ガレリア・イスカ通信

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2011年 07月 05日

エッシャーのキャンディー缶「Verblifa Tin Can」(1963)

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エッシャー曰く、
「時間と空間の無限に、止まることなく没頭し続ける人は誰しも、一里塚を立てていかなければならない。なぜと言って、さもなくば彼の動きはじっと立止まっていることと見分けがつかなくなるからである......」

アラベスク模様にその発想の原点を辿ることができるされるエッシャーの作品の中には、数学的な法則を用い無限運動が示されているものがある。パターン化されたモチーフとそれらがある法則のもとに統合されることによって生み出される小宇宙。見る者の視点は、個々のモチーフと画面全体との間を絶えず往還する。全体は部分に分割することができるが、全体は部分の集合ではなく、ひとつの統合された空間として存在しており、その小宇宙を構成する法則性が、エッシャーの描く不思議な世界の魅力を生み出している。音楽にはある一定のリズムパターンの反復がもたらす身体的・精神的な作用があると言われるが、エッシャーの作品にもそれと同じような運動性のリズムが内在していて、我々はそれを視覚を通して感じ取っているのかもしれない。

エッシャーの作品においては、人間の個々の思いや感情といったものは排除され、この世に存在する数多のものが、結晶化され、普遍的な法則のもとに統合されることで、秩序ある世界を成しており、その意味ではミニマリズムに先行する。

1888年創業のオランダの製缶メーカー、フェルブリファ社(Verblifa)は1963年に、創立75周年を記念して、エッシャーデザインのブリキ製のキャンディー缶を上客に贈っている。エッシャーはそれより20年程前に描いたモザイク模様のスケッチ『貝殻とヒトデ』(Shells and Starfish:tessellation 42)を元に、正三角形20枚で構成される正二十面体(regular icosahedron)のデザインを行なっている。正二十面体の頂点は12個あり、ひとつの頂点には5本の辺が集まり、この5本の辺の端を結ぶと正五角錘となる。エッシャーは、その正五角錘と呼応するように、それぞれの頂点に5本の辺に沿って拡がる星形五角形のヒトデを置き、そのヒトデに囲まれた正三角形の内側の空間に三回対称となるように組み合わされた三個の貝殻を配している。
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M.C. Escher 〈Shells and Starfish:tessellation 42〉

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●作家:Maurits Cornelis Escher(1898-1972)
●種類:Tin can
●サイズ:140x140mm
●製造:Verblifa(N.V. de Vereenigde Blik Fabrikanten)
●制作年:1963
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缶の底にあたる部分には、社名とともに、エッシャーのモノグラムサイン(MCE)と年記を組み込んだ正三角形が刷り込まれている。




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by galleria-iska | 2011-07-05 18:52 | その他 | Comments(0)


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