ガレリア・イスカ通信

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カテゴリ:ポスター/メイラー( 89 )


2014年 06月 18日

マリノ・マリーニのポスター「Olympische Spiele München 1972」(1972)

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6月12日付けの記事に関連して、今回もマリノ・マリーニ(Marino Marini, 1901-1980)のポスターである。夏のオリンピックとして、1972年にミュンヘンで開催された第二十回オリンピック・ゲーム(The Games of the XX Olympiad)の公式ポスターのうちのアート・ポスター・シリーズ(註1)のひとつとして、《馬術》をテーマにマリーニが手掛けたもの。アート・ポスター・シリーズはミュンヘン・オリンピックから始まったもので、創造的で独創的なイメージによってスポーツと芸術との融合を図るとともに、組織委員会の費用の捻出を図るのが目的で、グラフィック・デザイナーによる広報用の公式ポスターとは別に、世界的に活躍する作家にデザインを依頼し制作された。ポスターにはコレクター向けの限定200部(註2)の署名入りのものと限定4000部(註3)の無署名のものがある。ここで取り上げるのは後者の方で、上部および左右のマージンが裁ち落されている。

●作家:Marino Marini(1901-1980)
●種類:Poster
●サイズ:1017x637mm
●技法:Color lithograph
●限定:4000
●紙質:Arches(?)
●発行:Edition Olympia 1972 GmbH
●印刷:Mourlot, Paris
●制作年:1972
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マリーニの版上サイン
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20世紀のドイツを代表するグラフック・デザイナーでタイポグラファーのオトル・アイヒャー(Otl Aicher, 1922-1991)原案の大会のエンブレムの下に、版権の表記と印刷を行なったムルロー工房の名が記されている。




註:

1.アート・ポスター・シリーズに参加した28名のアーティストは以下のとおり:
Valerio Adami - Josef Albers - Otmar Alt - Horst Antes - Shusaka Arakawa - Max Bill - Eduardo Chillida - Allan D'Arcangelo - Alan Davie - Piero Dorazio - Hans Hartung - David Hockney - F. Hundertwasser - Allen Jones - R.B. Kitaj - Oskar Kokoschka - Charles Lapicque - Jacob Lawrence - Jan Lenica - Marino Marini - Peter Philipps - Serge Poliakoff - Richard Smith - Pierre Soulages - Victor Vasarely - Tom Wesselmann - Fritz Winter - Paul Wunderlich

2.
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図版:マリーニの限定200部の署名入りリトグラフ「Edition Olympia」、1050x695mm。20色刷り。作品の価格は作家によって異なるが、300~700ドイツ・マルクで販売された。

3.版上サイン入りの3999部ないし4000部が印刷され、その内の2000部がミュンヘンのストゥーディオ・ブルックマン・クンスト・イン・ドルック・ファイン・アート社《Studio Bruckmann Kunst im Druck Fine Art GmbH, München》によって、後の2000部はニューヨーク市のケネディ・グラフックス(Kennedy Graphics, New York)によって販売された。価格は署名入りの十分の一に当たる30~70ドイツ・マルク。

4.
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図版:廉価版のポスター。上記二つのヴァージョンの他に、シートの左下角に《Reproduktions Plakate》と記された 一般向けのオフセット印刷による廉価版(open edition)が存在している。廉価版は1970年と1971年に4つのシリーズに分けて印刷された。販売価格は各10ドイツ・マルク。
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by galleria-iska | 2014-06-18 20:24 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2014年 06月 14日

マリノ・マリーニのポスター「Idea del Cavaliere」(1971)

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1971年、イタリアの20世紀を代表する彫刻家のひとりで、画家・版画家としても国際的な評価を得ているマリノ・マリーニ(Marino Marini, 1909-1980)の版画の展覧会が、ローマ、ミラノ、フランクフルト、リヴォルノ、デュッセルドルフ、パリといったヨーロッパ主要都市の画廊で開催された。これはパリの20世紀画廊での展覧会の際に制作された告知用ポスターである。ポスターと同じイメージを用いた限定60部の版画作品「Idea del Cavaliere(騎手の概念)」も同時に制作されている。印刷はパリのムルロー工房(Mourlot, Paris)である。

