ガレリア・イスカ通信

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カテゴリ:ホルスト・ヤンセンのポスター( 27 )


2015年 02月 24日

ホルスト・ヤンセンのポスター「Pit Morell」(1969)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が1969年にドイツのデッサン家、版画家、画家、そして詩人のピット・モレル(Pit Morell, Jean, 1939-)の個展の告知用ポスターの下絵として制作したもので、同じ年にブロックシュテット画廊(Galerie Brockstedt, Hamburg)が企画・開催した展覧会「Akt im 20. Jahrhundert」のためのポスターと同様、ヤンセンには珍しくシルクスクリーンで作られている。様式的には亜鉛版エッチングのものをシルクスクリーンに置き換えただけのものであるが、1960年代に興隆したポップアートを初めとする現代美術の作家たちにとって欠くことのできないこの技法へのヤンセンの関心を窺い知ることが出来るという点では、貴重な作品と言えるかもしれない。

1939年生まれのモレルは、戦後ドイツの幻想絵画のグループに属し、メクセペルや他の幻想絵画の作家たちと、いくつもの版画集の制作に参加している。1964年からブレーメンの東15kmくらいのところにある芸術村ヴォルプスヴェーデで制作を行なうようになったモレルは、その年、恐らくブロックシュテット画廊ではないかと思うが、一足早くヴォルプスヴェーデ(Worpswede)の住人となったフリードリヒ・メクセペル(Friedrich Meckseper, 1936-)や幻想的でエロティックな画風で知られるゾンネンシュターン(Friedrich Schröder-Sonnenstern, 1892-1982)、そしてヤンセンと出逢う。翌年、フランクフルトのシドウ画廊( Galerie v. Sydow, Frankfurt)でデッサンの初個展を開催、ヤンセンの契約画廊であるハンブルクのブロックシュテット画廊からは12点組の版画集を出版している。このことから、このポスターの下絵は恐らくブロックシュテット画廊での個展を念頭に制作されたのではないかと思われる。が、実際にはポスターは制作されなかったようである。限定数は記されていないが、Meyer-Schomann夫妻によるポスターの目録によると、約100部ほど印刷されたとある。

画面中央には、ハイヒールらしき靴によって辛うじて女性であることを想像できるが、女性らしからぬ頑強な体躯の人物が描かれており、画面右下に描かれた警察官らしき人物の後頭部あたりに、ヤンセン自身が綴ったのであろうか、「警察は(モレルの妻の)ロジ(Rosi Morell)を愛し、ロジは警察を愛する」と、何やら意味ありげな文言から始まる詞書き(詩?)が入れられている。その下に1969年3月13日の日付とヤンセンの版上サイン。ポスターにおいてレタリングは情報伝達の重要な要素のひとつであるが、ここでは意匠化され、図の一部となっているため、画面のあちこちに配置されたピット・モレルの名は、俄かには判読し難い。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster
●題名:Pit Morell
●技法:Silkscreen
●サイズ:411x602mm
●限定数:ca. 100
●制作年:1969
●目録番号:MS.43
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詞書きの部分
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ピット・モレル(左)とヤンセン(右)の署名




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by galleria-iska | 2015-02-24 16:43 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2014年 01月 16日

ホルスト・ヤンセンのポスター「Drucken(3)」(1968)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)がヴェネツィア・ビエンナーレで版画大賞を受賞した1968年にハンブルクの印刷所ハンス・クリスチアンズ(Hans Christians Druckerei und Verlag, Hamburg)の依頼で制作した広告ポスター。このポスターは通常、亜鉛版エッチング(Strichätzung)でポスター用の白い紙に印刷されているのだが、今回、偶然、黄味がかった光沢紙に印刷されたものが手に入ったことから、紙質を変えリトグラフで印刷された別ヴァージョンがあることが判った。亜鉛版エッチングで印刷されたものには、当然のことながら、凹版印刷特有の膨らみがシートの裏面にできるのだが、今回のものはシートの両面が平なことから、亜鉛版エッチングで印刷されたものを写真製版し、リトグラフで印刷したのではないかと思われる。その理由であるが、亜鉛版エッチングで印刷されたの方の画像を見ていただけると分かると思うが、画面の一部が印刷に関する一文を載せた側に透けて見え、また表面の凹凸が目障りとなり、美しさを損ねる惧れがあることから、リトグラフによる印刷に切り替えたのではないかと思われる。従ってリト刷りのものは販売には供されず、関係者向けであった可能性が高い。そして両者を区別するためであろうか、リト刷りのものは亜鉛版エッチングのものに比べ余白がかなり切り詰められている。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Drucken
●技法:Lithograph
●サイズ:422x266mm
●発行:Hans Christians Druckerei und Verlag, Hamburg
●制作年:1968
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ヤンセンの版上サインと年記

