ガレリア・イスカ通信

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2013年 07月 07日

パウル・ヴンダーリッヒのリトグラフ「Portraits für Harenberg」(1985)

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1973年にドルトムントで創業した出版社ハーレンベルク(Harenberg Kommunikation, Dortmund )は1985年、同社の人気シリーズであるポケットサイズの叢書《Die bibliophilen Taschenbücher 》の第470巻として、パウル・ヴンダーリッヒ(Paul Wunderlich, 1927-2010)の画集「Paul Wunderlich: Metamorphosen」(註1)を刊行した際、ヴンダーリッヒの署名入りのリトグラフ一葉を附した四種類の豪華版(a,b,c,d,各250部)も同時に刊行、ヴンダーリッヒは豪華版用に四点のリトグラフ《Portrait I~IV》を制作している。その四点のリトグラフを一枚の用紙に刷り込み、署名を入れたのがこの作品「Portraits für Harenberg」なのだが、実際は未裁断のものと考えるのが正しいようである。

ヴンダーリッヒは1972年にパリのベルクグリューン画廊(Galerie Berggruen, Paris)で行なった個展の際にも、図録の表紙のために四点のリトグラフを一枚の石板を使って制作しており、その四点のリトグラフを一枚の用紙に刷ったものに署名し作品「Katalogumschlag」として発表している。この作品「Portraits für Harenberg」では、遊び心も交えながら、エアーブラシで描画された四点の肖像画のまわりにエスキースやメモのようなものを描き加えることで、ひとつの“作品”としての成立を図っている。そしてスイス製のツァーカル紙(ZERKALL-BÜTTEN )を用いて摺刷されたものの中から、作家手持ち用として25部に署名を入れたのである。豪華版用のものは、画面下に署名を入れるスペースだけを残し、残り三辺は境界線に沿って切り離され、描き加えた部分は破棄された。

リトグラフの刷りは、ヴンダーリッヒが1984年から利用するようになった、スイスはベルン州の都市トゥーン(Thun)に工房を構え、自身も版画家であり画家としても活動している刷り師のエルンスト・ハンケ(Ernst Hanke, 1945-)が行なっている。ハンケはヴンダーリッヒの版画目録第二巻「Paul Wunderlich: Werkverzeichnis der Druckgraphik 2:1984-2004」(Edition Volker Huber, 2005)の編者でもある。

●作家:Paul Wunderlich(1927-2010)
●種類:Lithograph
●題名:Portraits für Harenberg
●サイズ:637x488mm
●限定:25 e.a.
●紙質:ZERKALL-BÜTTEN / ZERKALL MOULD MADE
●印刷:Ernst Hanke, Thun
●制作年:1985
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ヴンダーリッヒの自画像かと思われる。


註:
1.Paul Wunderlich: Metamorphosen. Ein Querschnitt durch das Werk. Kommentiert von Hans Holländer(Die bibliophilen Taschenbücher ; Nr. 470) Harenberg Kommunikation, Dortmund , 1985
同じ年、妻で写真家のカリン・シェケシー(Karin Székessy, 1938-) の写真集もこの出版社から刊行されている。
Karin Székessy: Mädchen im Atelier Mit einem Nachwort von Max Bense(Die bibliophilen Taschenbücher ; Nr. 465) Harenberg Kommunikation, Dortmund , 1985
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by galleria-iska | 2013-07-07 13:55 | その他 | Comments(2)
Commented by bigfly at 2013-07-12 22:44 x
こんばんは。
我家の画集には右上のものが付属していました。
余白に描かれた手の下の青いイメージも中途半端に残っているので、このように全体が分からないとインクの汚れが付着しているだけのようにも見えます…。
確かにリマークの様なイメージの追加によって一枚の作品として仕上がっていますね。
どうせ付いて来るなら、下2枚のどちらかのイメージの作品がよかったです…(笑)。
Commented by galleria-iska at 2013-07-13 16:38
こんにちは。bigfly様、コメントありがとうございます。わたしは右下の作品が付いたものを紹介されたことがあったのですが、他にもあると聞くとつい見てみたくなり、有名な諺を地で行き、見逃してしまいました。この作品は古くからヴンダーリッヒを扱っている画廊での近作展終了後に購入したものです。単独作品としての価値は割り引かれるかもしれませんが、遊び心のようなものに乗っかってしまいました。


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