●作家:Marino Marini(1909-1980)
●種類:Poster
●サイズ:750x505mm
●技法;Color lithograph
●発行:Société Internationale d'Art XXe siècle, Paris
●印刷:Mourlot, Paris
●制作年:1971年

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by galleria-iska | 2014-06-14 16:12 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2014年 04月 03日

ロイ・リキテンスタインのポスター「A New Generation of Leadership」(1992)

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感情を排した知的で明快な作風で知られるポップアーティストのロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein, 1923-1997)の作品の中でも異彩を放つこのポスター「A New Generation of Leadership (The Oval Office Poster)」は、オーバル・オフィスと呼ばれる大統領執務室を描いたもので、日本人には何かしら違和感を感じるモティーフであるが、当アメリカ国民にとっては、権力の中枢としてのホワイトハウスの中にあって行政の中心を成す大統領執務室は、自由の象徴としての自由の女神像と同様、アメリカという国のまさにシンボル的存在であり、自由の女神を描いたポスター「I Love Liberty Poster」とともに、なかなかの人気を得ている。

リキテンスタインはその大統領執務室を正面から左右対称の構図として描いているのだが、事前に執務室内部を調査し、実際に掛けられていたことのある絵画を含む装飾的な細部を忠実に画面に組み入れている。その意味では写実的な絵画とも言えなくもないが、リキテンスタインの絵画の特徴である太い輪郭線と青、黄、赤の三原色による平面性を強調した画面は一方で、ピクトグラムのように高度にシンボライズされた視覚記号としての意味を持つものになっている。このポスターの成立背景は、リキテンスタンの版画目録などによると、次ぎのようなものである。

1992年、ロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein, 1923-1997)は、表現の自由に賛同するアーティストのプロジェクト(the Artists for Freedom of Expression project)の一環として、民主党のクリントン/ゴア(Bill Clinton/Al Gore)の選挙キャンペーン中に、民主党全国委員会(Democratic National Committee)のために、他の15人のアーティスト(Ida Applebroog, Jennifer Bartlett, Jim Dine, Jimmie Durham, Leon Golub, Red Grooms, Jenny Holzer, Joan Mitchell, Elizabeth Murray, Edwin Schlossberg, Julian Schnabel, Cindy Sherman, Nancy Spero, Carrie Mae Weems, and William Wegman)ともに作品の制作を依頼され、オーヴァル・オフィス(The Oval Office)と呼ばれる大統領執務室を描いたシルクスクリーンの版画作品を制作する。このイメージはクリントンの当選後、大統領就任委員会によって大統領就任記念ポスターのひとつに選ばれ、民主党全国集会の先立って制作された。版画作品とポスターが発売された後、リキテンスタインは1993年1月に同じイメージを用いた絵画作品「The Oval Office」を完成させている。

ポスターは版画作品と同様、リキテンスタインと共にポップアートを先導したアンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1927-1987)の1980年代の版元のひとつとして、『神話(Myth)』(1981)、『危機に瀕した種(Endangered Species)』(1983)、『広告(ADS)』(1985)といった10点組みの版画集を手掛けたニューヨーク市のロナルド・フェルドマン・ファイン・アーツ(Ronald Feldman Fine Arts, Inc.)が発行。版画目録によれば、作家が署名を入れたものが100部ほどあり、限定6000部のうち350部は表紙用の用紙〈85# cover weight]〉、後の5,650部は本文用の用紙〈110# text weight〉を使って印刷されている。発行されたポスター全てという訳ではないと思うが、今回取り上げるものを含め、これまで手にしたものは何れも巻き皺や折れなどの欠点があった。これは購入先の業者の話によると、ポスターがボランティアで販売に参加した障害を持つ人たちの手によって巻かれたためであるとのことであった。

このイメージは、1994年の10月から95年の1月にかけてワシントン DCのナショナル・ギャラリー・オブ・アート(National Gallery of Art, Washington, DC)で開催されたリキテンスタインの版画の回顧展のポスター(670x645mm) にも使用され、リキテンスタインが亡くなった1997年には、厚手の上質紙を用いて復刻(限定1000部)されている。