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亜鉛版エッチングのもの。430x277mm
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by galleria-iska | 2014-01-16 18:23 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2012年 10月 03日

ホルスト・ヤンセンのポスターカタログ「Janssenplakate, 1973-1988」(1989)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)の出版物に特化した出版社として知られるハンブルクのザンクト・ゲルトルーデ出版(Verlag St. Gertrude, Hamburg)から1989年に刊行されたポスターの販売用カタログ。ポスターは全てカラー図版で紹介されており、図版の左下にサイズ、右下には価格(DM.-)が記載されている。このカタログはまた、1978年に開催されたヤンセンのポスターの回顧展の図録として刊行された「Horst Janssen Plakate 1957-1978」の補追版としても使われている。カタログには、告知用ポスターの他に、江戸時代後期に活躍した浮世絵師、喜多川 歌麿(Kitagawa Utamaro, ca.1753-1806)の「山姥と金太郎」に想を得て制作された連作「UTAMARO」や大阪ドイツ文化センター(Goethe-Institut Osaka)企画による「芸術凧(Kunstdrachen)」なども掲載されている。表紙はヤンセンのオリジナル・デザイン。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster catalogue
●題名:Janssenplakate, Eine Auswahl aus den Jahren 1973-1988
●サイズ:295x227mm
●技法:Lithograph
●発行:Verlag St. Gertrude GmbH, Hamburg
●制作年:1989
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by galleria-iska | 2012-10-03 20:14 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2012年 01月 23日

ホルスト・ヤンセンのポスター(22)「Ullstein-Propyläen-Verlag Berlin」(1970)

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ヤンセンが1966年から行なってきた亜鉛版エッチングによるポスター制作最後の作品は、1919年創業のプロピュレーン出版(Propyläen Verlag)の広告ポスター。プロピュレーン出版は、レオポルト・ウルシュタイン(Leopold Ullstein, 1826-1999 )が1877年にベルリンに設立した通信社ウルシュタイン出版(Ullstein Verlag)の書籍部門で、伝記や歴史、随筆、古典の出版を行なっている。ヤンセンはウルシュタイン出版のトレードマークである“ウルシュタインふくろう(Ullstein-Eule)”をモチーフにポスターのデザインを行なっている。ふくろうの足元には眼鏡が置かれているが、それはヤンセン自身のことを示していると思われる。ヤンセンはポスターの制作にあたり、その元絵になったかもしれないドローイング「Eine Eule für den Propyläen Verlag」を描いているが、それには1969年12月1日の日付がある。このドローイングは2008年10月18日にベルリンで競売に付され、米ドル換算で1217ドルで落札されている。

このポスターには白いポスター用紙に赤茶色と黒で刷られた色違いのヴァージョンがあるのだが、そちらはなかなか現われず、たまにオークションに出品されたりすると、結構な値が付くこともある。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Eule
●サイズ:662x480mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●発行:Ullstein-Propyläen Verlag, Berlin
●印刷:Ullstein-Propyläen, Berlin
●制作年:1969
●目録番号:Meyer-Schomann 55

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                版上のサインと年記(70)。サインの左側には69の文字。
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                鉛筆によるモノグラムサインと年記(69)
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by galleria-iska | 2012-01-23 21:59 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2012年 01月 19日

ホルスト・ヤンセンのポスター(21)「Galerie Brocksted Hamburg」(1969)

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日本でも“猫の作家”として知名度の高いアルゼンチン生まれの画家レオノール・フィニ(Leonor Fini, 1907-1996)は幼い頃から絵を描くのが好きで、ほぼ独学で画法を身に付ける。17才頃から油絵を描き始め、1924年には早くも友人ともにグループ展に参加し肖像画の注文受けるという早熟振りを発揮する。1931年にパリに移住し、1932年にパリで初の個展を開催すると、一躍画壇の寵児となり、ヨーロッパ各地やアメリカで数多くの個展を開催することとなる。ハンブルクのブロックシュテット画廊で1969年4月27日から5月5日にかけて開催されたフィニの個展は、ドイツでは初の個展で、ニーダーザクセン州の州都ハノーヴァー(ハノーファー)にあるヘレンハウゼン王宮のギャラリーとオランジェリーを会場にして行なわれている美術・骨董品見本市(Kunst- und Antiquitäten-Messe Hannover Galerie und Orangerie-Herrenhausen)に並行して開催されたもの。これはその告知用のポスター。フィニ自身もイオラス画廊での個展のように自らポスターの制作を行なうこともあるが、この個展ではヤンセンにデザインが任された。フィニの、しなやかさと優美さ、そして自立性を具え持つ女性像に触発されてか、ヤンセンは彼自身のミューズであった妻ヴェレーナを描いており、画面の右下に小さく《für Verena(ヴェレーナのために)》と書き入れている。ヤンセンはこの構図が気に入ったようで、この年の秋、構図に手を加え、もう1点ポスターを制作している。

