ガレリア・イスカ通信

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2015年 07月 18日

ルネ・マグリットのポスター「Galerie Alexandre Iolas」

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前に一度、ベルギーの画家ルネ・マグリット(René Magritte, 1898-1967)のオリジナル・リトポスター(註1)を取り上げたことがあるが、今回のものは、マグリットの契約画廊で、アメリカを初め、フランス、イタリアなどに支店を持つアレクサンドル・イオラス画廊(Galerie Alexandre Iolas)から発行されたマグリットの絵画(原題不明)を用いた複製ポスター。1980年代にニューヨーク市のポスター・オリジナルズ(Poster Originals, Ltd., New York)から取り寄せたもの。もう一点、靴が途中から足に変容している作品「Le modèle rouge,1935」 (註2)を用いたポスターもあったはずなのだが、はてさて何所に行ってしまったのやら。

マグリットの絵画を見るとき、そこにシュルレアリストとしてのマグリット独自の表現法が伴わなかったとしたら、ただの写実的な絵画としか見えないのであるが、現実にあるものを題材にしながら、それを修辞学における比喩的表現によってそれぞれの関係を逆転させ、矛盾に満ちながらも神秘的で詩的な絵画空間を構築している。

マグリットはベルギーのブリュッセルとフランスのパリを何度も往来しながら、自らの様式を発展させていった作家で、シュルレアリスムの影響を受け、一枚の木の葉を題材にした作品を何点も描いている。そのひとつに、大地に立てられた一枚の葉が一本の木の輪郭として描かれているものがあるが、このポスターに使われた作品は、古典的とも思えるような技法で描かれた背景の中に立つ一枚の木の葉を描いたものだが、その写実的な描写がなお一層、視覚的な混乱を引き起こすこととなる。マグリットは修辞学でいうところの、物事の近接性にもとづく比喩である換喩(metonymy)を用い、木という存在を、その部分を構成する葉によって喩えているのだが、それは同時に、木の葉のような形をした木として、一種の隠喩(metaphor)的な表現と見えなくもない。それはもうひとつのポスターに使われた作品「Le modèle rouge,1935」ついても言える。

われわれの視覚は通常、慣れ親しんだ形態によってほぼ無意識に対象を認知しているのだが、それが逆に対象を見誤まったり、誤認したり、また錯覚を引き起こす原因ともなっている。それを文学や詩ではひとつの修辞法として用いることにより、大いなる想像力を喚起することなるのであるが、絵画において、絵を読むという行為は、多分に道徳的・教訓的なものであったり、宗教的なものであったが、マグリットは言葉とイメージの関係性を取り上げ、詩的な絵画空間を構築することに専念した画家である。その結果、歴史に埋もれることなく、常に世界の謎を見る側に問い続けており、デザインやグラフィックアートにも多大な影響を与えている。

●作家:René Magritte(1898-1967)
●種類:Poster
●サイズ:991x679mm
●技法:(Image:Offset, Lettering:Silkscreen)
●発行:Galerie Alexandre Iolas, Milano
●印刷:Grafic Olimpia, Milano
●制作年:Unknown
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ポスターの裏側に押されたGrafic Olimpiaのゴム印。Grafic Olimpiaはイタリアのミラノで画集や図録の印刷と出版を手掛ける出版社


註:

1.
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マグリットが1965年に毎年5月にパリで開催される展覧会「サロン・ド・メ(Salon de Mai)」の広報用にデザインしたオリジナルのリトポスター。印刷はパリのムルロー工房。

●作家:René Magritte(1898-1967)
●種類:Poster
●サイズ:655x465mm
●技法:Lithograph
●限定:ca.850
●発行:Musée d'Art Moderne de la Ville de Paris
●印刷:Mourlot
●制作年:1965


2.
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図版:アレクサンドル・イオラス画廊(Galerie Alexandre Iolas)から発行されたもう一点のポスター「Le modèle rouge」。印刷も同じGrafic Olimpia, Milano。この絵画作品について、マグリットは1938年の講演で、その図像について、次のように説明している。以下引用:

In a 1938 lecture, Magritte explained the imagery of Le modéle rouge as the "solution" to a "problem": "The problem of the shoes demonstrates how far the most barbaric things can, through force of habit, come to be considered quite respectable. Thanks to "Modèle rouge," people can feel that the union of a human foot with a leather shoe is, in fact, a monstrous custom" (quoted in Sylvester, David, René Magritte. Catalogue Raisonné. Volumes 1-6, vol. II, p. 205). The image, according to Werner Spies, was suggested to Magritte by Max Ernst, who took the idea from a Touraine shoemaker's sign.

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by galleria-iska | 2015-07-18 19:23 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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