ガレリア・イスカ通信

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2014年 06月 02日

ジャン・ジャンセムのメニュー「Le Livre Contemporain et les Bibliophiles Franco-Suisses」(1974)

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人間の哲学的思考に欠ける経済活動による環境破壊や気候変動を引き起こす地球温暖化に対する全地球的取り組みが議論される中、いまだに(生存のためか?)個々の利益や権利を主張し、状況をさらに悪化させる方向に向うのは、知識や技術、宗教といった様々な問題解決能力を身に付けたとしても、いまだに自分自身をコントロール出来ずにいる人間の、遺伝子レベルで組み込まれた生物学的基盤に由来するものなのだろうか。キリストの“あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい”(マタイ福音書5章38,39節)という言葉があるが、神の赦しの下では、私欲に繋がるものを持つ必要はない、という言葉の意味を今一度考えなければらない。全ての人がキリスト者ではないが、全ての人間、生物は互いを愛する力を持っており、その愛の力を持って、自我を、そして自我の総体としての国家をコントロールすることが出来れば、たとえ神の赦しを知らずとも、『目には目で、歯には歯で』という律法を超越することが可能となるかもしれない、と言い古された言葉を並べてみたが.そんな日は地球が人間にとって生存不可能な状態になっても来ないか...。

オスマン帝国によるアルメニア人大量虐殺という時代に生きたアルメニア人の父とトルコ人の母の愛の力で命を授かり、戦禍を逃れてギリシアに渡り、その後フランスで絵を学び画家となったジャン・ジャンセム(Jean Jansem(本名:Ohannès Semerdjian, 1920-2013)というトルコ(小アジア)のスールーズ生まれのアルメニア人画家が昨年の8月27日、93才で亡くなった。これは、1974年にパリの愛書家出版《Éditions Le Livre Contemporain et les Bibliophiles Franco-Suisses》から部数限定の愛書家向けの豪華本として出版された、日本でも『木を植えた男』の作者として知られ、人間と自然との協調をテーマとした作品を数多く残したフランスの作家ジャン・ジオノ(Jean Giono, 1895-1970)の短編集『哀れみの孤独(Solitude de la p pitié)』の挿絵を担当したジャンセムによる出版記念の晩餐会メニュー(Dîner du jeudi 9 mai 1974)である。表紙はジャンセムのエッチングとアクアティントによる銅版画で、通常はサインが入っていないが、これは所有者の要望で画家がボールペンで署名を入れたもの。裸婦やバレリーナ、道化師を得意とするジャンセムは背を向ける女性をしばしば描いている。それは、具象画によるリアリスムを追求したジャンセムらしく、後姿で彼女たちの人生や境遇を語らせるためであるが、果物らしきものを入れた籠を持つ農家の娘を描いたこの作品では、見る者は、娘の視線の向こう側にある、豊かな稔りをもたらしてくれる木々の生えた大地に思いを巡らせることになるのであろう。

●作家:Jean Jansem(1920-2013)
●種類:Menu
●サイズ:375x280mm(375x580mm)
●技法:Etching+aquatint
●限定:140+XXXV
●発行:Le Livre Contemporain et les Bibliophiles Franco-Suisses, Paris
●制作:1974
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by galleria-iska | 2014-06-02 12:11 | その他 | Comments(0)


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