ガレリア・イスカ通信

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2011年 06月 27日

キース・ヘリングの紙袋「Pop Shop Paper Bag」

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キース・ヘリングのポップ・ショップで使用された紙袋。ステッカーやバッジ、絵葉書などの小物を入れるのに使ったのであろう。業務用の量産品を使っており、昔、駄菓子屋でばら売りの飴やゼリーを買うと入れてくれた紙袋と同じつくりである。今ではサザビーズやクリスティーズのオークションにも登場するアンディ・ウォーホルのキャンベルスープを刷り込んだショッピングバッグ(Campbell's Soup Can on Shopping Bag,1966)も、この紙袋と同じように、業務用のものを利用しており、1980年代初頭には未だ数ドルで買うことが出来た。この紙袋も今は未だ1ドルとか2ドルで手に入れることが出来るが、そのうち額に納まることになるのであろうか。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Paper bag
●スモールサイズ:250x160mm
●ミディアムサイズ:294x215mm
●ラージサイズ:?
●技法:Silkscreen
●発行:Pop Shop
●制作年:1985年



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by galleria-iska | 2011-06-27 19:50 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2011年 06月 24日

ホルスト・ヤンセンのポスターアルバム「Janssen Plakate」(1966)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)の亜鉛版エッチングによるポスターは既に何点か取り上げているが、ヤンセンのこれらのポスターにおける特異な表現は、日本のアングラ劇団のポスターやアメリカのサイケデリック・ポスター同様、疾風怒濤の1960年代にあってこそ生まれ出たのではないかと思っている。このアルバムは、ヤンセンが1965年から1966年にかけて自身の展覧会のために亜鉛版エッチン(Strichätzung)で制作したオリジナルポスター10点を収録したもので、1966年12月から翌1967年1月にかけてミュンヘンのヴォルフガング・ケッテラー画廊(Galerie Wolfgang Ketterer, München)で開催されたの展覧会の際に発行されたものである。ケッテラー画廊での展覧会は、ハノーヴァーのケストナー協会での回顧展の成功を受け、ドイツ各地(一ヶ所スイス)で規模を小さくして開催された展覧会を締めくくるもので、アルバムにはそのケストナー協会のポスターを始めとする10点のポスターの他、当時ヤンセンと親交のあった四人の人物の肖像画とヤンセンの展覧会での挨拶が収録されている。

アルバムに収録されているポスターは、オリジナルポスターの縮小版として、同じ印刷用紙に亜鉛版エッチングで印刷されている。印刷は、オリジナルポスターの印刷を手掛けたハンブルクの印刷・出版社、ハンス・クリスティアンズで行なわれ、肖像画4点も亜鉛版エッチングによるもの。また、表紙の装丁に使われた黒い用紙は、後にヤンセンの二冊の童話「パウル・ウルフと7匹の子山羊」と「ヘンゼルとグレーテル」の表紙や、折り本「豚の頭の肉ジェリー」のフォルダーにも使われることとなる。ヤンセンのポスターに関心のある者なら、必携の書(アルバム)であると言えよう。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster album
●題名:Horst Janssen Plakate und Traktätchen
●サイズ:340x240mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●発行:Galerie Wolfgang Ketterer, München
●印刷:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1966

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Kunstverein Hamburg(15 January-13 February)
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Kunsthalle Darmstadt(27 February-27 March)
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Württembergischer Kunstverein, Stuttgart(9 April-30 April)
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Kunstamt Tempelhof, Berlin(14 May-25 June)
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Kunstverein für Rheinlande und Westfalen, Düsseldorf(12 August-11 September)
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Overbeck-Gesellschaft, Lübeck(25 September-20 October)
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Kunsthalle Basel(25 October-23 November)
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Galerie Wolfgang Ketterer, München(8 December-15 January,1967)



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by galleria-iska | 2011-06-24 18:32 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2011年 06月 22日

パウル・ヴンダーリッヒ展の招待状「Bateau Lavoir」(1985)

