ガレリア・イスカ通信

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2012年 06月 27日

キース・ヘリングのカバー・アート「A Diamond Hidden in the Mouth of a Corpse」(1985)

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ウォーホルのフィックス・ムーヴィー『眠り(Sleep)』(1963年)に主演した詩人で朗読パフォーマーのジョン・ジョルノ(John Giorno, 1936)によって1965年に設立された「ジョルノ・ポエトリー・システム(Giorno Poetry Systems)」は、詩やそれと関連する芸術形態を、革新的な着想によって、より多くのの聴衆と結びつけることを直接の目的とする非営利のレコード・レーベル。1985年にリリースされたこのコンピレーション・アルバムは、レーベル設立時からの仲間であった、1950年代のビート・ジェネレーションを代表する作家の一人で、朗読パフォーマーのウィリアム・S・バロウズ(William Seward Burroughs, 1914-1997)のトリビュート・アルバムとされている。ダブル・ジャケットの内側とインナー・スリーヴの表裏は、このアルバムのカバー・アートを担当したキース・ヘリング(Keith Haring, 1958-1990)によるコラージュ・アートとも言える、ヘリングが敬愛するバロウズ、1950年代にカットアップ技法(cut-up technique)を完成させ、それをバロウズに伝授した画家・著作家・詩人のブライオン・ガイシン(Brion Gysin, 1916-1986)やアルバムに参加メンバーの写真とヘリングの“ゲイ”的志向を示す奔放なドローイングとを組み合わせた作品となっており、ヘリングの署名がなされている。手元にあるのはシュリンクラップのかかったシールド盤と呼ばれるコレクターズ・アイテムのため、中のドローイングをお見せできないが、もう一枚手に入れることが出来たら、再度取り上げてみたいと思う。

このアルバム、1977年に創刊された日本の音楽雑誌で、プログレッシヴ・ロックやニュー・ウェイヴといった当時の先端的な音楽を中心とし、ウィリアム・バロウズなどのサブカルチャーまでを取り扱った“FOOL'S MATE”の第55号(1986年4月発行)に掲載された石井孝浩氏によるレコード・レヴューでは、次ぎのように紹介されている。以下引用:
カヴァー・アートにキース・ヘリング、ダブル・ジャケットの内側とスリーヴにはバロウズ、ブリオン・ジシンがバンバンに御登場、収録アーティストにバロウズ、マイケル・ギラ、ソニック・ユース、ダイアマンダ・ガラス、コイル、キャブス、デビッド・ヨハンセン、ハスカー・ドゥ等全11組、とメンツをながめただけで目の玉がひっくり返るヒトもいるだろうが、オムニバス物の一般的なコンセプトである「アーティスト紹介」のレコードというよりも、むしろマニア向けの色彩の濃い一枚。

ヘリングとバロウズの直接のコラボレーションは1988年に刊行された10点組の版画作品「アポカリプス(=黙示録)」("Apocalypse" published by George Mulder Fine Arts, Ed.90, 1988)で実現するのだが、バロウズはその序文で、アートのあり方について次のように記している。以下引用:
トスカーナ地方の沿岸を帆走中の水夫たちは、丘から木から空からの叫びを聞いた。「偉大な牧神(パン)が死んだ!」パニックの神、牧神(パン):何もかもが生きていてすばらしいという突然の認識。その日は紀元1年12月25日。だが、牧神(パン)は生き続けている。想像力の領域に、文章や絵画や音楽の中に。ゴッホのひまわりを見よ。まがまがしい生気に悶えている。ジョウジョウカのパン・フルートを聞け。牧神(パン)はいまでは薄められ、枠に入れられて美術館送りになり、本の中に葬られ、伝承に追いやられている。でも、アートは枠からあふれ出て地下鉄の落描きとなっている。それでおしまいだろうか? 黙示録めいたせりふを思い出そう:「何も真実ではない。すべてが許されている」--ハッサン・イ・サッバー。これを、ありとあらゆる無軌道で破壊的な行動への誘いだと解釈してはならない。そんなのはつまらない神話でしかないし、いずれは落ち目になる。すべてが許されているのは、真実が何もないからだ。すべては演技、幻想、夢……アートなのだ。アートが枠を離れ、書きことばがページを離れるとき--それも物理的な枠やページではなく、決められたカテゴリーの枠やページだ--現実そのものの根本的な崩壊が起きる。アートの文字どおりの実現。これはデュシャンやクライン、マンゾーニみたいな、手あたりしだいにサインしたり台座に載せたりして流用してしまうのとはまったく異なった方向だ。枠に入れたりサインしたりして流用しないで、枠や台座を取り除こう。そう、サインも取り除こう。真摯なアーティストはみんな不可能を試みる。その成功が、空に大きく『黙示録』を書くだろう。アーティストは軌跡を狙う。画家は、自分の絵がカンバスから抜け出して、別個の生命を持ち、絵の外での動きを持つよう意図している。そして生地のほころび一つで、伏魔殿はたちまちなだれこんでくる。。《「ウィリアム・S・バロウズ展:ショットガン・ペインティング」図録、山形浩生訳、1990年、セゾン美術館》より:

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Cover Art
●題名:A Diamond Hidden in the Mouth of a Corpse
●サイズ:315x315mm
●技法:Offset
●レーベル:Giorno Poetry Systems
●制作年:1985

Side One:
1. "Won't Change" Hüsker Dü
2. "Johnsonius" David Johansen
3. "Scum & Slime" John Giorno Band
4. "Excerpts from the Western Lands: The President, Colonel Bradford, Everyman a God" William S. Burroughs
5. "Halloween" Sonic Youth
Side Two:
6. "Dead Man's Shoes" Cabaret Voltaire
7. "Excerpt from Eyes Without Blood" Diamanda Galás
8. "Neither His Nor Yours" Coil
9. "Game" Michael Gira
10. "Out of the Frying Pan" David Van Tieghem
11. "Tenement Lover" Jessica Hagedorn & the Gangster Choir

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by galleria-iska | 2012-06-27 18:13 | キース・へリング関係 | Comments(0)


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