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同じ年の9月10日から10月20日かけてハンブルクのブロックシュテット画廊で行なわれた「20世紀のヌード」展を告知するために作られたポスター。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Leonor Fini
●サイズ:847x615mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●発行:Galerie Brockstedt, Hamburg
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1969
●目録番号:Meyer-Schomann 40

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by galleria-iska | 2012-01-19 19:59 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2012年 01月 17日

ホルスト・ヤンセンのポスター(20)「Galerie Mensch Hamburg」(1969)

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1969年4月16日から5月6日にかけてハンブルクのメンシュ画廊(Galerie Mensch)で開催された、プラハ出身のコラージュ作家であり、絵本・挿絵画家のボフミル・シュチェパーン(Bohumil Stepan, 1913-1985)の個展の告知用ポスター。このポスターには、ヤンセンが1967年にブロックシュテット画廊設立10周年の展覧会のためにデザインしたポスターと同様、画面中央に楽器を演奏する人物が描かれているのだが、こちらのポスターの人物は、画中に書き込まれた文字(Ried)が示すように、葦(Ried)の茎を束ねて作るパンフルート(パンパイプ)のような楽器を演奏している。人物の周りには鉤状の尻尾を持った“ねずみ”らしき小動物が吸い寄せられるように集まって来ているが、この鉤状の尻尾が、シュチェパーン(の作品)と何か関係があるのだろうか。

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●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Bohumil Stepan(Bohumil Štěpán)
●サイズ:622x826mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●発行:Galerie Brockstedt, Hamburg
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1969 3.21
●目録番号:Meyer-Schomann 39

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by galleria-iska | 2012-01-17 16:59 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2012年 01月 12日

ホルスト・ヤンセンのポスター(19)「Galerie Brockstedt Hamburg」(1969)

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ハンブルクのブロックシュテット画廊で1969年2月27日から4月15日にかけて行なわれた,日本ではあまり紹介されることのないナイーフ・アートの画家、ヨーゼフ・ヴィットリッヒ(Josef Wittlich, 1903-1982)の個展の告知用ポスター。

映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』を思い起こさせるような数奇な運命をたどったヨーゼフ・ヴィットリッヒは1903年、ドイツ南西部にあるラインラント=プファルツ州の現在はノイヴィート市の一部となっているグラートバッハ(Gladbach)のボタン職人の息子として生まれる。早くに母親を亡くし、継母とは上手くやっていけなかったようである。1920年頃、パリで若いフランス士官として働いていたと言われており、奉仕活動の後、軍への入隊を希望するが拒否され、ブランデンブルクを経由し東ヨーロッパを旅する。その後、グラートバッハに戻り、軽石工として働く。1934年頃にラインラント=プファルツ州の森林地帯であるヴェスターヴァルトのナウオルト(Nauort)に移り住み、昼間は柊の森の農場で働き、夜は絵を描いたが、自分の部屋で大きな声で歌を歌ったり、独り言を云うのが聞かれている。絵の具や筆は、森を抜け、ノイヴィートやコブレンツまで歩いて買いに行き、描いた絵は無償で宿屋(酒場)に贈った。この頃、冒険物語や戦争小説にインスピレーションを得、全長5メートルにも及ぶ巨大な戦闘場面を何点も描くが、第二次世界大戦の最中に行方不明となる。1940年、トート機関(Organisation Todt)によって砲兵大隊に徴兵される。1941年にロシア軍の捕虜となるが、ルーマニア軍の制服を着て脱出し、ロシアからドイツのカッセルまで走って逃げる。1945年には爆撃で土砂に埋められるも数時間後に救出される。その後ナウオルトに戻るが、手に負傷したため、絵筆を持つことが出来なくなる。1948年から製陶工場の屋根裏に住み、そこで20年間で働く。その当時彼に出会った人は、非常に物静かで孤独を好む一方で、気まぐれ屋にも見えたと語っている。彼の絵は無教養に人たちからは“子供じみたもの”と思われていたようである。1950年代の中頃から再び描き始め、兵士や冒険、戦闘場面はもとより、イギリス女王やケネディ一家、俳優や女優なども描いている。彼の絵の才能は1967年に工場を訪れた画家のフレッド・ステルジッヒ(Fred Stelzig, 1923-2006)によって発見され、シュトゥットガルト(=シュツットガルト)のヴェルテンベルグ芸術協会(Württembergischer Kunstverein Stuttgart )の館長、ディーター・ホーニッシュ(Dieter Honisch)に知らされ、その年に展覧会が企画・開催された。ヴィットリッヒは1968年まで製陶工場で働いた後、1970年代は巣篭もり生活を送り、ノイヴィードやコブレンツの通りで目撃される。1982年9月21日、ヴェスターヴァルト州のへール=グレンツハウゼン(Höhr-Grenzhausen)の路上で亡くなる。心臓発作が原因であったとされる。

