2014年 04月 03日
(David Hockney: Luncheon at the British Embassy Tokyo, 16 February 1983) 3月16日の日曜日、家庭の日(毎月第3日曜日)最後の無料観覧を利用し、食にまつわる作品を国内各地の美術館から集めて開催中の展覧会『ア・ターブル!―ごはんだよ! 食をめぐる美の饗宴―』を観るために、三重県立美術館に出掛けた。そこで偶然にもデイヴィッド・ホックニー(David Hockney, 1937-)の大きなフォトコラージュ『英国大使館での昼食 1983年2月16日、東京(Luncheon at the British Embassy Tokyo, 16 February 1983)を観ることができた。縦117.3cm、横211.6cmと、ホックニーのフォトコラージュの中でも最大クラスの作品で、キュビスムの複数の視点から捉えられた対象を再構成する手法に倣って考案されたホックニー独自の写真術(註1)によって、カメラのレンズを通して捉えられたホックニーの視点の移動を追体験できるように画面が構成されており、同時にそれは、単一の静止画面である一枚の写真からは得られない、重層的な時間体験を可能にするものである。個々の写真は、落ち着いた色調の壁面や床と呼応するダークブラウンのボードに重なり合うようにコラージュされ、和やかに進む食事会のインティメイトな雰囲気を映し出しており、フェルメールを想起させるようなガラス窓から差し込む柔らかな外光が、人物やテーブルの上に置かれた食器やグラスに印影と立体感を与え、ホックニーの絵画における自然主義的な端正で正確な画面を見るような美しさを放っていた。 この図録は1986年から88年にかけてワシントンD.C.の《International Exhibitions Foundation》によって企画され巡回したホックニーの写真展に合わせて刊行された図録で、ホックニーが1983年にロンドンのビクトリア・アルバート美術館で行なった写真についての講演から書き起こしたエッセイを収録している。 ●作家:David Hockney(1937-) ●種類:Exhibition catalogue ●サイズ:255x203mm ●技法:Offset ●発行:International Exhibitions Foundation, Wahington, D.C. ●印刷:Schneidereith & Sons, Inc., ●制作年:1986 註: 1.ホックニーは自身の写真術について次のように語っている: “僕は新しい写真をキュビスムの思想に従って並べてみた。キュビストの静物画の一種の模倣をやってみようと、ギターを借りて伝統的静物画のモティーフらしくしつらえると、おもしろいことにピカソやブラックの作品に見えてきた。1枚きりの写真よりは、この方がずっと本当らしく見える。この方法はたちまち多くのモチィーフに及んだ。手間のかかるのは肖像画だった。全体の部分を1枚1枚カメラで撮る時は、一つの目でみていることにしかならないが、完成した全体を見渡すなら、二つの目を使って見たというリアリティが強調されてくる。全体を見ようとすれば目は動き続けるけれど、それが、生の体験とちょうど同じなのは言うまでもない。”("David Hockney Photographs",Petersburg Press, London,1982)より
by galleria-iska
| 2014-04-03 12:32
| 図録類
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