●作家:Roy Lichtenstein(1923-1997)
●種類:Poster
●題名:A New Generation of Leadership(The Oval Office Poster)
●サイズ:865x965mm
●技法:Offset lithograph
●限定:6000
●発行:Ronald Feldman Fine Arts, Inc., New York
●印刷:Zarett Litho, Inc., New York
●制作年:1992
●目録番号:Corlett III.40
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参考文献:
Corlett, Mary Lee. The Prints of Roy Lichtenstein: A Catalogue Raisonne 1948-1993. Hudson Hills Press, New York, 1994.
Corlett, Mary Lee. The Prints of Roy Lichtenstein: A Catalogue Raisonne 1948-1997(Second, reviced edition). Hudson Hills Press, New York, 2002.







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by galleria-iska | 2014-04-03 12:54 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2013年 11月 05日

アントニ・タピエスのポスター「Kasseler Kunstverein」(1969)

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ドイツ語で“出窓”を意味するエルカー(Erker)を社名とするエルカー印刷(Erker Presse)は、美しい出窓を持った家々が建ち並ぶスイス北東部の都市ザンクト・ガレン(Sankt Gallen)に工房を構える現代美術の版画工房であり、版画(集)や挿絵本の出版も行なっている。また併設の画廊では契約作家の展覧会を定期的に開催している。同社が取り扱うのは、ヨーロッパの良質な現代美術作家たちであるが、美術界の動向とは一定の距離を置いて制作する、いわば通好みの作家たちである。その中には、スペインの二十世紀代表する現代美術作家アントニ・タピエス(Antoni Tàpies, 1922-2012)も含まれ、パリのマーグ画廊よりも早くに契約、版画や挿絵本の制作を行なっている。エルカー出版では、自社画廊での展覧会やヨーロッパ各地で開催される契約作家の展覧会のポスターも制作しているが、機械印刷を行なっていないのか、摺刷数は数百部程度と少ない。今回取り上げるのは、タピエスが現代美術の祭典のひとつであるドクメンタが開催されるヘッセン州の古都カッセル(Kassel)の芸術協会(Kasseler Kunstverein)で行なった全版画展「Antoni Tàpies. Das gesamte graphische Werk」の際に制作したオリジナルのリトポスター。友人達の名前を網のような線描で絡めた画面は、記号としての文字を抽象表現主義的な筆致として見せつつもそこに何らかの意味の存在を残すことで、新たな思考を喚起させるという、物質性を追求した絵画表現とは異なるタピエスの版画表現のスタイルを示している。文字部分を省いた限定75部の版画作品も同時に作られている。

スイスの物価が高いのは有名であるが、美術作品についても他のヨーロッパの国と比べると割高である。エルカー出版からはタイエスのポスターが何点も出版されているが、パリのマーグ画廊が出版したポスターの何倍もの価格が付けられているため、なかなか手が出せないでいた。このポスターは最近ドイツの画廊から比較的安価で入手することができたものである。因みに出版元であるエルカー出版が付けているこのポスターの現在の価格は150ユーロで、サイン入りのものは240ユーロとなっている。

●作家:Antoni Tàpies(1922-2012)
●種類:Plakat/Poster
●題名:Mes amis/My friends
●サイズ:960x680mm
●技法:Lithographie/Lithograph
●限定:400
●発行:Erker-Presse, St-Gallen
●制作年:1969
●目録番号:Antoni Tàpies. Das graphische Werk/L'Oeuvre Gravé 1947-1972.#210

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参考文献

タピエスの版画目録はMariuccia Galfettiの編纂により、エルカー出版からこれまでに以下の四冊が刊行されている:
出版社(Publisher):Erker Verlag and Barcelona, Editorial Gustavo Gili, 1984-2009.
第一巻(Tome I):TAPIES: Das Graphische Werk/L'Oeuvre Gravé, Werkverzeichnis/Catalogue Raisonné 1947-1972
第二巻Tome II):TAPIES: Das Graphische Werk/L'Oeuvre Gravé, Werkverzeichnis/Catalogue Raisonné 1973-1978
第三巻(Tome III):TAPIES: Obra Grafica/Graphic Work 1979-1986
第四巻(Tome IV):TAPIES: Obra Grafica/Graphic Work 1987-1994
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by galleria-iska | 2013-11-05 19:29 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2013年 09月 23日

