ガレリア・イスカ通信

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2011年 07月 17日

ルーカス・サマラス展の図録「Photo Polaroid photographs 1969-1983」(1983)

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-昨年に引き続き今年もエアコン無しで日中を過ごしているので、一瞬ではあるが、すぅーと気が遠くなる時がある。そんな中、資料撮影用に購入したコンパクト・デジタルカメラも電流が入ったり、切れたりと、危篤状態に陥ってしまった。悟りも開かずして“お釈迦”になってしまってはまずいので、強烈な電流代わりに、シンディー・シャーマンもびっくりのルーカス・サマラスの言うところの“強迫的な自己の感情を作品に表出しようとする”カルト臭ぷんぷんの総天然色テクニカラー(Technicolor)の世界を拝ませたところ、なんとか覚醒? しかし未だ7月なので、さらに暑さが続くと、共倒れに成りかねない-

先に取り上げたリチャード・ハミルトン同様、ルーカス・サマラスも早くからポラロイドカメラの即時性に注目しており、後のシンディー・シャーマンを予見させる自画像の撮影を1969年に始めている。互いに意識していたかどうかは分からないが、ハミルトンの写真集にサマラスの名前は出てこない。この図録は、写真家としてのハンス・ベルメールの回顧展が開催される直前の1983年9月21日から11月27日にかけてポンピドウセンターで開催されたルーカス・サマラスのポラロイドカメラのよる写真展の際に発行されたもので、展覧会はその後、フライブルグ、フランクフルト、ニューヨークに巡回。ベルメール、サマラスどちらの図録も展覧会の企画構成を行なったポンピド-センターの写真担当キュレーター、アラン・サヤグが編者となっている。また、バカンスの前には、国立美術館としては異例の早さでメイプルソープの写真展を開催している。

ポラロイド写真について言えば、ポンピドーセンターは1980年に、サマラス展の下地となったかもしれない、ポラロイドカメラを使って撮影を行なった作家の写真を集めた「Instantanés」展(1)を開催しており、リチャード・ハミルトンとルーカス・サマラスの写真も出品されている。こちらの図録もサヤグが担当。しかしそこには、カルフォルニアに移住した1964年頃から作品制作のアイデアの源泉として写真を撮り始め、リチャード・ハミルトンから「スナッパー(snapper=snap shooter)と仇名されるほど日常的に写真を撮りまくっていたデイヴィッド・ホックニーの写真は出品されていない。ホックニーは当時、写真は単に備忘録にすぎず、表現としては捉えていなかっため、出品を固辞した可能性がある。それから二年後の1982年、アラン・サヤグの度重なる説得に応じ、写真によるコラージュ作品(ポラロイド写真を含む)や肖像写真からなる展覧会(2)を開いている。

時はくだり、1988年から89年にかけて全米で開催された大規模な展覧会「Lucas Samaras:Objects and Subjects, 1969-1986」(3) から二年後の1991年10月13日(日曜)から12月15日(日曜)かけて横浜美術館で開催された「セルフ1961-1991 ルーカス・サマラス展」には三万人近い入場者を集めたとされるが、その案内によると、
アメリカ現代美術におけるルーカス・サマラスは、ジャンルにとらわれない幅広い表現と常に自らを作品の素材として示す点においてとりわけ異彩を放つ存在となっている。1960年代にアラン・カプロー、ジョージ・シーガル、クレス・オルデンバーグなどと『ハプニング』に参加し、その後は独自の視点からミニマル系の作家とも異なる心理的なある種の強迫観念にもとづく作品を発表し続けた。人間の内面に深く訴えかけるそうした作品はいずれも、見るものの誰をも釘づけにしその幻想的な世界に誘う。

ルーカス・サマラスは、1936年ギリシャ・マケドニアに生まれ、1948年に家族とともにニューヨークに移住、以降、アメリカを主な舞台として作家活動を展開してきた。1971年にシカゴ現代美術館でボックス・ワークの展覧会が開かれ、翌年にはホイットニー美術館で回顧展が開催されたことからも、早くからアメリカの現代美術において注目を集めていたことがわかるだろう。また、1988年か89年にかけて、ボストン美術館をはじめとする全米の美術館で大規模な展覧会が組織され、その評価を不動のものとしている。

とあるが、サマラスは、強迫観念という心の状態を、自らの心の病巣として作品に表出することで自己の外在化を図ろうとしていたのだろうか?それとも強迫観念に囚われた人間の錯綜した状態を芸術表現におけるひとつ題材として捉え、それを分析・再構成することによって今までにない新しい表現に到達しようと試みたのであろうか。

●作家:Lucas Samaras(1936-)
●前書き:Alain Sayag
●種類:Catlogue
●サイズ:228x302mm
●技法:Offset
●発行:Musée National d'Art Moderne, Centre Georges Pompidou, Paris
●制作年:1983
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註:
1.
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図版:「Instantanés」展の図録:「Instantanés」 Paris. Centre Pompidou. Musée National d'Art Moderne. 1980., 100pp.by Alain Sayag, illustrated with B&W and Colour photographs. The Exhibition catalogue of contemporary American and European Polaroid photography by( Part 1):Ansel Adams, Donald Curran, Walker Evans. Alma Davensport, Terry Walker, Bruce Nicoll, Weston Andrews, Ad Windig, Ingrid Assmann, Eve Sonneman, David Mahaffey, Inge Morath, Luciano Castelli, Godfried Zollner, Lucien Clergue, Kenneth Sund, Toto Frima, Helmut Newton, Wout Berger, Rena Small, Esad Cicic, Ralph Gibson, Christian Vogt, Jean-Loup Sieff, Joyce Ravid, Richard Hamilton, Andy Warhol, Beppe Buccafusca, David van 't Veen, Anthony Barboza, John Gintoff, Ken Straiton, Barnaby Evans, Arthur Ollmann, Terry Walker, Reinhart Wolf, Inge Reethof, Eve Sonneman, Jochen Gerz: 'A Danish exorcism', (Part 2):Jean Ruiter, Odile Moulinas, Lisette Model, Andréas Mahl, Wout Berger, John Thornton, Weston Andrews, Rosamond Wolff Purcell, Alma Davensport, Paul de Nooijer, Bruce Charlesworth, Gérard Minkoff, André Gelpke, William Larson, John Reuter, Lucas Samaras, Detlef Odenhausen, Linda White, Leo Krims, Wendy Grad, Horodecky Iruthchka, John Thornton, Christian Vogt et Bruce Charlesworth.

2.展覧会の図録:「David Hockney Photographe」Centre Georges Pompidou/Herscher,1982、アラン・サヤグが「Une pratique du regard」と題する前書きを寄せている。

3.The Denver Art Museum, Denver CO May 7-July 10, 1988, National Museum of American Art, Smithsonian Institution, Washington DC August 12-October 16, 1988, The High Museum of Art, Atlanta GA November 26, 1988-January 22, 1989, The Center for the Fine Arts, Miami FL March 6-April 30, 1989, Virginia Museum of Fine Arts, Richmond VA June 13-August 13, 1989 and the Museum of Fine Arts, Boston, Boston MA September 20-November 12, 1989
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by galleria-iska | 2011-07-17 19:05 | 図録類 | Comments(0)


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