrait 28.5.77》..............
................................《Self-Portrait 25.8.83》....................《Self-Portrait 6.10.01》..............

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Man Ray 27.10.71 最初の二冊には20世紀を代表する三人の写真家によって撮影された写真が掲載されており、その内のひとり,マン・レイ(Man Ray,1890-1976)の写真について、ハミルトンは,“It doesn't need much imagination to see that the May Ray Polaroid has a touch of his genius."と述べている。後の二人は、カルティエ・ブレッソンとウーゴ・ムラスである。
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John Lennon 25.11.71 アルバム「Imagine」を発表したばかりのジョン・レノンが撮った写真。ジャケット写真を彷彿させる。
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Tadanori Yokoo 25.11.71 ジョン・レノンと同じ日に撮った横尾忠則の写真。年譜によると、横尾氏は1970年から写真を撮り始めた、とある
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Allan Kaprow 18.1.80 撮影者(アラン・カプロー)が写り込んでいる唯一の写真。
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by galleria-iska | 2011-07-01 17:10 | その他 | Comments(0)


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