ガレリア・イスカ通信

galleriska.exblog.jp
ブログトップ
2013年 03月 18日

アントニ・タピエス展の招待状「Galerie Maeght」(1969)

a0155815_1522593.jpg

昨年亡くなったスペインの現代美術を代表する作家のひとり、アントニ・タピエス(Antoni Tapies, 1923-2012)はシュルレアリスムをその活動の起点とするが、抽象表現主義に傾倒していくことで、出身地であるカタルーニャ地方の乾いた風土を感じさせる物質性の高い表現に向うこととなる。1960年代にパリに移住、シャガール、ブラック、ミロといった作家を抱えるマーグ画廊(Galerie Maeght, Paris)と契約、広く国際舞台で活躍することとなる。とはいえ、タピエスの版画作品の価格は他の作家と比べると低く抑えられていたようで、"jésus"と呼ばれる中版(76x56cm)サイズのものが、1980年前半でも数万円で購入することができた。これはそのタピエスのマーグ画廊での三度目の個展の際に作られた内覧会への招待状である。タピエスはここでは、同じカタルーニャ地方の都市バルセロナ出身のミロが行なったように、指を絵筆のように用いて直接描写する方法を採っており、指跡や指紋といった身体の痕跡を残すことで、抽象表現主義における身体性を強く押し出した、直裁な表現を行なっている。そしてまたミロ同様、タピエスの作品を特徴付けるのは、画面の中に書き込まれた自身のモノグラムなどの文字や記号であるが、招待状を広げて見ていると、アルファベットの"T"や"A"、あるいは"X"という文字が浮かび上がってくる。

この個展の図録として刊行された「デリエール・ル・ミロワール(Derriere le Miroir)」誌の第180号には、タピエスのオリジナル・リトグラフとして、招待状と同じように指を使って描いた一本の赤い線が、何箇所かの息継ぎのような繋ぎ目を挟みながら、表紙から最終頁まで延々と続いている。その線は三種類の赤を使い分けて描かれたものであり、一見単調に見えもするが、幾つも感情の起伏を思わせる変化を認めることが出来る。さらにその告知用ポスターでは、白い画面に縦に引かれた、書を思わせる、たった一本の線によって作品を成立させており、それはポップ・アートの作家ロイ・リキテンスタインが抽象表現主義に特徴的な激しい筆触を表現した版画作品「ブラッシュストローク(Brushstroke)」(1965)”同様、絵画をそれを構成する最小限の要素にまで還元してみせている。

●作家:Antoni Tàpies(1923-2012)
●種類:Invitation
●題名:Lithographie en rouge et noir
●サイズ:220x170mm(220x340mm)
●技法:Lithograph
●発行:Maeght Editeur, Paris
●印刷:Arte, A. Maeght, Paris
●制作年:1969
●目録番号:Galfetti. #208
●参考文献:Tàpies - Das graphische Werk 1947-1972, Erker Verlag, St. Gallen, 1972.


a0155815_1523216.jpg

a0155815_14591451.jpg

a0155815_15295822.jpg
同展の図録として発行された『デリエール・ル・ミロワール(Derrière le Miroir)』誌、第180号:(Derriere le Miroir, No. 180, Octobre 1969: 'Tapies'. Text / poem by Joan Brossa. This issue contains 1 original 28-page colour lithograph! and 16 b/w reproductions on totally 42 pages including cover)
a0155815_1003927.jpg
同展の告知用ポスター

●作家:Antoni Tàpies(1923-2012)
●種類:Poster
●題名:Lithographie en rouge
●技法:Lithograph
●サイズ:650x450mm
●発行:Maeght Editeur, Paris
●印刷:Arte, A. Maeght, Paris
●制作年:1969
●目録番号:Galfetti. #207
●参考文献:Tàpies - Das graphische Werk 1947-1972, Erker Verlag, St. Gallen, 1972.
[PR]

by galleria-iska | 2013-03-18 13:00 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)


<< ホルスト・ヤンセンの画集「Ph...      平和のワイン「Ogata Yo... >>