ロバート・ラウシェンバーグのポスター「Jewish Museum Poster」(1963)

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アメリカの20世紀現代美術を代表する作家のひとり、ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg, 1925-2006)は、版画家としても数多くの作品を残しているが、同時にポスターの制作にも力を入れており、生涯に120点を超すポスターのデザインを行なっている。そのラウシェンバーグが最初にデザインしたのが、美術館での最初の個展として、1963年にニューヨーク市にあるジューイッシュ美術館(The Jewish Museum)で行なわれた展覧会の告知用のポスターである。ポスターはリトグラフで制作されている。展覧会を開催したジューイッシュ美術館は1904年、ユダヤ文化の注目すべき拡がりと多様性を探求するべく、ユダヤ教の神学校の図書館内に併設されたが、1944年からは、ドイツ生まれの銀行家で慈善家であったフェリックス・ワールブルク(Felix Warburg, 1871-1937)の未亡人から寄贈された邸宅を美術館として使用、現在に至る。1960年代に入ると現代美術の紹介(註1)も行なうようになるが、その嚆矢となったのが、ロバート・ラウシェンバーグの個展である。

ポスターの印刷を行なったのは、ロシア系ユダヤ人(Tatyyana Auguschewitsch)として1904年にシベリアに生まれたタチアナ・グロスマン(Tatyyana Grosman, 1904-1982)(註:1)が1957年にニューヨーク州ロングアイランド、ウェスト・アイスリップに設立したリトグラフの版画工房、ユニバーサル・リミテッド・アート・エディションズ(Universal Limited Art Editions)である。ラウシェンバーグにリトグラフの制作を勧めたのはグロスマンで、1962年に最初のリトグラフをこの工房で制作している。傑作は往々にして作家がそのスタイルを創造した直後に生み出されることが多いが、ラウシェンバーグについても例外ではなかったようである。この年の初めに同工房で制作された「アクシデント(Accident)」がユーゴスラビア(現スロヴェニア)の首都リュブリャナで開催された国際版画ビエンナーレ(Biennial of Graphic Art Yugoslavia-Ljubljana)の大賞を受賞し、ラウシェンバーグの版画の革新性が世界に認められたからである。その意味において、同じ年に制作されたこのポスターについても、ピカソやミロなどと同様、ラウシェンバーグ独自のオリジナリティーを確立しており、その後のポスター制作の方向性を示す重要な役割を果たしたと言えよう。

このポスターでもそうであるが、ラウシェンバーグが1962年から64年にかけて制作したリトグラフは、ニュヨーク・タイムズ(The New York Times)誌やヘラルド・トリビューン(The Herald Tribune)誌に掲載された写真図版用のハーフトーンの版を利用しており、それらをコラージュ風にリトグラフ用の石灰石に転写し、それに抽象表現主義風の激しい筆致を加えたもので、彼の創作の目的である「芸術作品をつくることではなく、芸術と生活の橋渡しをすることだ」言葉を体現する、日常生活の中で目にするイメージと純粋な芸術的な衝動を組み合わせた作品となっている。

●作家:Robert Rauschenberg(1925-2008)
●種類:Poster
●題名:The Jewish Museum Poster
●サイズ:814x561mm
●技法:Offset Lithograph
●発行:Jewish Museum, New York
●印刷:Universal Limited Art Editions(ULAE), New York
●制作年:1963
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註:
1.1960年代にジューイッシュ美術館で開催された現代美術に関する展覧会:
「Jasper Johns」1964
「Recent American Sculpture」1964
「Max Ernst: Sculpture and Recent Painting」1966
「Richard Smith」1968

2.ロバート・ラウシェンバーグ《アクシデント》1963年
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●技法:Lithograph
●サイズ:973x700mm(1050x750mm)
●限定:29
●発行:Universal Limited Art Editions, West Islip, New York
●印刷:Universal Limited Art Editions, West Islip, New York


