ガレリア・イスカ通信

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2015年 02月 06日

ホルスト・ヤンセンの年賀状「Prosit Neujahr 1968: Ballade vom Herrn Latour」(1967)

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前にも一度取り上げたことがあるが、ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が1968年の年賀状として制作した折り本形式の絵本『Ballade vom Herrn Latour(Ballad of Lord Latour)』は、ドイツの作曲家カール・オルフ(Carl Orff, 1895-1982)の子供のための音楽(教育音楽)(注1))ムジカ・ポエティカ(Musika Poetica)所収の『Ballade vom Herrn Latour』を視覚化したもので、ヤンセンは蛇竜が守る高くて奥深い塔の中にひとり座る伯爵の娘を助け出すという、中世の騎士道物語風の童話(メルヒェン)に仕立てている。

ヤンセンは1961年に、この絵本の基となった表紙絵を含め6点のミニチュアサイズのエッチング(カール・フォーゲル編のカタログによると、縦94mm、横72mmとある)からなる同名の版画集を制作しており、それぞれのイメージに添えられた詞書き(テキスト)の末尾に、"Vive la, vive la, vive l'amour"と、「Vive l'Amour」または「Viva la Compagnie」として知られる“乾杯の歌”のリズム感のあるフレーズを付け加えることで、合いの手のような効果を生み出している。年賀状はそれを亜鉛版エッチングで新たに描き直したもので、版画集から表紙絵を省いた連続する5枚のパネルからなる。亜鉛版エッチングの特性の一つであるフラットな面表現を活かした画面は、細かな描線で描き込まれたエッチングの画面とは異なり、切り絵を思わせる二色刷りの画面となっている。そのため、画廊やパブリック・オークションでもリトグラフと誤って表記されていることがある。ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵する12点のホルスト・ヤンセンの作品のうち5点までが亜鉛版エッチングによるポスターであるが、同美術館も技法をリトグラフと表記しており、それも誤解を生む原因のひとつとなっているのではないかと思われる。日本の公立美術館はヤンセンのこの種の作品を評価の対象として捉えていないので、そのような誤解が生じる心配はないが。
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●作家:Horst Janssen
●種類:Leporello(Holding booklet)
●題名:Prosit Neujahr 1968: Ballade vom Herrn Latour
●サイズ:320x175mm(320x860mm)
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●印刷:Druck Christians, Hamburg
●制作年:1967
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5枚目のパネルの末尾には新年の挨拶"Prosit Neujahr 1968"が添えられている。縁の部分に版上サイン。



参考文献:
Spielmann, Heinz, Horst Janssen - Retrospective auf Verdacht, Hamburg, Museum für Kunst Gewerbe Hamburg, 1982, no.141, p.69.

注:

1.“教育音楽”は、カール・オルフが1930年代に作曲したもので、1950年から1954年にかけて、彼の門下のグニルト・ケートマン(Gunild Keetman)の協力を得て全面改訂し、ムジカ・ポエティカ(Musika Poetica)として纏めたもの。
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by galleria-iska | 2015-02-06 21:26 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)


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