ガレリア・イスカ通信

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2014年 11月 03日

粟津潔のポスター「art now」(1971)

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前回の記事の中で触れたグラフックデザイナーの永井一正(Kazumasa Nagai, 1929-)氏が1988年に“亀”をモチーフに制作したポスター「Japan 3」(図版参照)は、恐らく背中に緑藻類が付着した姿が蓑を羽織ったように見える“蓑亀(ミノガメ)”と呼ばれる亀ではないかと思われるが、浮世絵師の歌川広重が連作「名所江戸百景」の中の『深川 萬年橋』で描いた手桶の取っ手に吊るされた一匹の亀と同様、長寿を象徴する縁起のよいものとして、自身の還暦を祝う意味合いが込められているのではないかと思われる。

その亀で思い出したのだが、永井氏と同じ1929年生まれの異色のグラフィックデザイナー粟津潔(Kiyoshi Awazu, 1929-2009)氏にも亀が登場するポスターがある。1970年代初頭に講談社から刊行された現代美術叢書「art now 現代の美術」(全12巻+別冊1巻)の宣伝用に制作されたポスターである。粟津氏の他にも三人のグラフィックデザイナー、杉浦康平(Kohei Sugiura, 1932-)氏、宇野亜喜良(Akira Uno, 1934-)氏、横尾忠則(Tadanori Yokoo, 1936-)氏が参加しており。杉浦氏以外の三氏は、“アヴァンギャルド”のポスター作家として、1960年から1970年にかけて、天井棧敷、状況劇場、黒テント、自由劇場、大駱駝艦といったアングラ演劇の公演告知ポスターを数多く手掛けたことでも知られる。

横尾氏と同様、サイケデリックを経験した粟津氏の補色関係の色を敢えて組み合わせて、ある意味どぎつく、垢抜けない画面は、永井氏の洗練されたデザイン感覚とは対極にあるにあるように思われるが、高度に抽象化された永井氏の無機的な画面とは異なり、粟津氏は早くから日本的なるものに注目しており、日本文化を形成している様々な因習、信仰、祭祀、伝承などの図像を取り込んだカルト的な画面を創り上げている。このポスターに登場する亀は、画面上部に取り込まれた乙姫らしき図像から推測されるに、竜宮の使いとしての海亀を描いたのではないかと思われる。ポスターの上下左右の端には龍宮城の春夏秋冬の庭に通じる門を表す東西南北の文字が打たれ、画面中央には物語の主人公であると思われる「浦島太郎」が体験する夢幻的な空間が、サイケデリックアートを思わせる渦巻くようにうねる七色の色によって表現されている。画面の周囲には同じ図像が縁飾りのように並べてられているが、それは横尾氏の1960年代から1970年代のポスターにも見られる意匠で、画面が現実世界とは隔絶された異世界(異界)であることを際立たせる働きしている。

●作家:Kiyoshi Awazu(1929-2009)
●種類:Poster
●サイズ:732x514mm
●技法:Offset
●発行:Kodansha Ltd., Tokyo
●制作年:1971
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図版:永井一正氏デザインのポスター「Japan 3」(1988年)
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by galleria-iska | 2014-11-03 20:45 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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