ガレリア・イスカ通信

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2012年 07月 14日

菅井汲のリトグラフ「L'Eclipse au soleil」(1966)

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今年は天体ショー(?)の当たり年とかで、パウル・ヴンダーリッヒの命日にあたる6月6日には金星の太陽面通過が見られるとのことであった。金星といえば、普段は月の近くで輝いているのを眺めるだけだが、太陽と金星と地球が一直線に並ぶと、逆光を浴びる形になり、金星のシルエットを見ることができるのだそうだ。とは言え、5月21日の金環日食(annular eclipse )の時と同様、肝心の観測用の眼鏡を用意しておらず、もっぱらテレビの映像でその現象を見ることになったのだが、ようやく金星が一個の天体であることを実感した次第。自然の成すことに対してはケチを付ける事ができないからか、日本中が沸いた金環日食。当地方では実に932年振りとのことだとかで、どうせなら太陽がすこしつづ欠けていく様子を見てみたいと思い、朝六時頃に起きて空を見上げたが、生憎の曇り空で、太陽の姿はどこにもなかった。このまま金環日食を見ずに終わってしまうのかと思っていたところ、雲が少し薄くなり、雲のフィルターを通して金環日食を少しだけ拝むことができた。それにしても、リング状の太陽など、予め知識を与えられているからいいようなものだが、天文学的な知識を持っていなければ、今の時代であったとしても、その姿に何かよからぬ兆しを見て取ったのではないだろうか。

観察用の眼鏡も用意しない無精な人間だからであろうか、それともボケの前兆であろうか、折角の機会をより愉しむことが出来たかもしれないのに、その時はまったく思い付かないというポカをやらかしてしまった。というのは、少し前に、先に取り上げた菅井の年賀状のことを調べていて、菅井汲が1966年に制作した「日蝕(L'Eclipse au soleil)」というリトグラフがあったことを思い出したのである。今思うに、季節の掛け軸ではないが、何日か前に取り出して飾っておけば、天体ショーもグッと盛り上がったのではなかろうか。二ヶ月近くも経ってから、こんなことを書くのもどうかしているのかもしれないが。

菅井は1950年代から60年代にかけてヨーロッパの主要な国際版画展で立て続けに大きな賞を受賞し(註1)、その名を広く知られるようになるが、この「日蝕」は、1966年に創設されたポーランドの国際版画ビエンナーレ(通称:クラコウ国際版画ビエンナーレ)の第一回展で大賞を受賞した作品である。菅井はこの時期、オートルートとともに、森と太陽のシリーズに取り組んでおり、この作品では、月ではなく、森がその役を果たしているいるのだろうか。この作品、総目録によれば、アルシュ紙に刷られていることになっているが、手持ちのものはリーヴ紙に刷られており、年記も65となっている。総目録に掲載されている図版でも年記は65なのだが、制作年は66年とされている。菅井の表記ミスなのであろうか。

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●題名:L'Eclipse au soleil
●サイズ:665x535mm(760x560mm)
●技法:Lithograph
●紙質:BFK Rives
●発行:Galerie Brusberg, Hannover
●印刷:Michel Casse, Paris
●制作年:1966
●目録番号:118

註:
1.
1959年:第三回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ.....国際買上げ賞
1960年:第二回東京国際版画ビエンナーレ.........東京近美賞
1961年:第四回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ.....第三席
1961年:第二回グレンヘン色彩版画トリエンナーレ.....大賞
1962年:第三十一回ヴェネツィア・ビエンナーレ(版画部門)デイヴィッド・ブライト基金賞
1965年:第八回サンパウロ・ビエンナーレ(版画部門)...最優秀賞
1966年:第一回クラコウ国際版画ビエンナーレ.......大賞
1972年:第一回ノルウェー国際版画ビエンナーレ......名誉賞
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by galleria-iska | 2012-07-14 19:33 | その他 | Comments(0)


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