ガレリア・イスカ通信

galleriska.exblog.jp
ブログトップ
2013年 06月 10日

キース・へリングのタンクトップ「Tank top for Club DV8」(1987)

a0155815_2065641.jpg

キース・へリング(Keith Haring, 1958-1990)とクラブとの関わりには、ゲイ・カルチャーが深く結びついており、ダンスやセックスといったヘリングの主要な作品テーマのイメージの源泉となっていることは周知のとおりである。へリングは1980年代の前半、ニューヨーク市ソーホーのゲイ・クラブ「パラダイス・ガラージ」に足繁く出入り、そこで知り合ったDJのラリー・レヴァンと親交を深め、その繋がりの中で幾つものLPや12インチ・シングル・レコードのカバー・アートを手掛けることとなる。またクラブを会場にして行なわれるパーティや演奏会、また自身の展覧会のポスターや招待状のデザインも行なっているが、美術愛好家の手元にあるものは少なく、その多くが失われてしまった可能性が強い。そのため、ヘリングのファンが持っていたものがネット・オークションなどに出品されると、日本では考えられない金額で落札されることがある。

ヘリングがポップ・ショップを開店する1986年、サン・フランシスコのハワード通りにあった名立たるナイトクラブ「Club DV8」の風変わりな興行主、“ドクター・ウィンキー(Dr. Winkie)”ことLawrence Lin-彼は1990年に誘拐未遂と強盗の罪で逮捕され、後に有罪となる-が、ヘリングを、ゲストとして、彼に敬意を表するための部屋に招待している。へリングがウィンキーのエイズ啓発運動への献金に対する感謝として即興的な壁画を制作すると約束したことによるものだが、ヘリングがクラブを訪れると、ウィンキーがクラブの部屋の壁を横断する長さに広げたキャンバスを用意していたことから、それを見たヘリングは“設置”をすることをためらってしまう。熟考と交渉を重ねたのち、ヘリングは“設置”を進めることに納得し、大量のドラッグを渡すことになった、と言われているが、シャンパンの『クリスタル(Cristal )』とその他の『贈り物(Party-favors)』によってその障害は取り除かれ、へリングは最終的にその品物と壁面を飾る4枚の巨大な壁画を送り届けた。そしてその公開のイべント「Club DV8 Unveils the Kieth Haring Room」が、スペシャル・ゲストに歌手のシルヴェスター・ジェームス(Sylvester James、1947-1988)を迎え、1986年6月5日午後9時から午前2時にかけて行なわれた。ヘリングはこのイべントの告知用ポスターのデザインも行なっている。クラブは2000年に閉鎖され、4枚の壁画のうち1枚はオークションに掛けられ、かなりの高値で落札され、現在はイタリアのコレクターの元にあるとのことである。

その翌年の1987年に、このクラブで開催された献金のための“出席不可欠”のクラブ・イベントのために制作されたのが、1986年から1987年にかけての絵画作品のモチーフとして登場する“アステカ仮面(Aztek mask)”と称されるモチーフを描いた色違いの二種類のポスターとティーシャツ(T–shirts )およびこのタンクトップ(Tank top)である。タンクトップは線描のみで、着色はされていない。
a0155815_12584786.jpg
ポスターとティーシャツのイメージ

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Tank top
●サイズ:740x380mm
●技法:Silkscreen
●製作:Club DV8, San Francisco
●制作年:1987
a0155815_207688.jpg

[PR]

by galleria-iska | 2013-06-10 12:31 | キース・へリング関係 | Comments(0)


<< ヴィクトル・ブローネル展の招待...      パウル・ヴンダーリッヒのリトグ... >>