ガレリア・イスカ通信

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2010年 12月 20日

ジョック・スタージス展の招待状「G.Ray Hawkins Gellery(1992)

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1975年にカルフォルニア州サンタ・モニカに開廊した写真専門画廊、G.Ray Hawkins Galleryで行なわれたジョック・スタージェス写真展のレセプションへの招待状。使われている写真は、ジョック・スタージェスが1991年に撮影した"Misty Dawn; Northern California"で、1994年に刊行された写真集「Radiant Identities」の表紙にも使われているので、スタージェスのファンにはお馴染み図像である。

ジョック・スタージェスが撮影したヌーディスト(ナチュリスト)たちは、草原で草を食む草食動物に似て、自然と同化、あるいは自然の一部と化して見える。したがって、普段食べている魚や動物を水族館や動物園で見たとしても食欲を刺激されないのと同じように、彼らの姿からは何ら性的な信号が、内在する要素としては存在しているものの、発信されていないということになる。逆に見る側において、そのようなものが不作為的に禁忌されることにより、何らかの軋轢を生じさせる危険性を常に抱えながらも、寧ろ見る側の内面が露わになることを防いでいる。スタージェスの写真を見る場合、そのような人と人、見る側と見られる側との間にあるアンビバレントで不調和な関係性を超えたところにある、普遍的な美に対する感覚を呼び覚ます契機と捉える必要があろう。

●作家:Jock Sturges(1947-)
●種類:Invitation
●サイズ:178x128mm
●技法:Offset
●発行:G.Ray Hawkins Gallery, Santa Monica
●制作年:1992




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by galleria-iska | 2010-12-20 22:32 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2010年 12月 16日

平和のワイン「Mimmo Paladino」(2004)

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1970年代に現代美術を席巻したミニマルアートやコンセプテュアルアートに呼応し、日本の“もの派”との関連性が言われるのイタリア版コンセプテュアル・アートのアルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)であるが、それを引き継ぎながらも、理論への行き過ぎとも思える盲従によって生じた制作の場での行き詰まりを打開する方法論として絵画的な表象の復権を即自的な感覚に求めたのが、“トランス・アヴァンギャルディア(超前衛)”といわれている。その中心的存在で、かつて3Cと呼ばれたキア(1946-)クッキ(1950-)、クレメンテ(1952-)ともに取り上げられる、南イタリアのパドゥーリ出身の画家、彫刻家、そして版画家でもある、ミンモ・パラディーノ(Mimmo Paladino 1948-)のデザインによる“平和のワイン”のラベル。

作家:Mimmo Paladino(1948-)
種類:label(英),etiquetta(伊),etiquette(仏)
サイズ:130x190mm
技法:Lithograph + embossing
発行:Cantina Produttori Cormons
制作年:2004

パラディーノを初めて知ったのは、1984年にロンドンのワディントン・グラフィックス(Waddington Graphics)から出版された4点組の大きなリノカット作品(*)を見たときで、それがネオ表現主義の絵画スタイルであることなど知る由もなく、純粋さや押さえ切れない情熱に突き動かされ、ある意味切羽詰ったような危機意識の感じられない、何かの焼き直しを思わせる、妙に違和感の残る作風が頭に残った。否、何か胸糞悪い気持ちに襲われた、と言った方が正確かもしれない。描くことへの感傷が、時代を1920年代まで時計の針を巻き戻す必要は、当時の日本人には理解でき得る範囲を超えていたのではないかと思える。ただ時代が、これが新しい潮流なのだと尻を叩き、前に押し出されてしまった、ということなのだろうか。現在は、そのような時代の要請からは距離を置き、生地にアトリエを構え制作しているという。

“平和のワイン”のラベルをデザインするにあたり、作家に求められるのは、ワインと平和のイメージを画面に盛り込むということ。パラディーノのラベルデザインは、縦長の矩形のなかに、神話の時代から平和の象徴されるオリーブの葉を冠のように巻き付けた人物の頭部(自画像か)と自らの署名とを組み込んだもの。傾いた水平線の上で転がり落ちそうな頭部を一点で支えている赤い玉が、葡萄の実ということになる。平和は葡萄(酒)によって保たれているということか。人物が片目を閉じているのは、避けられない瞬間への防御反応のように見えるが、何かの合図を送るときにする仕草にも見える。

(註)

*「A series of four linocuts」, 801 x 1216mm (31 1/2 x 47 7/8) on Fabriano Rosaspina paper 971 x 1355mm (38 1/4 x 53 3/8); printed by Giorgio Upiglio at Grafica Uno, Milan and published by the Waddington Graphics in an edition of 65 in 1984.

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by galleria-iska | 2010-12-16 19:31 | ヴィーノ・デッラ・パーチェ | Comments(0)
2010年 12月 13日

平和のワイン「Vino della Pace」(1985~)

