ガレリア・イスカ通信

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2012年 07月 12日

田中一光展の案内状「The Museum of Modern Art, Toyama」(1998)

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現在、富山県立近代美術館で第10回「世界ポスタービエンナーレトヤマ」(6月3日~9月3日)が開催されている。三年に一度開催されるこのポスター公募展は、実際に印刷発表されたものと自主制作のオリジナルのニ部門で募集が行なわれる。今回は世界53の国と地域から両部門合わせて4622点の応募があり、日本人が初めてグランプリを受賞したとのことである。これまでの日本人デザイナーの活躍を思えば、もっと獲っていてもおかしくないのだが、それでは自画自賛になりかねないので、名のあるデザイナーには応募を控えるよう御達しが回っているのかもしれない。ともあれ日本人の意匠表現が群を抜いていることは確かのようである。

そんな日本が輩出したグラフィックデザイナーの代表格ともいえる田中一光(Tanaka Ikkou, 1930-2002)の大規模な回顧展が1998年に富山県立近代美術館で開催された。これはそのときの案内状である。尾形光琳の「紅白梅図屏風」の水の流れを彷彿させる意匠を盛り込んだデザインは田中一光によるものであろうか。この年の夏、一泊二日の日程で、友人と一緒に初めて富山を訪れた。富山と言えば、幼い頃に目にした大きな風呂敷包みを担いでやって来る薬売りが有名であるが、北陸の工業地帯としてアルミ産業も盛んであり、版画やポスター用のスマートな額もここで作られている。このときの目的は美術館ではなかったが、時間に余裕が出来たので立ち寄ってみたところ、この展覧会が開催されていた。会場に入ると、シルクスクリーンのポスターも販売(1000円だったか?)しているとのアナウンスが聞こえてきたが、生憎の雨模様で購入するのを諦め、この案内状を何枚かいただいてきた。

今から30年前に開館した富山県立近代美術館は主に20世紀以降の美術を収集しているが、設立当初からデザイン分野の紹介にも力を注いでおり、1985年から世界ポスタートリエンナーレトヤマを開催し、受賞作を収蔵するなど、現代作家のポスターにも注目している。また館の企画展のポスターのデザインはすべてグラフィックデザイナーの永井一正氏が行なっている。

展覧会は「第七回 現代芸術祭 伝統と今日のデザイン 田中一光」展と題され、戦後の日本のデザイン界を牽引してきたデザイナー田中一光(Tanak Ikkou, 1930-2002)のデザインの歩を辿るものであった。デザインと美術の境界を跨ぐ仕事の部分に多少興味があったが、モダン・デザインに日本的な要素を上手く溶け込ませる手法や古都で培った色彩感覚を活かしたソリッドな構成は、日本人よりも海外の目により新鮮に見えたのではないかと思えた。自分としてはもう少し“くすぐり”とか“ひねり”に期待したのだが、その辺はこのデザイナーのデザイン思想には無い要素なのかもしれない。常設展示の方ではポスター・コレクションの一部を見ることができた、また、その時まで知らなかったのだが、この美術館には富山県出身の瀧口修造の常設展示室があり、デカルコマニーの作品を初めて目にすることができたのは、思いがけない収穫であった。

もうひとつ、展覧会とは関係ないことだが、富山県の郷土料理で駅弁でも知られる「鱒寿司(ますのすし)」に、駅弁以外にもいくつも種類があることを知った。中には一日限定数百個というものもあって、四種類ほど購入し食べ比べてみた。酸味の利いたもの、甘味のあるもの、さっぱりとした口当たりのもの、それぞれ特徴があり、楽しく頂いた。富山の人たちは自分の舌にあったものを求めているのだろう。もう十数年も前の話である。

●作家:Tanaka Ikkou(1930-2002)
●種類:Annoucement
●サイズ:150x105mm
●技法:Offset
●発行:The Museum of Modern Art, Toyama
●制作年:1998

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by galleria-iska | 2012-07-12 11:57 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)


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