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パウル・ヴンダーリッヒという画家を意識したのは、1960年代からウィーンの幻想画家を中心に異端と呼ばれる画家を日本に紹介していた美術史家の坂崎乙朗(1928-1985)氏の著作「幻想芸術の世界 」(1969年、講談社現代新書) の第9刷(1975年刊)を読んでからだと思う。その頃、池田満寿夫の作品を表紙に使っていた「みづゑ」でも特集が組まれたりしていて、そこでヴンダーリッヒの、ハンス・ベルメール譲りの女体の稜線をなぞるように走らせる流麗なデッサン力の虜となった。ただヴンダーリッヒの作品集も見たことがない人間には、坂崎氏の、ヴンダーリッヒを知る人間には即座に了解される作品についての形容には着いていけず、専らモノクロの小さな図版に漂う禁断の誘いに目を注いだ。ようやく実物にお目にかかることができたのは、1980年に西武美術館で開催された「夢とエロスの錬金術 / ポール・ヴンダーリッヒ展」においてであったが、写真家のカリン・シェケシーと出会う前の初期の作品に投影されている自己破壊的な残虐性については、多少違和感を覚えた。

1986年に“洗濯船“という名のパリの画廊、バトー・ラヴォワール(Bateau Lavoir)を訪れた時にいただいた、同画廊主催のパウル・ヴンダーリッヒ展のヴェルニサージュへの招待状。展覧会は既に終了していたが、壁には未だ数点の作品が掛けられていた。いずれも東京で展覧された作品よりも後で制作されたもので、殆んどエアブラシだけで描かれているのではないかと思えた。招待状に使われているのは、1983年制作のアクリル作品「Madame Vaucluse(ヴォクリューズの婦人)」で、この構図は、1975年の「Die schöne Falknerin(美しき鷹匠」に描かれた人物の構図を下敷きに、幾分変更を加えたものである。ヴンダーリッヒの描く肖像画、特に真横から描いたものは、エジプトのレリーフ彫刻を彷彿させるが、特にその目の描き方に特徴がある。真横を向きながら、目だけは正面を向いており、本当はどちらが見られているのか、という気持ちにさせる。そのヴンダーリッヒも昨年召され、エロスにずっと寄り添っていた、フロイトのいうところの、攻撃や自己破壊に傾向する死の欲動であるタナトスにも終止符が打たれた。

●作家:Paul Wundelrlich(1927-2010)
●種類:Invitation
●サイズ:145x110mm
●技法:Offset
●発行:Bateau Lavoir, Paris
●制作年:1985
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by galleria-iska | 2011-06-22 21:08 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2011年 06月 20日

フランク・オハラの詩画集「In Memory Of My Feelings-Frank O'Hara」(1967)

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「私の感情の思い出」は、1966年7月24日の早朝、サンド・バギーと衝突、翌25日に40才の若さで亡くなったアメリカのニューヨーク派の詩人であり、ニューヨーク近代美術館の学芸員でもあったフランク・オハラ(Frank O'hara,1926-1966)の死を悼み、1967年にオハラの親友の詩人で、当時ニューヨーク近代美術館の出版部門の客員編集者だったビル・バークソン(Bill Berkson,1939-)によって編まれた詩画集である。挿絵はロバート・マザーウェルの助言によって選ばれた総勢30人の作家によるもので、友人のウィレム・デ・クーニング(Willem de Kooning),ノーマン・ブルーム( Norman Bluhm),ラリー・リヴァース( Larry Rivers)、ジョアン・ミッチェル(Joan Mitchell)を始め、抽象表現主義のロバート・マザーウェル、バーネット・ニューマン、リー・クラスナー、ヘレン・フランケンサーラー、ネオダダのジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ、ポップ・アートのロイ・リキテンスタイン、クレス・オルデンバーグ等、現代美術の錚々たるメンバーが参加している。作家にはそれぞれページにレイアウトされた一編の詩のゲラ刷りと透明なプラスティックシートが渡され、ゲラ刷りの上にプラスティックシートを重ね、その上に直接描画するよう指示された。挿絵は一人一点ないし二点、デ・クーニングは三点、合計46点。それらは写真製版によるリトグラフで印刷された。参加した作家の内、ロイ・リキテンスタインとウィレム・デ・クーニングは、詩画集制作の意図を汲み、挿絵をオリジナルの版画作品として承認していることから、カタログレゾネにも掲載されているが、素晴らしい出来栄えの挿絵を制作したジャスパー・ジョーンズを始めとする他の多くの作家は、挿絵をオリジナル版画とは認めていないようである。その理由は、編者が詩人で、版画についての専門知識が無く、印刷にテキスト用紙の《Mohawk Superfine Smooth(White) 》を使ったことから、挿絵が版画としての表情に乏しいものになってしまったためではないかと思われる。そのため、この詩画集は、現代美術の錚々たるメンバーが一同に会しているにも拘わらず、驚くほどの安価で取引されている。生誕80年か、没後40年か、理由は分からないが、2005年に同美術館からファクシミリによる復刻版が出版されている。

