ガレリア・イスカ通信

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2012年 09月 22日

ロバート・ラウシェンバーグのオリジナル・プリント「Tag」(1997)

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巨大な画面をフィールドと捉え、そこに絵画的なイリュージョンを排した行為としてのペインティングを行なう方法論によって、戦後アメリカ美術の地位を飛躍的に向上させることとなった抽象表現主義の流れを汲みながらも、アメリカの日常的な事物や雑誌や新聞などの画像を画面に取り込むことで、さらに画面の平面化を推し進めたとされるネオ・ダダの旗手、ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg, 1925-2008)。そのラウシェンバーグが1997年、ニューヨーク市にあるソロモン・R・グッゲンハイム美術館(Solomon R. Guggenheim Museum, New York)で300点近い作品を集めて開催された大規模な回顧展「Robert Rauschenberg: A Retrospective」に際し、同美術館の賛助会員のために制作したミックスド・メディアによるオリジナル・プリント。その当時購読していたアメリカの美術雑誌に掲載された広告を見て申し込んだ。この作品は、ラウシェンバーグの絵画制作の特徴であるコンバイン・ペインティングを想起させる、身の回りにある種々雑多な物や画像を寄せ集め、それに抽象表現主義的なペインティングを加えた作品となっており、その即物性を高めるために、マージンを省き、イメージに合わせてシートの縁を裁断している。ラウシェンバーグのようなアメリカ的な土壌によって成立している作品は、“アメ車”のそれに似て、日本人の文化的資質や嗜好にすべからく合致するものではなく、鑑賞の対象にはなり得ても、収集の対象に上る頻度は低いのではないかと思われる。

版元であるグッゲンハイム美術館では現在、ロバート・ラウシェンバーグ財団の協力を得て、ラウシェンバーグの作品を恒常的に展示する新館の建設を計画しているとのことであるが、この他にも、スペインのビルバオを始め、世界各地で相次いでアメリカの現代美術を中心に紹介する近現代美術専門の分館を開館している。かつて抽象表現主義の運動がアメリカの先進性を誇示するために政治的に利用されたことがあったが、ラウシェンバーグのヴェネツィア・ビエンナーレでの国際大賞受賞もその成果のひとつであり、グッゲンハイム美術館の分構想も、アメリカの世界戦略のひとつなのであろうか。しかし一方で、美術館運営の現状というものを考えてみると、そこには世界的不況による寄付金の減少や、美術品の価格の高騰による収集費用の不足などの問題を抱えており、美術館がこれまで果してきた収集・保存、展示、研究、そして教育普及といった役割は当然のことながら、館の特色を生かしつつ財政的自立を維持していくためには、美術館や収蔵品の価値を活かしたブランドイメージを構築し、スペクタクルの視点を取り入れた観光資源としての在り方も模索していかざるを得ない状況があるのかもしれない。

●作家:Robert Rauschenberg(1925-2008)
●題名:Tag
●サイズ:467x400mm
●技法:Color screenprint, offset lithograph and embossing
●限定:500
●発行:Solomon R. Guggenheim Museum New York
●制作年:1997
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同展の図録の書影:「Robert Rauschenberg: A Retrospective」by Hopps, Walter and Susan Davidson, 632 pages with 490 full-color and 245 black-and-white reproductions. 250x292x50mm
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by galleria-iska | 2012-09-22 18:41 | その他 | Comments(0)


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