ガレリア・イスカ通信

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2012年 02月 13日

大橋歩のポスター「Pink House」

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2009年に三重県立美術館の企画展として開催された「大橋歩展 平凡パンチからアルネまで アート・ファッション・ライフスタイル 1964年~2009年」の会場で目にした一枚のポスターに惹かれ、ずっと探していたのだが、ようやく見つけることができた。それがこのポスター。銀紙(Silverfoil)がコーティングされた用紙に印刷されている。この用紙を使ったポスターや版画は、ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)やリキテンスタイン(Roy Lichtenstein, 1923-1997)、ヴァザルリー(Victor Vasarely, 1908-1997)といったポップ・アートやオプティカル・アートの作家が1960年代から70年代に盛んに制作しており、鏡のように画面の外界を取り込むことで現実と虚像が入り組んだ不思議な空間を創出したり、白銀のように白く光輝くことで描かれたモチーフを光の中から浮び上がらせる効果によって、それまでのそこに存在しないことによって成立していた支持体の概念を覆すものであった。

大橋氏は1981年から86年までに10点ほどメルローズ社のブランドのひとつであるピンクハウス(Pink House)の広告ポスターを手掛けている。このポスターは、パステル調の色彩で女性モデル描いた他のポスターとは異なり、描かれているのは男性モデルで、その男っぽさを演出するためにメタリックな光沢が使われているようである。ただここに描かれているファッション・イラストレーションは、戦後の日本人の体型コンプレックスの裏返しともいえる、日本の女性向け漫画とファッションデザインに奇妙に符号するスタイルで描かれている。そのようなスタイルは現在では主流ではないが、かつては約束事のように用いられており、またそのような志向で制作されたファッションは、当然のことながら長身のモデルや欧米人にこそ似合うものであり、本当の意味で日本人のためのものではなく、日本人の願望を投影したものに他ならない。そこには日本人の空洞化したアイデンティティというものが見て取れるのだが、その本質的な部分は常に棚上げされまま先送りされている。またその根底にある美少女趣味的装飾過多は、自立した人格を求める欧米の女性の志向とは相容れず、往々にして自らの体型を省みない女性たち御用達となるが、何々族という言葉まで生まれる現象となれば、それはそれである種の市場を形成することになり、企業の戦略に組み込まれていくこととなる。誠に以って不思議の国、日本である。

●作家:Ohasi Ayumi(1940-)
●種類:Advertising Poster
●サイズ:A1(841x594mm)
●技法:Offset on silverfoil
●発行:Melrose Co, Ltd.. Tokyo
●制作年:1982

このポスターには二つのヴァージョンがあるようで、三重県立美術館で見たものはコレクションの案内が入れられていた。

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三重県立美術館が発行しているパンフレット〈Hill Wind〉。〈ひるあんどん〉ではない。大橋歩展が大きく取り上げられている。
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by galleria-iska | 2012-02-13 12:26 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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