ガレリア・イスカ通信

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2017年 11月 02日

横尾忠則のリトグラフ「Yasue」(1982)

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明日11月3日は“文化の日”である。とは言え、何処にも出掛ける当てがないので、何か面白そうな美術特番はないかとテレビの番組欄を探してみたが、豊富な資金力を背景に美術展の企画にまで乗り出しているNHKのプロジェクトのひとつとして、現在開催中の「ゴッホ展-巡り行く日本の夢」に関連させたNHKの旅(?)番組が載っているだけで、民放は皆無。週刊誌的ゴシップ報道に明け暮れる民放テレビ局においては、花より団子、美術などは飯の種にならない、つまりスポンサーが付かない(?)ということなのだろうか。

齢80才を超えてなお創作活動に余念のない“画家”横尾忠則(Tadanori Yokoo, 1936-)氏の全版画作品による展覧会「横尾忠則 HANGA JUNGLE」(註1)が、今年の4月22日から6月18日にかけて東京都の町田市にある町田市立国際版画美術館で開催された。1960年から現在までの版画作品約230点とポスター約20点の計約250点からなるこの展覧会、ポスター制作によって培われてきた独自のグラフィズムによって版画とグラフィックアートの領域を絶えず横断・拡張し続けてきた横尾氏の版画作品の全貌を明らかにするとのことで、開催前から注目を集めていた。展覧会に合わせて、1960年代の最初期の作品から最新作までの約260点を収録した版画の総目録『横尾忠則全版画 HANGA JUNGLE』が国書刊行会から刊行されている。開催前から気になっていたのだが、当てにしていた“もの”が入らず、結局行かずじまいになってしまった。町田市立国際版画美術館での会期は既に終了しているが、展覧会は兵庫県神戸市にある横尾忠則現代美術館に巡回し、現在会期中である。ただし台風による雨漏り修理のため臨時休館となっており、11月中旬に再開とある。会期は12月24日まで。

今回取り上げるのは、四点組みの連作版画「Yasue」のひとつ。横尾氏が“画家宣言”を行った1982年に“夫人”をモデルに制作したリトグラフ作品で、画家横尾忠則の最初期の版画作品である。総天然色とも言える原色を特徴とする横尾氏の作品の中では特異な存在と言えよう。画家の創造活動の根幹を成すデッサンを強く意識させる一方で、版表現における下絵(エスキース)を思わせるところもあって、常にポスターという媒体を通して表現を行ってきたグラフィック・デザイナーとしての有様を相互浸透させたような作品となっている。物々交換だったか頂いたかはっきりしないが、20年以上前に手に入れたもので、今手元にある唯一の版画作品である。傑作の誉れ高い、劇団状況劇場の演劇『腰巻お仙』(1966年)や映画『新宿泥棒日記』(1968年)の告知用ポスターなど、以前持っていたシルクスクリーンのポスターと比べると見劣りしてしまうのは仕方ないが、その分、物欲に対する妙な優越感を抱かせない、という屈折した理由を付けて持ち続けている。

●作家:Tadanori Yokoo(1936-)
●種類:Print
●題名:Yasue
●サイズ:765x570mm
●技法:Color lithograph
●限定:48
●発行:Unknown
●制作年:1982
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註:

1.
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                           図版:町田市立国際版画美術館の展覧会チラシ
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by galleria-iska | 2017-11-02 19:58 | その他 | Comments(0)


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