数年前にある作家のポスターを探していたところ、見慣れないものに目が留まった。“Vino della Pace"、平和のワインと呼ばれる白ワインに貼られるラベルとのことだった。なぜか未使用のものだった。ちょっと胡散臭い名前だと思ったが、通常のワインラベルにはないその大きさと質感に、捨てがたい魅力を感じてしまった。版画とは謳っていないが、どう見ても版画にしか見えなかった。これは集めるべきではないか、それも一滴のワインも飲まずして。妙なことになってしまったが、でもよい。ワインラベルの収集家ではないのだから。ワイナリーの紹介によると、平和のワインは、イタリア北部、スロベニアと国境を接するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州(Friuli-Venezia Giulia)で生産されている白ワインで、コルモンス醸造組合(Cantina Produttori Cormons))の畑に世界各地から寄付され植えられた450種類以上の葡萄から作られているのだそうだ。1985年に生産が始まり、毎年三人の第一線で活躍する作家によるオリジナルデザインのラベル(label(英),etiquetta(伊),etiquette(仏))に、平和のメッセージを添え、世界中の元首に贈られているとある。ということは、日本では天皇家となる訳だが、果たして受け取ってもらえているのだろうか。出荷されるワインの本数は10000本と、それほど多くはないが、ラベルの希少価値が高まることは当分の間なさそうである。単品売りと、三種類をセットにしたものなどがあるらしい。ただし、目的はラベルであるので、ワインの味がどうだこうだと言う気は毛頭ない。と言うより未だ口にしたことがない。

本題のラベルだが、ワインラベルというと、高級ワインの代名詞とも言われるフランス・ボルドーのシャトー・ムートン・ロートシルト(赤ワイン)が有名で、1945、6年頃から20世紀を代表する作家のデザインがラベルを飾っており、コレクターも多いと聞く。2008年には日本でもラベルの原画展が開催されている。現代作家にラベルのデザインを依頼する例は他にもあるが、やはりオーナーの美術に対する関心と情熱があったればこそ実現できるわけで、お金を積んで何とかしようなどいう魂胆では此処まで長くは続けられない。ここでは新たなラベルの歴史を築きつつある、と言うよりもう既に25年の歴史がある、“ヴィーノ・デッラ・バーチェ”のラベルを出来るだけ取り上げてみたいと考えている。

ラベルの構成については、シャトー・ムートン・ロートシルトのラベルの場合は、ワインの身元や品質証明などに空間を割いているため、作家のデザインはラベルの上部、面積としては全体の五分の一程度の狭い空間に収められている。そのため、作家にとっては構図上の制約が大きく、どうしても画面が窮屈なものにならざるを得ない。一方、平和のワインは、横長のフォーマットを用い、ラベルの中央部分をデザインに充てるという、デザイン中心の構成を採っているので、作家は通常の作品製作に近い感覚でデザインを行なうことが出来る。勿論、それだけでデザインの良し悪しが決まるわけではないが。

承知の通り、シャトー・ムートン・ロートシルトのラベルのデザインを引き受けた作家は、ピカソ、ミロ、ブラック、マッソン、ダリ、シャガール、ウォーホル、キース・へリングなどなど、世界的に有名な作家が多く、相当な報酬が支払われているのかと思いきや、自分がデザインしたワイン(数量は不明)が送られてくるだけだそうだ。ただしワイン自体が高価なので、金額に直せばそれなりのものになるのかもしれない。“平和のワイン”も同じ方式を採っているようなのだが、こちらは価格が低いので、概ね平和への奉仕ということになるのであろう。とは言っても、ラベルは単なる原画の印刷ではなく、様々な版画の技法を用いて作られた歴としたアート作品になっており、小さな現代美術コレクションと位置付けることができる。デザインに参加している作家はイタリア人作家が中心となっているが、ヨーロッパ、アメリカはもとより、南米、アジア、オセアニアの作家も取り上げている。日本からは、これまでに三人の作家がデザインに参加しているが、フルクサスとも関係の深い前衛芸術家、小野洋子もその一人である。
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by galleria-iska | 2010-12-13 18:29 | ヴィーノ・デッラ・パーチェ | Comments(0)
2010年 12月 09日

山本容子「Carnet de Voyage Tokyo」出版記念展招待状、1997年

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銅版画が宿命的に持つ錬金術師的な性質を脱ぎ捨て、またその鬱積した精神の檻を軽々と吹き飛ばし、版画家と画家との間にあった見えない境界線を逆に自家薬籠中の物と化した機知に、一体幾人の作家が臍を噛んだことであろうか。銅版画家として出発は賞にも恵まれ、壁やスランプに陥ることもなく、順調に成功者の道を歩んでいたかに見えたが、その私生活は、とても柔らかく繊細で洗練された都会的なセンスと形容される版画作品とは相容れない、どろどろした修羅場を幾度となく経験しているのだから、女性は“げに恐ろしきものなり”である。で、銅版画家として今や押しも押されぬ地位を築いた山本容子(1952-)氏が、フランスの鞄メーカーのルイ・ヴィトン社の依頼で原画制作を行なった「トラベル・ノートブック」の第三号である“東京編”(Carnet de Voyage Tokyo)のパリ7区のバク画廊(Galerie du Bac」での出版記念展への招待状。表紙は「トラベル・ノートブック」の表紙と全く同じ造りで、原画から切り取られた四人の力士の歩く姿が嵌め込まれている。国内では、“山本容子の描く東京五十景-ルイ・ヴィトン「トラベル・ノートブック」原画展”として、1997年4月から7月にかけて、全国11ヶ所の百貨店を巡回、展示された。それに合わせルイ・ヴィトン ジャパンから図録が発行されているが、そちらの表紙にも同じ力士の図像が使われている。

●作家:山本容子(Yoko Yamamoto 1952-)
●種類:Invitation
●サイズ:145x226mm
●技法:Offset
●発行:Louis Vuitton Malletier
●制作年:1997
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山本容子の描く東京五十景-ルイ・ヴィトン「トラベル・ノートブック」原画展の図録、1997年、ルイ・ヴィトン ジャパン(株)発行。196x300mm
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by galleria-iska | 2010-12-09 20:37 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)