●作家:Frank O'Hara(1926-1966)
●種類:Illustrated book
●題名:In Memory Of My Feelings: A Selection of Poems by Frank O'Hara
●ケースサイズ:324x240x32mm
●シート:305x230mm(305x460mm)
●技法:Photolithograph
●限定:2500(numbered on colophon page)
●編集:Bill Berkson
●発行:Musueum of Modern Art, New York
●印刷:Crafton Graphic C0ompany, Inc., new York
●制作年:1967

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ロイ・リキテンスタインによる《Romanz, or The Music Students》のために挿絵(1)
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ジャスパー・ジョーンズによる《In Memory of My Feelings》のための挿絵(1)
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ロバート・ラウシェンバーグによる《A Step Away from Them》のための挿絵(1)
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ウィレム・デ・クーニングによる《Ode to Willem de Kooning》のための挿絵(1)。
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by galleria-iska | 2011-06-20 19:28 | その他 | Comments(0)
2011年 06月 19日

スウィンギング・ロンドン50's-60's 「This was Tomorrow」

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昨年5月の郡山市立美術館に始まり、今年11月開催予定の徳島県立近代美術館まで、国内六ヶ所の美術館を巡回する現在進行中の展覧会「スウィンギング・ロンドン 50's-60's 展 (2010~2011)」。戦後の混乱期を乗り越え、消費財の大量生産が可能となった1950年代から、若い世代によって、美術、建築、デザイン、ファッション、音楽に大きな変革が起こる。中でもイギリスはその先駆的な役割を果たし、その中心地、ロンドンは“スウィンギング・ロンドン”と称され、若者文化の発信地となった。未だ足を運んでいないが、この展覧会は、大量生産時代におけるデザインの効用と、ファッションや音楽など中心とした若者文化を通して、その時代のライフスタイルを検証するものであるらしい。目玉として、この展覧会を企画した19,20世紀イギリス・デザイン(殊に家具)の専門家で、日本人の妻を持つ、マイケル・ホワイトウェイ(Michael Whiteway)の友人であるイギリスのロック・グループ、レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジが使用したギターやステージ衣装が特別出品されているとのこと。しかしその内容は、1990年にイタリアで開催された展覧会を下敷きにしているのではないかと思われる。イタリアでの展覧会は、ポップ・アートの先駆け的作品を制作していたエドワルド・パオロッツイら若い美術家や、商業美術を「Popular Art」と称し、ポップ・アートという言葉の誕生を促した評論家のローレンス・アロウェイなどが集まり、ICAを拠点に活動を行なっていた「インディペンデント・グループ」の企画により1956年にイギリスのホワイトチャペル・アート・ギャラリーで行なわれた、来るべき明日を予見する展覧会「This is Tomorrow」の1990年ヴァージョンがICAで開催されたことにに関連しており、それへの回答として1960年代に焦点を合わせたものである。その際、二冊組の図録とヴィデオテープを組み合わせた「This was Tomorrow」がイタリアの出版社Electa」から刊行されているのだが、その内容が正に今回のこの展覧会の雛形となっている。しかし、この20年というタイムラグは何であろう。

