ガレリア・イスカ通信

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2015年 06月 08日

エドゥアルド・パオロッツィのポスター「Pace Gallery, New York」(1967)

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シュルレアリストの作家として出発し、ICAとして知られるインスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アーツ(Institute of Contemporary Arts)の設立と運営に関わっていた画家のリチャード・ハミルトン(Richard Hamilton, 1922-2011)や「Pop Art」という言葉を最初に用いた評論家のローレンス・アロウェイ(Lawrence Alloway, 1926–1990)らと1952年、イギリスのポップアート運動の先駆けとみなされるインデペンデント・グループ(Independent Group) の創設に加わり、1956年にはロンドンのホワイト・チャペル・アート・ギャラリーでポップ・アートの出発点とも言える「これが明日だ」展にリチャード・ハミルトンらと出品、ポップ・アートを先導する活動を行なった彫刻家で美術家のエドゥアルド・パオロッツィ(Sir Eduardo Paolozzi, 1924-2005)は1924年、スコットランドのエディンバラに、その名が示すように、イタリア移民の子として生まれた。年譜によると、パオロッツィはイギリスの美術学校で学んだ後、パリで三年間制作活動を行なう。その間、アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)、ジャン・アルプ(Jean Arp)、コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuși)といった、ジョルジュ・ブラック(Georges Braque)、フェルナン・レジェ(Fernand Léger)と知り合い、大きな影響を受ける。殊にジャコメッティやシュルレアリスムのメンバーからの影響はパオロッツィ1950年代中期の彫刻に見て取れる、とあり、パオロッツィ自身も自身の作品をシュルレアリスムであると述べている。

エドゥアルド・パオロッツィが1965年から1970年にかけて制作し、ロンドンのアレクト出版(Editions Alecto, Lndon)から出版した版画集「As Is When」(1965)、「Moonstrips Empire News」(1967)、「General Dynamic Fun」(1970)、それと自費で出版した「Universal Electronic Vacuum」(1967)(註1)は、いずれも独創的で、シルクスクリーン・プリントの可能性と限界を押し広げたとされる。パオロッツィは1968年にカリフォルニア大学バークリー校で彫刻と陶器の教鞭を取っており、在職中に、サンフランシスコのディズニーランド、セクシーな下着メーカー、フレデリックス・オブ・ハリウッド、パラマウント・スタジオ、サンフランシスコとロス・アンジェルスの蝋人形館に出掛けており、また、カルフォルニア大学のコンピューター・センター、スタンフォード大学の加速器センター、サンタ・モニカのダグラス・エアクラフト社、ヘイワードのゼネラル・モーターズの組み立て工場にも訪れている。それらは上記の版画集に見られるポピュラー・カルチャーやテクノロジーへの強い関心を如実に示しているが、文明批評の意図は持っていなかったようである。

このポスターは1967年にニューヨーク市のペイス画廊(Pace Gallery, New York)で開催されたパオロッツィの彫刻展「Eduardo Paolozzi - New Sculpture at the Pace Gallery・Nov.18 - Dec. 16, 1967」の告知用ポスターとして作られたもので、「Universal Electronic Vacuum」所収のポスター「Editions Alecto London, Hanover Gallery London, Pace Gallery New York」のイメージを使ってデザインされており、ニューヨーク市のポスター・オリジナルズ社(Poster Originals, Ltd., New York)から出版されたものである。購入価格は20ドル(US $20)だったように思う。ミッキー・マウスの図像にかろうじてポップ・アートの匂いを感じて購入したのだが、いまだに馴染めないでいる。パオロッツィはイギリスのポップ・アートを代表する作家のひとりであるが、その作風故か、市場の反応は第一級の評価とは言い難い。

●作家:(Sir)Eduardo Paolozzi(1924-2005)
●種類:Poster
●サイズ:865x617mm
●技法:Silkscreen + Offset lithograph
●発行:Poster Originals, Ltd., New York
●制作年:1967
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ポスターの下部には、ディズニーの人気キャラクター、ミッキーとミニー・マウスが描かれており、ドットマトリクスを用いた電子機器の表示をイメージさせるのだろうが、自分には編み物のパターンに見えてしまう。

註:

1.「Universal Electronic Vacuum」(10 prints, poster and text; published by Paolozzi 1967 in a limited edition of 75. Printed at Kelpra Studio, London)

参考文献:

「現代版画 ロンドン-ニューヨーク展」小川正隆、大島清次、中島徳博:1984年6月9日-7月8日、三重県立美術館。編集:富山県立近代美術館、表紙デザイン:永井一正
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もうかれこれ30年以上前のことになるだろうか。知り合いのデザイナーと連れ立って、三重県立美術館に巡回していた、ロンドン、ニュヨークの主だった版元から出版された現代美術の版画を紹介する「現代版画 ロンドン-ニューヨーク」展に出掛けた。そこで初めてエドゥアルド・パオロッツィの版画を目にしたのだが、コラージュと幾何学的な文様の組み合わせによる精巧な図面といった感で、高度に発達したテクノロジーによって構築された機械文明の諸相が万華鏡のように描き出されていた。ただ、その感情を排した緻密で無機質な図像の繰り返しに、いささか食傷気味であった。
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哲学者のヴィトゲンスタインの生涯と著述に基づいて制作された12点のシルクスクリーンによる版画集「As is When(
~の時のように)」の一部。
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by galleria-iska | 2015-06-08 18:22 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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