ブロックシュテット画廊での個展は、この画廊がアールブリュットの作家を手掛けていたことからいち早く実現できたもので、商業画廊での展覧会としては最初のものである。ヤンセンはヴィットリッヒが得意とした戦闘場面を題材にデザインを行なっている。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Josef Wittlich
●サイズ:611x860mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●発行:Galerie Brockstedt, Hamburg
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1969
●目録番号:Meyer-Schomann 38

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画面右下に制作年月日(1969年2月20日)が記されているが、開催日との間があまりなく、告知よりも画廊での販売により大きな比重が置かれていたのではないかと思われる。
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by galleria-iska | 2012-01-12 18:31 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2012年 01月 09日

ホルスト・ヤンセンのポスター(18)「Hamburger Schauspielhaus(3)」(1968)

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ドイツ劇場の芸術監督に就任したエゴン・モンクが三作目に予定していたのが、東プロセインの中心地であったケーニヒスべルク生まれの、モンクと同年輩の劇作家、小説家、ラジオ劇作家ゲルリント・ラインスハーゲン(Gerlind Reinshagen, 1926-)の「ドッペルコップフ「Doppelkopf)」という劇作品であった。ラインスハーゲンは高校時代に既に薬剤師の下で修行し、1946年から49年までニーダーザクセン州のブラウンシュヴァイク工科大学で薬学を学び仕事に就くが、1953年から56年までベルリン芸術大学に学び、1956年にフリーランスの作家となる。子供向けの本やラジオ劇で作家として第一歩を踏み出し、1968年からは社会批判的な劇作品を手掛けるようになる。「ドッペルコップフ」はラインスハーゲンが41才のときに書いた最初の劇作品で、1968年2月24日、フランクフルトの市立劇場、TAT(=Theater am Turm:塔劇場)で、ドイツの「68年世代」を代表する演出家クラウス・バイマン(Claus Peymann, 1937-)によって初演されると、大きな反響を呼び、劇作家として注目を浴びる存在となる。その初演からおよそ八ヵ月後の10月の下旬、エゴン・モンクの演出によって再び上演されることになっていたのだが、前二作の不評を受け、役者との間に溝が生まれ、公演約二週間前に辞任に追い込まれる。モンクに代わって舞台の演出を行なったのは経験の浅い無名のエバーハルト・フェヒナーである。公演の初日を知らせるポスターは既に制作されていたため、芸術監督であったモンクの名がそのまま使われている。ポスターには、画面を左右に二分するように、相反する性格、性質、体制などを象徴する二つの頭を持つ人物が描かれている。その左右の胸に付けられたバッジには、ともに1949年に設立されたドイツの代表的な労働組合“DGB(=Deutsche Gewerkschaftsbund:ドイツ労働総同盟)”と“BDI(=Bundesverband der Deutschen Industrie e.V:ドイツ産業連盟)”の文字が記され、人物は"DGB”の方を指差しているのだが、それはモンクが"DGB”にこの公演のチケットを500枚購入するように依頼していたからである。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Premiere "Doppelkopf"
●サイズ:867x609mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:2000
●発行:Hamburger Schauspielhaus(Das Deutsche Schauspielhaus in Hamburg)
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1968
●目録番号:Meyer-Schomann 34

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by galleria-iska | 2012-01-09 12:04 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2011年 12月 28日

ホルスト・ヤンセンのポスター(17)「Hamburger Schauspielhaus(2)」(1968)

