ガレリア・イスカ通信

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2015年 03月 16日

ジャン・ティンゲリーの図録「Hanover Gallery, London」(1968)

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人工的な動力源を持つ彫刻、キネティック・アートという新しい表現法を美術界にもたらしたスイスの彫刻家ジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely, 1925-2002)の彫刻を実際に目にしたのは、ポンピドゥー・センターに近くのストラヴィンスキー広場の噴水(Fontaine Stravinsky)に設置された「自動人形の噴水(La Fontaine des automates) 」というニキ・ド・サンファルと共同制作したものが最初で最後である。混乱と破壊をテーマにしたような、黒一色に塗られ、不気味に反復する動きを見せるティンゲリーの彫刻は、ダダ的な精神を根に持つが、その絶え間なく反復する意味の無い運動は、現代という社会構造に組み込まれ、機械のように動くことを強要される人間と物質文明の有り様を映し出しているようにも見える。それとは対照的に、有機的なフォルムとにごりのない純粋な色彩に彩られたニキの彫刻は、まさに生の一瞬の輝きを垣間見せてくれる。

ティンゲリーとニキは同じ画廊で交互して個展を開いているが、これは、伝説の画廊主エリカ・ブラウゼン(Erica Brausen, 1908-1992)がロンドンに設立したハノーヴァー画廊(Hanover Gallery, London)で、ニキの個展(1968年10月2日-11月1日)の個展から一月余り経ったから一月余経った12月5日から翌年の1月5日にかけて開催されたジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely, 1925-1991)の個展の図録として制作された、18枚のパネルからなる折り本(Leporello)形式のアーティストブックである。ティンゲリーはこのタイプの図録を1964年末から翌年の1月にかけて行なわれたパリのイオラス画廊(Galerie Alexandre Iolas, Paris)での個展「Meta(機械) II」で既に試しているが、イオラス画廊でのそれがモノクロで印刷されているのに対し、ハノーヴァー画廊のものは、ニキのカラフルな造本に触発されたのか、彩色された雑誌などの切り抜きが無機的な画面のアクセントとなっている。それらが作品の展示風景を撮った写真やドローイングと組み合わされ、ラウシェンバーグを彷彿させるネオ・ダダ的な雰囲気を持った画面を構成している。印刷はニキのものと同様、ミラノのセルジオ・トシ(Sergio Tosi, Milano)が行なっている。そしてこの図録のコンセプトが、今度はニキが1971年にパリのイオラス画廊で行なった個展「Réalisations & projets d'architectures de Niki de Saint Phalle」の図録に継承されていくのである。

気付かれたと思うが、図録の前半と後半の二ヶ所にニキのモチーフが顔を覗かせている。ひとつはニキのトレードマークとも言える、ハノーヴァー画廊での招待状や図録にも登場するナナで、もう一つは、ナナとともにニキの作品には欠かせない蛇である。ニキの描く蛇は、忌むべき存在としてではなく、妊婦と同じように、豊穣や多産、永遠の生命力の象徴として描かれている。

●作家:Jean Tinguely(Jean Tinguely,1925-1991)
●種類:Catalogue
●サイズ:89x160mm(89x2864mm)
●技法:Silkscreen
●発行:Hanover Gallery, London
●印刷:Sergio Tosi, Milano
●制作年:1968
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by galleria-iska | 2015-03-16 20:42 | 図録類 | Comments(0)


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