ガレリア・イスカ通信

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2013年 09月 23日

ロバート・ラウシェンバーグのポスター「Jewish Museum Poster」(1963)

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アメリカの20世紀現代美術を代表する作家のひとり、ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg, 1925-2006)は、版画家としても数多くの作品を残しているが、同時にポスターの制作にも力を入れており、生涯に120点を超すポスターのデザインを行なっている。そのラウシェンバーグが最初にデザインしたのが、美術館での最初の個展として、1963年にニューヨーク市にあるジューイッシュ美術館(The Jewish Museum)で行なわれた展覧会の告知用のポスターである。ポスターはリトグラフで制作されている。展覧会を開催したジューイッシュ美術館は1904年、ユダヤ文化の注目すべき拡がりと多様性を探求するべく、ユダヤ教の神学校の図書館内に併設されたが、1944年からは、ドイツ生まれの銀行家で慈善家であったフェリックス・ワールブルク(Felix Warburg, 1871-1937)の未亡人から寄贈された邸宅を美術館として使用、現在に至る。1960年代に入ると現代美術の紹介(註1)も行なうようになるが、その嚆矢となったのが、ロバート・ラウシェンバーグの個展である。

ポスターの印刷を行なったのは、ロシア系ユダヤ人(Tatyyana Auguschewitsch)として1904年にシベリアに生まれたタチアナ・グロスマン(Tatyyana Grosman, 1904-1982)(註:1)が1957年にニューヨーク州ロングアイランド、ウェスト・アイスリップに設立したリトグラフの版画工房、ユニバーサル・リミテッド・アート・エディションズ(Universal Limited Art Editions)である。ラウシェンバーグにリトグラフの制作を勧めたのはグロスマンで、1962年に最初のリトグラフをこの工房で制作している。傑作は往々にして作家がそのスタイルを創造した直後に生み出されることが多いが、ラウシェンバーグについても例外ではなかったようである。この年の初めに同工房で制作された「アクシデント(Accident)」がユーゴスラビア(現スロヴェニア)の首都リュブリャナで開催された国際版画ビエンナーレ(Biennial of Graphic Art Yugoslavia-Ljubljana)の大賞を受賞し、ラウシェンバーグの版画の革新性が世界に認められたからである。その意味において、同じ年に制作されたこのポスターについても、ピカソやミロなどと同様、ラウシェンバーグ独自のオリジナリティーを確立しており、その後のポスター制作の方向性を示す重要な役割を果たしたと言えよう。

このポスターでもそうであるが、ラウシェンバーグが1962年から64年にかけて制作したリトグラフは、ニュヨーク・タイムズ(The New York Times)誌やヘラルド・トリビューン(The Herald Tribune)誌に掲載された写真図版用のハーフトーンの版を利用しており、それらをコラージュ風にリトグラフ用の石灰石に転写し、それに抽象表現主義風の激しい筆致を加えたもので、彼の創作の目的である「芸術作品をつくることではなく、芸術と生活の橋渡しをすることだ」言葉を体現する、日常生活の中で目にするイメージと純粋な芸術的な衝動を組み合わせた作品となっている。

●作家:Robert Rauschenberg(1925-2008)
●種類:Poster
●題名:The Jewish Museum Poster
●サイズ:814x561mm
●技法:Offset Lithograph
●発行:Jewish Museum, New York
●印刷:Universal Limited Art Editions(ULAE), New York
●制作年:1963
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註:
1.1960年代にジューイッシュ美術館で開催された現代美術に関する展覧会:
「Jasper Johns」1964
「Recent American Sculpture」1964
「Max Ernst: Sculpture and Recent Painting」1966
「Richard Smith」1968

2.ロバート・ラウシェンバーグ《アクシデント》1963年
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●技法:Lithograph
●サイズ:973x700mm(1050x750mm)
●限定:29
●発行:Universal Limited Art Editions, West Islip, New York
●印刷:Universal Limited Art Editions, West Islip, New York


註:

1.シベリア生まれのタチアナ・グロスマンはロシア革命の最中、日本に渡り日本美術に魅了される。その後ヴェネツィアを経てドレスデンに到着、ドレスデン応用芸術アカデミーでデッサンと服飾デザインを学び、1928年、日本の美から着想を得たドローイングを基に制作した東洋風の衣装で最高賞を受賞。1931年にポーランド系ユダヤ人のモーリス・グロスマン(Maurice Grosman, 1900-1976)結婚。1932年、ナチの台頭による危険から逃れるためにパリに渡るが、1940年、ナチのパリ侵攻二日前に脱出、バルセロナ経由で、1943年にアメリカに移住する。



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by galleria-iska | 2013-09-23 19:25 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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