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ホルスト・ヤンセンのドイツ劇場における舞台劇の初日公演を広告するポスター第二作は、芸術監督であったエゴン・モンク(Egon Monk, 1927-2007))が現代風の舞台演出を行ない、1968年の9月8日に上演された、ドイツの劇作家ヨーハン・クリストフ・フリードリッヒ・フォン・シラー(Johann Christoph Friedrich von Schiller, 1759-1805)の第一作目の戯曲『群盗(Die Räuber)』ためのもの。シラーの『群盗』は、いわゆる“疾風怒涛(シュトゥルム・ウント・ドラング )時代”の末期にあたる1781年に出版された戯曲で、批評家からはヨーロッパのメロドラマの進展に影響を及ぼした作品と考えられている。1782年1月13日のマンハイムでの初演は観客の度肝を抜き、一夜にしてセンセーションを巻き起こした。これを観た多くの若者が盗賊になろうとした、とある。筋書きは、カールとフランツ・モールという二人の貴族の兄弟の間の確執を中心に展開していく。カリスマ性を持つ一方で反抗的な学生のカールは父に深く愛されているが、弟のフランツは冷酷で計算高い悪人で、カールの相続財産を取り上げてしまおうと企む。劇が進むにつれて、フランツの様々な計略とカールの無邪気で英雄的行為がともにコンプレックスであることが明らかになる。この公演は1969年の11月23日にテレビ放映された。

エゴン・モンク(Egon Monk, 1927-2007)の舞台演出は、ハンブルクの国立舞台の保守的な観客の度肝を抜き、大きなスキャンダルとなり、モンクはドイツ劇場の芸術監督から降ろされることになる。在任期間は僅か74日であった。

ヤンセンはカールとともに盗賊になった五人の学生を描いており、それぞれの配役を記している。盗賊の間から顔を見せる小柄な女性は、カールに恋するアマーリア。そして画面左下から伸びる手は、フランツの謀略によって殺されたことになっている父親の老モール伯爵である。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Premiere "Die Räuber"
●サイズ:867x609mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:2000
●発行:Hamburger Schauspielhaus(Das Deutsche Schauspielhaus in Hamburg)
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1968
●目録番号:Meyer-Schomann 33

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鉛筆によるモノグラムサイン。画面右下角には刷り込みのサインと年記。


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by galleria-iska | 2011-12-28 11:15 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2011年 12月 26日

ホルスト・ヤンセンのポスター(16)「Hamburger Schauspielhaus(1)」(1968)

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ホルスト・ヤンセンは社会変革への要求の波が頂点に達する1968年の秋、ハンブルクにある国立のドイツ劇場(Das Deutsche Schauspielhaus in Hamburg)で上演された三つの劇の初日を広告するポスターを制作している。最初のポスターは、『"Über den Gehorsam" -Szenen aus Deutschland, wo die Unterwerfung des eigenen Willens unter einen fremden als Tugend gilt (”服従について”-見知らぬ者に対して自分の意志を従属させるのが美徳であるとするドイツの場面』という劇のためのもので、ヤンセンとは二つ違いの、日本では映画「史上最大の列車強盗」の製作者として知られる俳優、映画監督、脚本家、作家のエゴン・モンク(Egon Monk, 1927-2007)が、劇作家クラウス・フーバレック(Claus Hubalek) とともに脚本を書き、芸術監督を務めた。この初日公演はドイツの舞台史上初めてテレビで、しかもカラーで生中継されている。

その当時発行されたドイツの週刊誌「シュピーゲル(Der Spiegel)」によると、この劇はその当時のドイツの置かれていた時代背景を色濃く反映した政治的な諷刺劇として書かれたものらしく、ヤンセンは、抑止力としての銃と、当時ナチスの強制収容所との関係を取りざたされていたドイツ連邦共和国(西ドイツ)の第二代大統領ハインリッヒ・リュプケ(Heinrich Lübke, 1894-1972)を描いている、とあるのだが、ドイツの、特に現代史の中で、服従というものが如何に変質してしまったのか、と云うことが、幾つかの例を挙げながら語られる。ヤンセンは中心人物の胸のバッジに“Make Love to Monk"という言葉を書き込んでいるが、それにはドイツの現代演劇の歴史的転換となるモンク(の作品)に対する求愛というか、最大限の賛美の気持ち込められているのだろうか。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Premier "Über den Gehorsam"
●サイズ:866x512mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:2000
●発行:Hamburger Schauspielhaus(Das Deutsche Schauspielhaus in Hamburg)
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1968
●目録番号:Meyer-Schomann 32

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by galleria-iska | 2011-12-26 20:43 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)