註:

1.シベリア生まれのタチアナ・グロスマンはロシア革命の最中、日本に渡り日本美術に魅了される。その後ヴェネツィアを経てドレスデンに到着、ドレスデン応用芸術アカデミーでデッサンと服飾デザインを学び、1928年、日本の美から着想を得たドローイングを基に制作した東洋風の衣装で最高賞を受賞。1931年にポーランド系ユダヤ人のモーリス・グロスマン(Maurice Grosman, 1900-1976)結婚。1932年、ナチの台頭による危険から逃れるためにパリに渡るが、1940年、ナチのパリ侵攻二日前に脱出、バルセロナ経由で、1943年にアメリカに移住する。



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by galleria-iska | 2013-09-23 19:25 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2013年 01月 19日

マン・レイのポスター「Man Ray 40 Rayographies」(1972)

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1972年、写真家マン・レイ(Man Ray, 1890-1976)の強い勧めで、フレッド・フィッシャー(Fred Fisher)、フィリップ・クライン(Philippe Klein)と共に、ダダ、シュルレアリスム、ポップ・アート、ハイパーリアリズムという四つの芸術運動を柱とする画廊「Galerie des 4 Mouvements」を開廊したマルセル・フレイス(Marcel Fleiss, 1934-)(註1)。彼が最初に企画したのは、マン・レイの個展「Man Ray 40 Rayographies」で、マン・レイが1921年から30年にかけて制作した40点のレイヨグラフを展示するものであった。このポスターはその告知用に作られたもので、同じイメージを表紙に用いた図録も作られている。詳しい事情は、先日、『マン・レイのパリ 1972年』展を企画・開催された、“マン・レイになってしまった人”こと石原輝雄氏のブログ「マン・レイと余白で」をご覧いただきたい。

●作家:Man Ray(1890-1976)
●種類:Poster
●サイズ:599x400mm
●技法:Offset + lithograph
●発行:Galerie des 4 Mouvements, Paris
●印刷:Steff Imp., Paris
●制作年:1972
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                         図録の表紙


註:
1.1972年から1976年まで「Galerie des 4 Mouvements」の共同経営者、1981年からは「Galerie 1900-2000」の経営者となったマルセル・フレイスは1934年、パリに生まれる。フレイス一家はナチスが政権を掌握した1933年にフランスに逃れてきた裕福なユダヤ系ドイツ人で、1940年のナチス・ドイツのフランス侵攻の際にはブラジルに逃れた。少年時代を平穏なブラジルで過ごしたフレイスは、戦後、家族と共にフランスに戻る。15才のときジャズに興味を持ち、すぐに最先端のアメリカのジャズに没頭する。毛皮商であった父親の仕事の関係で、18才のときにニューヨークに渡り、時を置かずして有名なジャズクラブ“バードランド”や“ブルーノート”、また“アポロ・シアター“などの常連となり、そこに出演していたビバップを代表するジャズ演奏家(チャーリー・パーカー、セロニアス・モンク、バド・パウエル等)たちの写真を撮影する機会を得る。彼らと友人となってからは、彼らがヨーロッパで演奏する機会を探すのを手伝い、また、1935年に創刊されたフランスのジャズ専門誌「Jazz Hot」にフランスで最初のチャールズ・ミンガス、ジジ・グライス、ジーン・アモンズらに関する記事を書き、彼らにヨーロッパのジャズファンを紹介した。しばしの自由を愉しんだ後、現実の生活に引き戻されるが、毛皮の競りの場所と近いことを幸いにドルオーに毎日のように通うことになる。彼は、セーヌ通りの画廊に寄託していたナイーフアートの絵画を買う質屋を画商と思い、簡単に出来そうな仕事だと思った、と冗談交じりに語っている。ドルオーで、彼にシュルレアリスムを紹介したフレッド・フィッシャー(Fred Fisher)に共感し、もうひとりの重要な人物との出会う。マン・レイ(Man Ray, 1890-1976)である。マン・レイは彼に画廊を開くよう強く勧める。



