ガレリア・イスカ通信

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2013年 01月 05日

棟方志功の図録「Shiko Munakata」(1960)

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棟方志功(Shikou Munakata, 1903-1975)と言うと、日本人には、仏師ではなかったが、魂に触れる仏像を彫った“円空”にも似た存在であったのかもしれないし、欧米人には表現主義にも通じる人間の強い情念を感じさせる作家に見えたかもしれない。自分にとっては、戦前から戦後の復興期にかけて活躍した版画家として、同時代の作家ではなかったようについ思ってしまうのだが、実際はコンセプショナル・アート全盛の1970年代の中頃まで制作を続けていた作家であり、“民藝”という堅固な括りのなかでその存在を輝かせいるが故に、いわゆる美術界からははみ出た存在であったように思う。従ってその磁力が弱まる関東より以西に住む者には作品に接する機会はあまりなく、伝説の作家というような捉え方になってしまい、棟方の版画作品に直に対峙する前に既にその魅力というものを掴みきれない状態が出来上がってしまっていたように思う。そうした棟方の版画家として立ち位置を測りかねていた時、時間つぶしに立ち寄った書店で、没後4年経って刊行された長谷日出雄の「鬼が来た」(上下二巻)の文庫版(1984年刊)を偶然見つけ、少しはもやもやした気持ちが解消されるのではと思って購入、一気に読み終えたのだが、独創的な作品を数多く生み出した才気溢れる人間像が語られているのかと思いきや、棟方の生の人間像に迫る描写に、自惚れと嫉妬という強烈な毒を内に持った人間であるとの印象を強く持ってしまった。柳宗悦という一流の“蛇使い”に出会わなければ、ただの独りよがりの作家に終わってしまったかもしれないが、時代を超える作家というものは、いつもアカデミズムを超越したところから生まれてくることは確かのようである。

ここで取り上げるのは、フランスの古書店から入手した棟方志功の一枚刷りの展覧会図録である。内容は、1960年から二年にわたりヨーロッパの主要都市(註1)を巡回した棟方志功の版画展に先立ち、「ヨーロッパ巡回棟方志功展国内展示」(主催:国立近代美術館/国際文化振興会/日本民芸館/後援:外務省/毎日新聞社)と銘打ち、1959年10月24日から11月8日までの二週間、京橋にある東京国立近代美術館(Musée National d'Art Moderne de Tokyo )で開催された展覧会の内容をフランス語に翻訳したもので、フランスでの展覧会(会場は不明)の際に使われたものかと思われる。凸版印刷による図版は棟方の墨摺りの大作「華狩頒板壁画」(1954年)で、ドイツ語、フランス語、イタリア語で題名が記されている。棟方は、朝鮮半島北部にある高句麗古墳内部に描かれた狩猟図壁画と四方に花矢を放つアイヌ祭りに触発されて制作したこの作品について、「弓を持たせない、鉄砲を持たせない、心で花を狩る」という言葉を残している。テキストは当時日本民藝館の館長であった柳宗悦による「棟方の藝術」。

国際文化振興会(KBS)主催による「欧州巡回棟方志功展」は、1960年度開催分は定かではないが、1961年1月から12月にかけてオランダ、ポーランド、イギリス、西ドイツ(1949-1990)、チェコスロバキア(1918-1992)、ユーゴスラビア(1929-2003)を巡回している。

●作家:Shiko Munakata(1903-1975)
●種類:Catalogue
●サイズ:365x525mm
●技法:Letterpress
●発行:Musée National d'Art Moderne de Tokyo
●印刷:Bijutsu Shuppann-sha, Tokyo
●制作年:1959
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註:
1.1960年に開催された展覧会のうち、判明しているのは以下のもの:
イタリア:"Shiko Munakata: Incisioni" Galleria Civica d'Arte Moderna, Torino, 1960
西ドイツ:"Shiko Munakata: Holzschintte" Städtischen Museum Braunschweig, Braunschweig, 1960
オーストリア:"Shiko Munakata: Holzschnitte" Österreichisches Museum für Angewandte Kunst, Wien, 1960
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by galleria-iska | 2013-01-05 18:53 | 図録類 | Comments(0)


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