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図版:リチャード・ハミルトン(Richard Hamilton)のポスター:題名:Swingeing London 67, 技法:Photo-offset lithograph, サイズ:704x501mm, 限定:2000, of which 50 were signed by the artist. 発行: ED912 Edizioni di Cultura Contemporanea, Milano, 印刷:the artist and Sergio Tosi(Grafica Uno), Milano

その1960年代の負の部分をテーマとする作品で、「Swinging London」を捩った「Swingeing London 67」は、以前から手に入れたいと思ってはいるものの、いつも寸でのところで逃してしまう、ポップ・アートの創始者的存在であるイギリスの画家リチャ-ド・ハミルトンが1967年に制作したポスターである。ロック・グループ、ザ・ローリング・ストーンズのメンバー、ミック・ジャガー(Mich Jagger)とハミルトンの画商、ロバート・フレーザー(Robert Fraser,1937-1985)が麻薬(ヘロイン)の所持と使用によって逮捕され、その裁判で、判事が、犯罪抑止のためとしながらも、ミック・ジャガーの刑を軽減し、フレーザーに重い刑を下したことに対する返答として制作したもの。ポスターは写真製版によるオフセットリトグラフで、ミラノの出版社、ED912現代文化出版(ED912 Edizioni di Cultura Contemporanea)のポスターシリーズ「Situazione」(状況)」の6番目のポスターとして発行された。限定は2000部で、1000部が“Opaline machine-made wove stock”に、後の1000部 は“Fabriano paper”に印刷され、ファブリアーノ.紙の内の50部に署名がされた。印刷は作家自身とミラノの印刷・出版社、グラフィカ・ウノの刷り師、セルジオ・トシ(Sergio Tosi)の共同で行なわれた。


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by galleria-iska | 2011-06-19 13:43 | 図録類 | Comments(0)
2011年 06月 15日

第9回「時代の証人・画家展」招待状他「Les Peintres Témoins de leur temps:La Jeunesse」(1960)

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フランスを代表するサロンのひとつ、「時代の証人・画家展(Les Peintres Témoins de leur temps)」は戦後間もない1946年に設立され、1951年に第1回展がパリ市立近代美術館(Musée d'Art Moderne dfe la Ville de Paris)で開催された。展覧会では毎回テーマが決められていて、出品作家はそのテーマに沿った作品を制作・出品するのだが、第1回展のテーマは、「労働(Le Travail)」で、当時建設現場で働く労働者をモチーフにした作品を制作していたフェルナン・レジェ(Fernand Leger, 1881-1955)がポスターと図録用の原画を提供している。

開会式の案内にあるように、1960年にガリエラ美術館(Musée Galliera, Paris)で開催された第9回展のテーマは、「青春(La Jeunesse)」。青春というと何か青臭く聞こえなくもないが、1960年代は、それまでのいわゆる大人社会=既成社会に対抗する若者文化(Counter Culture)が台頭する時代で、急速な産業化の中で、若者たちは、ロック、ヒッピー、ドラックと、身体性を伴う行為によって連帯を訴え、社会の転覆を図るのではなく、その社会に従属させられている閉塞的な現状からの自己解放を目指すムーブメントを起こそうとした。それは1968年に頂点に達し、やがて燃え尽きる。1950年代末から1960年代初頭のヨーロッパや日本は未だ戦後の復興時機にあり、アメリカの後塵を拝していた訳だが、フランスでは1959年に、ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard, 1930-) の「勝手にしやがれ(À bout de souffle)」-主演ジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグ-や、フランソワ・トリュフォー(François Roland Truffaut、1932- 1984)の「おとなは判ってくれない(Les Quatre cents coups)」といった新しい視点と手法を用いたヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれる新しい世代の代表的映画が製作されている。美術分野でも世界中を席巻した抽象表現主義の嵐の中から、アメリカの「ネオダダ」とも通底する、大量生産・消費社会の中でのリアリテを追求する新しい潮流、ヌーヴォー・レアリスム(Nouveau Réalisme)が生まれた年でもあるが、そんな中、「時代の証人・画家展」は、サロンという言葉に象徴されるように、官展に近い性質を持ち、正統的な絵画表現を継承する画家たちによる展覧会であった。