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by galleria-iska | 2013-01-19 20:13 | ポスター/メイラー | Comments(2)
2012年 12月 06日

デイヴィッド・ホックニーのポスター「Ashmolean Museum Oxford」(1981)

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前回取り上げたデイヴィッド・ホックニー(David Hockney, 1937-)のポスターの記事に関連して、もう一点ホックニーのポスターを取り上げてみようと思う。このポスターも30年ぐらい前にロンドンのピーターズバーグ・プレス社から取り寄せたもののひとつで、当時はホックニーとオペラとの関係など露ほども知らず、軽妙なタッチで描かれた時代がかった衣装を着た人物たちに、童話にも似た懐かしさを覚えたように思う。それから10年後の1992年から翌年にかけて日本各地を巡回した「ホックニーのオペラ展」を目にし、ホックニーが舞台美術の分野でデザイナーとしての力を発揮したことを知った次第。このポスターは、ホックニーがイギリスのグラインドボーン・フェスティヴァル・オペラ(Glyndebourne Festival Opera)の依頼によって、ウィリアム・ホガースの版画集をもとに、W.H. オーデンとチェスター・コールマンの台本、イゴール・ストラヴィンスキーの音楽による18世紀の放蕩者の転落の描いたオペラ「放蕩息子のなりゆき」のために考案した舞台セットと衣装デザインを展示する展覧会の告知用ポスターである。ポスターには、「放蕩息子のなりゆき」の緞帳のドローイングにミラノのスカラ座のためにステージ部分を描き足したドローイングが使われている。このオペラの舞台美術に関しては、ホックニーが自己の体験をもとに制作、1963年にアレクト出版から出版した同名の連作版画「The Rake's progress」が伏線的な役割を果たしていることは承知の通りである。

●作家:David Hockney(1937-)
●種類:Poster
●サイズ:953x758mm
●題名:An Exhibit Of Costumes, Drawings & Set Designs Ashmolean Museum Oxford
●技法:Offset
●発行:Petersberg Press, London
●制作年:1981
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「ホックニーのオペラ展」図録、1992年、毎日新聞社
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オペラ「放蕩息子のなりゆき」のためのセットデザイン
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「放蕩息子のなりゆき」のための緞帳のデザイン

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by galleria-iska | 2012-12-06 20:05 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2012年 11月 26日

デイヴィッド・ホックニーのポスター「An Etiching and a Lithograph for Editions Alecto 1973」(1972)

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1950年代の後半にケンブリッジ、オックスフォード両大学の学部生によって始められたアレクト出版(Editions Alecto)は1962年、現代作家のよる版画の印刷と出版を手掛ける会社となる。アレクト出版にとっての最初の重要な出版は、会社設立の翌年に出版したデイヴィッド・ホックニー(Dabvid Hockney, 1937-)の「放蕩者の遍歴(A Rake's Progress)」という、ホックニーが、1961年に初めてニューヨークを訪れた体験をもとに、18世紀のイギリスの画家兼版画家ウィリアム・ホガースの同名の作品に倣って制作したエッチング16点からなる連作版画集である。アレクト出版とホックニーのコラボレーションはその後も続き、1965年にリトグラフ6点からなる連作版画集「ハリウッド・コレクション(A Hollywood Collection)、1966年には13点のエッチングによる詩画集「コンスタンティノス・ペトロス・カヴァフィの14編の詩のための挿絵(Illustrations for Fourteen Poems from C.P. Cavafy)」を相次いで出版している。アレクト出版はホックニー以外にも、1960年代から70年代にかけて、20世紀現代美術を牽引したジム・ダイン(Jim Dine, 1935-)、クレス・オルデンバーグ(Claes Oldenburg, 1929- )、ジョージ・シーガル(George Segal, 1924-2000)、アレン・ジョーンズ(Allen Jones, 1937-)、エドゥアルド・パオロッツィ(Eduardo Paolozzi, 1924-2005)を始め、100人を超えるアメリカとイギリスの現代作家の版画集を刊行したが、1979年に現代作家の版画の制作を中止、18,9世紀の博物学の図版の復刻に方向を転換し、今日に至っている。

