ガレリア・イスカ通信

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2012年 11月 05日

ピカソの石版画展の招待状「Picasso Litografie」(1962)

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よく似た綴りと発音の、道化師を意味する"Clown"と王を意味する"Crown"はたった一字違いであるが、その立場は天と地ほどの違いある一方、人間の表の顔と裏の顔を示す意味深長な関係性を見せる。サーカスや呼び物小屋で人気を集める道化師は、人間存在の悲哀を語り、また喜びを与える愛すべき存在として、ルオーやシャガールの重要な画題となってきた。ピカソもまた然り。青の時代における悲哀に満ちた道化師の姿からバラ色の時代を経て、絵画それ自体が否定される時代においても、闘牛や神話、人物像とともに常に主要なモチーフのひとつであった。社会が劇的に変化していく1960年代、現代社会そのものがひとつの風景として捉えられ、そこに生きる人間の疎外感といったような、社会性を帯びた作品が主流となり、人間性に重きを置いたテーマは影が薄くなっていく中、死ぬまで共産主義者であり続けたピカソは、現代美術の如何なる潮流にも飲み込まれず逆にピカソ自身であり続け、人間ピカソそのものがひとつのスタイルを獲得するに至ったと言えるかもしれない。

これは1962年10月6日から22日にかけてフィレンツェのミショウー画廊(Galleria Michaud)行なわれたピカソの石版画展の招待状で、三つ折り6ページの表紙には、ピカソの道化師を描いたカラーリトグラフが使われている。このリトグラフは、ピカソが一月に描いたドローイングをもとに制作されたもので、エスタンプと呼ばれる種類のものである。もとのドローイングには署名と1962年1月24日の日付が入れられているが、その署名の左側に見える小さな署名はリトグラフに入れられた鉛筆による署名である。招待状は展覧会を催した画廊ではなく、リトグラフの版元であったと思われる出版社(Arti Grafiche 《Il Torchio》, Firenze)が発行したようである。

●作家:Pablo Picasso(1881-1973)
●種類:Invitation
●サイズ:218x162mm(218x484mm)
●技法:Lithograph
●発行:Arti Grafiche 《Il Torchio》, Firenze
●制作年:1962
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表表紙の内側にはフランスの詩人で脚本家、またコラージュ・アーティストでもあった、ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert, 1900-1977)が1946年に出版した最初の著作『Paroles(言葉たち)』に収められた詩「Lanterne magique de Picasso(ピカソの幻燈)」(1944年)の末尾部分が掲げられている。この年の一月、ピカソはプレヴェールと、ピカソを始め、数多くの芸術家の写真を撮影した写真家のアンドレ・ヴィラール(André Villers, 1930-)と共同で、『昼間』(Diurnes)という挿画本を制作している。印刷は1月29日とあり、出版はパリのベルクグリューン画廊(Berggruen, Paris)である。
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〈ピカソ石版画展〉出品リスト
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by galleria-iska | 2012-11-05 20:16 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)


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