それは開会の案内状やヴェルニサージュへの招待状のデザインにも現われており、その根底にはフランスの独立と文化を守るという強い意識があることを理解しなければならない。毎回使用されるデザインとフォーマットは統一されており、後援者に送られるものは、展覧会の設立メンバーのひとりで事務総長を務めていた画家のイジス・キシュカ(Isis Kischka,1908-1974)(1)の謝辞の入ったネームカード、公開に先立って行なわれる開会式典の案内およびヴェルニサージュへの招待状と展覧会の公式図録である。また展覧会には告知用のポスターが付き物であるが、この展覧会のポスターは、サロン・ド・メなどの展覧会と同様、エコール・ド・パリを代表する作家、マチス、デュフィー、ヴィヨン、シャガール、ブラック、ピカソ、ビュッフェ、藤田らによるデザインや作品を用いたリトポスターであったことから、早くからコレクションの対象となっている。1953年の第2回展は「日曜日(Le Dimanche)」をテーマに開催されたが、ポスターと図録の表紙を晩年のアンリ・マチス(Henri Matisse, 1869-1954)が切り絵でデザインしており、告知用ポスター800枚がムルロー工房で刷られた。今の感覚から言えば少ないように思われるが、当時の社会状況からすれば、このポスターを身銭を切って買おうとする人がどれほどいたであろうか。
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このポスターには通常のポスターの他に、出品作家向けに版画用紙に刷られたものがある。画像のポスターは、ある作家の元にあったもので、マチスは病床にあったため出席していないが、二十人以上の出品作家が記念のサインを書き入れており、マチスの版上サインの左下あたりに藤田嗣治(Foujita, 1888-1968)のペンサインも見える。

●種類:Inviation
●サイズ:ca.105x140mm
●発行:Les Peintres Témoins de leur temps(P.T.T)
●制作年:1960
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招待状を入れた封筒。


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1960年3月から5月にかけてパリのガリエラ美術館にて開催された第9回「時代の証人・画家展」の図録の特装版《Les Peintres Témoins de leur temps. Tome IX: La Jeunesse》。特装版は、販売用の普及版とは異なり、160部限定の非売品で、後援者の名前が記載されている(nominatif)。第9回展は「青春」をテーマにしており、出品作家のひとり、藤田嗣治が、ポスターと図録用の作品を依頼され、出品作の「花の洗礼」をもとにリトグラフで「三美神」を制作している。刷りはムルロー工房で行なわれ、普及版では表紙に貼られ、特装版では口絵として綴じ込みになっている。

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註:
1.イジス・キシュカは1908年にポーランド系ユダヤ人の移民の子としてパリに生まれる。批評家のジャン・カッソウに認められ、画家として注目を浴び初めていたが、第二次世界大戦におけるドイツ軍のパリ侵攻後にゲシュタポに捕らえられ、フランス国内の収容所に送られる。その際にそれまでに描いた200枚ほどの作品を破壊されてしまう。1944年に解放され、1945年にパリに戻る。1946年、作家で詩人で美術評論家のジャン・カスー(Jean Cassou)や学芸員のイヴォン・ビザルデル(Yvon Bizardel)らと美術展覧会《時代の証人・画家展》の設立に加わり、画家でありながら自らは出品せず、展覧会の裏方に徹した。
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by galleria-iska | 2011-06-15 21:54 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2011年 06月 13日

ジャンルー・シーフの風景写真「Sad Landscape No.1 England」(1965)