このポスターは、アレクト出版設立10周年を記念するために制作されたホックニーのリトグラフとエッチングによる版画作品「An Etiching and a Lithograph for Editions Alecto 1973」のポスターヴァージョンである。ポスターの印刷はリトグラフで行なわれ、画面中央部のエッチング部分のプレートマークに沿ってエンボスを施し、窪みを付けている。版画とポスターの混同を防ぐためであろうか、リトグラフで刷られた文字部分は、版画では三色刷りであるが、ポスターは青一色となっている。また、版画のシートサイズは905x635mmで、ポスターより余白部分が幾分狭くなっている。ホックニーが石版画を象徴するイメージとして描いた石灰石は、その持つ意味は全く違っているが、19世紀のフランスの銅版画家シャルル・メリヨン(Charles Méryon 1821-1868)が「パリの銅版画」の表紙に描いたそれを彷彿させる。このポスターが制作された年、日本では美術雑誌にホックニーの魅力を探る特集記事《美術手帖、1982年7月号:特集: デイヴィッド・ホックニー : David Hockney/特集: アンディ・ウォーホル : Andy Warhol、Vol.34,No.500》が組まれたりして、ポスターブームの火付け役となったが、それから30年近い月日が流れ、壁に飾られたポスターも色褪せ、不用品として破棄されたり、リサイクルショップの片隅に雑貨と一緒に置かれたりして、流行を先取りしたインテリアとしての役割を終えたかのように見えるが、一方で、ポスターは案内状やパンフレットなどとともに、ホックニーが時代とどう向き合ってきたのかを知る証左として、また20世紀現代美術の様々な側面を語る上で欠くことのできない資料としての意味を増しつつある。

●作家:David Hockney(1937-)
●種類:Poster
●サイズ:940x687mm
●題名:An Etiching and a Lithograph for Editions Alecto
●技法:Lithograph
●発行:Editions Alecto, London
●制作年:1972
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ホックニーのポスターに先立つこと120年前の1852年、シャルル メリヨン (Charles Méryon 1821-1868)が1850年から54年にかけて制作した連作版画「パリの銅版画」の表紙として制作したエッチングによる銅版画「Titre des eaux-fortes sur Paris」(1852), 2ème état. 



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by galleria-iska | 2012-11-26 18:59 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2012年 11月 21日

シャガールのリトポスター「Hommage a Maïakovski」(1963)

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シャガール(Marc Chagall, 1887-1985)が1963年にパリのシャイヨ宮で開催されたマヤコフスキー(Vladimir Vladimirovich Mayakovsky, 1893-1930)の生誕70周年記念の夕べのためにデザインしたオリジナルのリトグラフ・ポスター。シャガールのポスター目録によると、このポスターはムルロー工房で500部刷られ、シートサイズは685x505mmとあるのだが、手元にあるものは余白の幅が上下左右それぞれ7mm程狭く、672x492mmとなっている。贋作の情報は今のところ確認していないが、これが第二版の刷りなのか、余白が切り詰められたものなのかは不明である。

シャガールは、ロシアの10月革命に際し「これはぼくの革命だ」と詩に書き、革命によってそれまでの大貴族と農奴制に支えられた封建的なロシア社会が変わり―それはロシアの人々にとっては世界そのものが変わることであった―それによって芸術の姿も変わる、また変えられると信じることができた熱狂の渦の中から、スターリンの全体主義体制に次第に追い詰められ絶望、1930年にモスクワの仕事場でピストル自殺を遂げたロシア未来主義の詩人ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・マヤコフスキー(Влади́мир Влади́мирович Маяко́вский,1890-1930)に捧げるデッサンを描いている。色彩画家と言われるシャガールであるが、初期のリトグラフにはモノトーンのものが多く、このデッサンも着色はされず、黄色を背景にしたポスターに仕上げられた。鮮やかな赤みを帯びたこの背景色はなかなかインパクトがあり、デッサンの黒との対比によってコントラストの高い画面を作り上げており、そこに様々な意味を連想させる赤が象徴的に使われている。黄色フェチの自分は、主役であるシャガールのデッサンよりもインパクトのある黄色に惹かれ、つい購入してしまったという次第。

