ガレリア・イスカ通信

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2017年 07月 30日

勝原伸也の創作木版画「Anthology」(1987)

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明日7月31日は、一昨年亡くなった大兄、木版画家の勝原伸也(Katsuhara Shinya,1951-2015)の二度目の命日で、世間でいうところの三回忌にあたる。故人宅にお伺いすることができないので、大兄が東京銀座の兜屋画廊(Gallery Kabutoya, Tokyo)の依頼で手掛けた最初の創作木版画を眺めつつ、あらためてご冥福をお祈りしたい。

「アンソロジー(Anthology)」という題を付けられたこの作品は、今から丁度30年前の1987年に制作された、木版画家としての勝原の出発点となった記念すべき作品である。題材の原典を何処に求めたのかは分からないが、生き物と花との四つの物語をひとつの画面に散りばめた“詞華集”となっている。それぞれが季節を表しているとするならば、四季を描いたものとなるのだが、その辺のところを端的に読み取ることが出来ないもどかしさがある。漆黒の闇の中に浮かび上がる“文様”としてのモチーフは蒔絵を彷彿させ、絵画というよりは、装飾性の高い、工芸的な表現となっている。

●作家:Katsuhara Shinya(1951-2015)
●種類:Original print
●題名:Anthology
●サイズ:360x250mm(image)
●技法:Woodblock print
●限定:150
●版元:Gallery Kabutoya, Tokyo
●制作年:1987

浮世絵の復元(というより解釈と言ったほうが的を得ているかと思う)という職人的な立ち位置は、創作とは隣り合わせのようにも映るのだが、その方向性が全く異なっている。しかるに、何故創作版画をやらないのか、という無邪気でありながら無思慮な問いは、彼を大いに苦しめたかもしれない。この作品に於いて初めて創作という領域に踏み込んだわけであるが、無名性を旨とする職人的立場と木版画家としての自己のアイデンティティを確立することとのアンビヴァレンツな状況の中で苦悩したことは想像に難くない。勝原が本格的に創作活動に向かうには、もう暫く時間を要することとなる。

一方、勝原は同じ年、自身の代表作のひとつに数えられる復元を行っている。それは以前取り上げた広島県三原市での展覧会のポスターに使われた歌川国芳の大錦三枚続き「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」である。勝原はなんと半年余りをこの作品の復元に掛けている。彫りに5ヶ月を要したというこの作品に於いて、勝原は刷りに独自の解釈を施している(註1)。



註:

1.「木版師 勝原伸也の世界-浮世絵は蘇る(Shinya Katsuhara, The Ukiyo-e Craftman)」1993年、平凡社(Heibonsha Limited Publishers, Tokyo)。237~242頁参照



2017年11月9日追記:

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去る10月13,14,15日、三回忌を迎えた大兄が眠る墓地のある京都は南禅寺の境外塔頭、光雲寺で、その業績を偲ぶ展覧会が催された。これはその案内のチラシである。
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by galleria-iska | 2017-07-30 18:22 | その他 | Comments(0)


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