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2010年に東京都写真美術館で回顧展「ジャンルー・シーフ写真展‐Unseen & Best works」が開催され話題を呼んだジャンルー・シーフ(Jeanloup Sieff, 1933-2000)(1)は、数は少ないが、風景写真にも優れた作品を残している。初期の風景や都市の光景は、シーフがニューヨークを拠点に、「ルック」、「グラマー」、「エスクァイア」、「ハーパース・バザー」や、ヨーロッパの「ヴォーグ」などの仕事を行なっている間に撮られたもので、その多くは21mmという広角レンズの特性を生かした表現で、ほぼ300x200mmの非常にタイトな垂直画面に見た目以上の遠近感を表出させている。シーフの初個展は1969年であり、それ以前のプリントは印刷原稿や展示用に焼かれたもので、サインや限定番号が入っておらず、比較的安価に入手することが出来る。シーフがニューヨークからパリに戻ろうとしていた頃に撮られた「Sad Landscape No.1 England」」と題されたこの風景写真もそのような写真の一枚で、写真の表と裏にボールペンで「England 1965」との書き込みある。1997年11月20日に行なわれたクリスティーズのオークションには1966年の年記のあるものが出品されている。裏に《Jeanloup Sieff》のゴム印。

●作家:Jeanloup Sieff(1933-2000)
●種類:Photograph
●題名:Sad Landscape No.1 England, 1965
●サイズ:303x200mm(シート:402x298mm)
●技法:Gelatin Silver Print
●制作年:1965

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註:
1.ポーランド出身の両親のもと1933年パリに生まれる。写真についてのごく短期間(フランスで一ヶ月、スイスで七ヶ月)の専門講義を受けた後、すぐにパリでフリーランスのルポルタージュ写真家として独立。1955年に雑誌「エル」の写真家となる。1958年にマグナム・フォト(Magnum Photos)に加わり、ヨーロッパ各地でのルポルタージュ写真がスイスの写真誌「カメラ」に掲載される。1959年にマグナムを去り、ベルギーの炭鉱都市でのドキュメントで「ニエプス賞」を受賞する。1961年にニョーヨークに渡り、「ルック」、「グラマー」、「エスクァイア」、「ハーパース・バザー」や、ヨーロッパの「ヴォーグ」などの仕事を1965年まで行なう。1966年にパリの戻り、自身のスタジオを開設する。この時の引っ越し通知を友人のジャン=ミッシェル・フォロンが作っている。



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by galleria-iska | 2011-06-13 14:01 | その他 | Comments(0)
2011年 06月 10日

金子國義の絵本「Alice's adventures in Wonderland」(1974)

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2010年に公開されたディズニー映画「アリス・イン・ワンダーランド(Alice In Wonderland)」により再び関心が高まった金子國義(Kaneko Kuniyoshi,1936-2015)氏初の挿絵本「不思議の国のアリス」は、1971年のミラノのナビリオ画廊での個展がきっかけとなって誕生した。この絵本は、イタリアの事務機器メーカー、オリベッティ社が、顧客や配給会社へのクリスマスシーズンの贈り物第三弾(1)として1972年より始めた絵本シリーズの1974年度版贈呈本で、イタリア語の翻訳版(Alice nel paese delle meraviglie)とオリジナル版(Alice's Adventures in Wonderland)がある。このシリーズは当時オリベッティ社の文化部にいた作家のジョルジオ・ソアヴィ(Girogio Soavi, 1923-2008)のアイデアによるもので、当初年二作品の発行を予定していたが、後に年一作品となる。金子氏の年譜によると、オリベッティ社から挿絵を依頼されたのは1972年のことで、完成までに二年の月日を要したようである。1972年に完成していたなら、金子氏と同様、強烈な個性の持ち主であるポーランド出身のローラン・トポール(Roland Topor,1938-1997)の「ピノキオの冒険(Le avventure di Pinocchio)」とともにシリーズ第一弾となった筈である。それには理由があったようで、この二つの絵本のタイトルにはどちらも“冒険”という言葉がついており、世界中に知られている冒険物語の主人公「アリス」とイタリアを代表する「ピノッキオ」を同時に発行することで、ピノキオの知名度を更に高めようとする意図があったようなのである。