●作家:Marc Chagall(1887-1985)
●種類:Poster
●題名:Hommage a Maïakovski
●サイズ:672x492mm(イメージ:662x482mm)
●技法:Lithograph
●限定:500
●印刷:Mourlot Imprimeur, Paris
●制作年:1963
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by galleria-iska | 2012-11-21 12:38 | ポスター/メイラー | Comments(2)
2012年 11月 12日

亀倉雄策のポスター「1964 Tokyo Olympic Games Poster」(1961)

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東京オリンピックが開催される三年前の1961年2月に制作された第18回東京オリンピック第1号ポスター(印刷:凸版印刷株式会社)。発行枚数は10万枚。このデザインは大会エンブレムとしても使われ、デザインは亀倉雄策(Yusaku kamekura, 1911-1997)、文字は原弘(Hiroshi Hara, 1903-1986)によるもの。亀倉氏はこのデザインについて次のように語っている:
「単純でしかも直接的に日本を感じさせ、オリンピックを感じさせる、むずかしいテーマであったが、あんまりひねったり、考えすぎたりしないよう気をつけて作ったのがこのシンボルです。日本の清潔な、しかも明快さと、オリンピックのスポーティな動感とを表してみたかったのです。その点、できたものはサッパリしていて、簡素といっていいほどの単純さです。(以下略)」
このポスターは、純白の縦長の紙に朱で日の丸、金で五輪マークと文字という、これ以上省力できないぎりぎりのところで成立しており、片田舎の駅の待合室の壁に張られたこのポスターを見たときの衝撃は今も忘れられない。出来るものなら剥がして持って帰りたい衝動に駆られた最初のポスターである。朱や金は神社仏閣に使われる色でもあり、子供ながらに穢れない純白の清廉さと荘厳で神々しさに身が引き締まるとともに、駅の待合室に異次元の空間が出現したように感じた。それから半世紀近く経ち、数年前にようやく実物を手にすることができた。純白の紙も経年によっていくらか黄身がかり、巻き皺などもあって、時代を感じさせるが、朱の色は退色もなく、その精神性は今も色褪せてはおらず、日本の〈ハレ」の日に相応しいポスターであったと思う。

●作家名:Yusaku Kamekura(1911-1997)
●種 類:Poster
●題 名:1964 Tokyo Olympic Games Poster
●サイズ:1026x550mm
●技 法:Letterpress
●限 定:100000
●印 刷:Toppan Printing, Co. Ltd., Tokyo
●制作年:1961
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なるだけ目に付かないよう、制作関係は通常とは逆にシート左上端に金文字で記載されている。

1971年に美術出版社から刊行された亀倉雄策の作品集。図版の印刷はポスターと同じ凸版印刷が行なっており、ポスターを手に入れるまではこの図版を代わりに眺めていた。
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亀倉氏自身による作品の解説。




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2015年8月6日追記:

2020年の東京オリンピックとパラリンピックのエンブレムを巡る一連の騒ぎで、故亀倉氏デザインの1964年の東京オリンピックの(第1号)ポスターが再び注目を集めることとなったが、ポスターとしての評価も確実に上昇しているようである。本文では取り上げなかったのだが、2012年の8月18日にロンドンはサウス・ケンジントンにあるクリスティーズの競売場(Christie's South Kensington)で開かれた売立て「Vintage Posters and Olympic Icons」(Sale 6015)に「The Rising Sun and the Olympic Emblem, Tokyo 1964」(Lot 26)として出品され、見積価格600~800ポンド(£600 - £800)のところ、1、625ポンド(£1,625)で落札されている。日本円に換算すると約23万円である。これだけの評価をしている業者は国内にはいないであろう。せいぜい数万円といったところである。半世紀を経た今、我々はこれを単に郷愁や感傷の対象として見るのではなく、亀倉雄策が成し遂げたデザインの金字塔として,然るべき評価を与えなくてはならない。
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by galleria-iska | 2012-11-12 18:45 | ポスター/メイラー | Comments(0)