ガレリア・イスカ通信

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2016年 10月 05日

A.R.ペンクのポスター「Josef-Haubrich-Ksthalle Köln」(1981)

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洞窟壁画を思わせる棒状の人物表現で知られるドイツ人画家、版画家、彫刻家、そしてジャズ・ドラマーでもあるA.R.ペンク(A.R.Penck, 1939-)ことラルフ・ヴィンクラー(Ralf Winkler)は1938年、第二次世界大戦末期、連合国軍の無差別爆撃により一説には10万人以上とも言われるの死者を出した旧東ドイツの都市ドレスデン(註1)に生まれた。ペンクのトレードマークとも言える棒状の人物表現は、1963年から1972年までの東ベルリンでの活動の中で生み出された。A.R.Penckという別称は1966年に、ドイツの地理学者dで地質学者のアルブレヒト・ペンク(Albrecht Penck、1858–March)に因んで付けられたもので、自身の名Ralfの頭文字を加えている。1980年、東ドイツでの活動の限界を感じ、西ドイツに移住。1988年に国立デュッセルドルフ芸術アカデミー(Kunstakademie Düsseldorf)の教授として招聘される。その年、日本の現代美術作家、奈良美智(Yoshitomo Nara, 1959-)が入学、ペンクに師事し、1993年にマイスターシュウラー取得している。

このポスターはペンクが西ドイツに移住した翌年に、ケルンのヨゼフ・ハウブリッヒ・クンストハレ(Josef-Haubrich-Kunsthalle Köln)で絵画とドローイングの個展「A. R. Penck: Gemälde und Handzeichnungen」を開催した際の告知用ポスターである。デザインはもちろんペンク自身が行なっている。この作品はペンク作品の核を成す社会的、政治的意図を基にしたものではないようで、明るく楽しげな身振りには音楽的な要素を見出すことが出来るとともに、キーズ・ヘリング(keith Haring, 1958-1990)にも通じるユーモアも感じさせる。印刷はシルクスクリーンによるものだが、我々がよく知るところのインクが厚く乗ったものではなく、ぱっと見、リトグラフと勘違いしてしまうかもしれない。このポスター以外にも、ペンクは自身の個展の告知用ポスターやLPアルバムのカバーアートを数多くデザインしているが、日本での紹介は限られているようである。

●作家:A.R.Penck(1939-)
●種類:Poster(Plakat)
●サイズ:1219x845mm
●技法:Silkscreen
●発行:Josef-Haubrich-Kunsthalle Köln
●制昨年:1981
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註:

1.アメリカの小説家カート・ヴォネガット・ジュニア(Kurt Vonnegut Jr.,1922-2007)は捕虜として連行されていたドレスデンでこの爆撃を経験し、その体験をもとに代表作となるSF小説『スローターハウス5(Schlachthof Fünf)』を1969年に執筆、1970年、ヒューゴー賞を受賞している。
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by galleria-iska | 2016-10-05 12:52 | ポスター/メイラー | Comments(0)


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