2014年 10月 30日
前回、日本を代表するグラフィックデザイナーである永井一正氏デザインの展覧会のチラシを取り上げたが、その流れで、今回は随分昔に手に入れた永井氏の「動物シリーズ」のポスターを取り上げてみたい。動物シリーズは還暦間近い1988年頃から始まるらしいのだが、既にその年に傑作とも言える日本的なるものの象徴のひとつとしての“亀”を意匠化した「Japan(3)」を制作している。今回取り上げるのは、その翌年に東京のコニカプラザで“水(Water)”をテーマに開催されたJAGDA(Japan Graphic Designers Association)ポスター展のために制作された二種類のポスター「水は生命(Water is Life)」のうちの一点で、ライオンらしき動物が水を飲む姿を描いているのだが、ただ、頭部がどうしても魚類に見えてしまう。 このポスターは動物シリーズの中では最も単純な構図であるが、青色の背景には、「Japan(3)」の背景にも使われている同心円状の文様があしらわれており、それは生命の根源である水の波紋を想起させるための意匠であるかと思われるのだが、同時に日本的な装飾性や無限の回帰を示す、多義的な視覚言語としての機能を有している。灰色の背景には大きさの異なる渦巻き状の文様が見えるが、それはライオンが生息する草原の植生を表現しているのだろうか。川や池の水底から湧き出す湧水のようにも見えなくもない。 富山県立近代美術館で1990年に開催された「永井一正展」の図録にはオフセットと表記されているが、間違いなくシルクスクリーン印刷である。 ●作家:Kazumasa Nagai(1929-) ●種類:Poster ●サイズ:1030x728mm ●技法:Silkscreen ●限定:100 ●発行:Japan Graphic Design Association(JAGDA), Tokyo ●制作年:1989 参考文献: 「永井一正展」図録、富山県立近代美術館、1990年、p.40, p35 『永井一正ポスター展「Life」』図録、東京国立近代美術館、1998年
by galleria-iska
| 2014-10-30 21:06
| ポスター/メイラー
|
Comments(0)
|
アバウト
カテゴリ
はじめに 案内状/招待状関係 キース・へリング関係 ホルスト・ヤンセン関係 ロバート・メイプルソープ関係 ポスター/メイラー ヴィーノ・デッラ・パーチェ 図録類 その他 ホルスト・ヤンセンのポスター フォロニアム 版画関係 最新の記事
以前の記事
最新のコメント
検索
タグ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||