ガレリア・イスカ通信

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2015年 11月 25日

荒川修作のポスター「Kunsthalle Bern」(1972)

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前回、スイスのベルンにある現代美術の企画展に特化した美術館、クンストハレ・ベルン(Kunsthalle Bern, Bern)で1971年に開催されたジャスパー・ジョーンズ(Jasper Johns, 1930-)の版画展の告知用ポスターを取り上げたが、今回は、愛知県名古屋市出身の美術家、荒川修作(Shusaku Arakawa,1936-2010)がそのポスターに触発されて制作したポスターを取り上げてみたい。

このポスターは、荒川とは既に旧知の仲であったジョーンズの版画展から一年後の1972年に同美術館で開催された荒川の展覧会の際に制作されたものだが、荒川はジョーンズのポスターに呼応するかのようなデザインを行なっている。それは二つのポスターを並べて見るとよく判るのだが、荒川はジョーンズのポスターと同じ100x70cmの縦長のフォーマットを用い、画面中の文字式A+B=Cにジョーンズ(註1)が文字入れに使っているゴシックタイプのステンシルを、画面下の文字入れは、ジョーンズと同じモノクロで、手書き風の特徴ある書体を使っていて、この二つのポスターは明らかに姉妹関係にあるように見える。しかし、だからと言って、それが荒川のジョーンズに対するオマージュであるとまでは言い切れないが。荒川はこのポスターを、彼が1971年にドイツのミュンヘンにあるブルックマン出版(Bruckmann Verlag GmbH, München)から刊行した『意味のメカニズム(Mechanismus der Bedeutung)』(初版)に関する作品展のための告知用ポスターとして制作したもので、10の組み立て直しを「A+B=C」という文字式を使って示している(10 reassembling An investigation of the element of the reassembly and the possible applications of these in order to change usage)。

このポスターは二十年以上前にドイツの画廊から取り寄せたものだが、内容を理解した上でのことではなく、ポップな色調に惹かれてと言った方が良いかもしれない。

概念を図式化したものを作品とする荒川の活動が世界的な注目を集めるのは、コンセプチュアル・アート(概念芸術)の最盛期であるといわれる1966年から1972年である。反芸術を掲げる荒川は1961年、単身ニューヨークに渡り、そこでマルセル・デュシャンの知遇を得、オノ・ヨーコから借りたスタジオでデュシャンが連れて来たアンディ・ウォーホル、ジョン・ケージ、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグといった現代美術の錚々たる作家と出会うことになる。そして1963年のドイツはデュッセルドルフのシュメラ画廊(Galerie Schmela, Düsseldorf)での個展(たった一点の作品を展示しただけ)を皮切りに、ヨーロッパとアメリカの画廊で次々に個展を開催、言葉や記号、図形が書き込まれた非絵画的作品を発表する。1971年に1963年から共同制作を行なっている画家で詩人のマドリン・ギンズ(Madeline Gins, 1941-2014)と『意味のメカニズム』を発表、国際的な評価を得る。そして1972年に『意味のメカニズム』に関する巡回展(註2) が組まれる。ベルンでの展覧会はそのうちのひとつである。

ベルンでの展覧会のキュレーションを行なったのは、1960年から1969年までディレクターの職にあって、1969年には『態度が形になるとき」(When Attitudes Become Form)』というコンセプチュアル・アートの伝説的な展覧会を企画したハラルド・ゼーマン(Dr.Harald Szeemann, 1933-2005)の後を受け、1970年から1974までディレクターを務め、1971年にジョーンズの版画展を企画したカルロ・フーバー(Dr.Carlo Huber)である。
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●作家:Shusaku Arakawa(1936-2010)
●種類:Poster
●題名:10 Reassembling
●サイズ:1003x699mm
●技法:Silkscreen
●限定:1000
●発行:Kunsthalle Bern, Bern
●印刷:Albin Uldry, Bern
●制作年:1972
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《10 reassembling An investigation of the element of the reassembly and the possible applications of these in order to change usage》とある。
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《To what extent is = A function of + ?]》
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註:

1.ニューヨーク市のレオ・キャステリ画廊(Leo Castelli Gallery, New York)が1996年に開催したジャスパー・ジョーンズが1960年から1996年にかけて制作した版画の展覧会「Technique & Collaboration in the Prints of JASPER JOHNS」の際に発行した図録の表紙には、ジョーンズが実際にステンシル・テンプレート (stencil template)を使って制作している姿を捉えた写真(画像はその一部)が使われている。
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2.『意味のメカニズム』巡回展の開催地は以下の通り:
Frankfurter Kunstverein, Frankfurt
Kunsthalle Hamburg, Hamburg
Kunsthalle Bern, Bern
Nationalgalerie Berlin, Berlin
Städtische Galerie im Lenbachhaus, Munich
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by galleria-iska | 2015-11-25 19:48 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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