金子氏のこの「不思議の国のアリス」とトポールの「ピノキオの冒険(Le avventure di Pinocchio)」、そして1973年に発行されたジャン=ミシェル・フォロン(Jean-Michel Folon,1934-2005)の「変身(La metamorfosi)」(1973年度版)の三作は、それぞれ作家の代表作とも言えることから、人気もあり、プレミアム価格で取引されている。金子氏は本文中の挿絵13点と前後の見開きを鉛筆で描いており、表紙には、物語の冒頭部分-静かな川の野原で、アリスはお姉さんと一緒に歴史の本を読んでいたが、アリスはすっかり退屈になった-を描いた扉絵用の彩色作品と同じものが、楕円状に切り抜かれて貼られている。金子氏はそれまでどちらかと言えば反社会的で退廃的、また道徳や倫理に背を向けるような挑発的な作品を描いており、一部の熱狂的な支持者以外にはあまり馴染みがなかったが、一般向けの絵本の挿絵を手掛けることにより、広く知られることとなり、金子氏自身も「アリス」というキャラクターに新しい主題を発見し、その後さまざまな手法を用いてこの主題を発展させていくこととなる。
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●作家:金子國義(Kaneko Kuniyoshi, 1936-2015)
●種類:Illustrated book
●サイズ:348x283mm
●技法:Offset
●発行:Olivetti, Milano
●制作年:1974
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註:
1.第一弾は1951年から始められた美術史に残る巨匠の作品を用いたカレンダー。第二弾は卓上カレンダーで、第一作の1969年度版には、フォロンの挿絵12点(1968年制作)が使われている。詳しいことは(www.storiaolivetti.it)を見ていただきたい。イタリアのオリベッティ社の、“企業は社会に対する物質的な貢献と同時に、道徳的、文化的な貢献をすべきだ”という創業以来の理念にもとづき、同社が幅広く世界各国の作家に依頼することによって生まれたこれら挿絵の原画を集めた「世界の現代画家50人展」が、イタリア・オリベッティ社と日本オリベッティ株式会社の協賛で、1978年7月25日から8月31日にかけて東京国立近代美術館で開催されている。


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画像の追加(2014年11月14日)

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この絵本が贈呈本であるとの証左となるものが見つかった。「日本オリベッティ株式会社」の当時の社長ルティアーノ・コーヘンが社員に贈ったものに付けられていた挨拶文である。書き写したものがあるので、紹介したい(以下原文のまま):

社員のみなさまへ

私は、ことし、みなさまのご家庭に、特別すばらしいプレゼントをさし
あげることにいたします。

それは、イタリア・オリベッティ社発行の童話本『ふしぎの国のアリス』
(監修:イタリア・オリベッティ社文化担当ディレクター、ドクター・ソアビ/挿絵:
日本人画家、金子国義)です。

かねてよりオリベッティ社では、文化事業の一環として画集や写真集や
童話などを出版、世界中の重だった文化人や文化団体に贈呈してきており
ますが、今回、私は特に日本オリベッティ社員のご家庭にも、その一つ
をお贈りしようと思いつきました。

それは、このような童話に秘められた人の心の不変の美しさ、あたた
かさと、オリベッティ社の存在の源泉ともなっている人間や文化を大
切にする心のあたたかさを、社員はじめ、ご家族のみなさまにも肌身
を通しておわかりいただきたいと思ったからです。

この本の監修をした、ソアビ氏は、詩人であり画家でありますが、1971年、
ミラノで個展を開いた日本人画家、金子国義氏(ご存知の通り、氏はこの頃
から婦人公論を表紙を描いています。)の画風に魅かれ、かねてより
心にあたためていた『ふしぎの国のアリス』の挿絵を描いてもらう人は
彼をおいて他にいないと思い、翌年あらためて彼を招き、正式に依頼し
たのでした。金子氏は、大きな喜びと怖れをもってこれに応じました。
一年後、絵はソアビ氏の想像通り、ふしぎな美と愛らしさを秘めて、
現前しました。そしてまた一年、ソアビ氏と金子氏、つまりイタリアと
日本の信頼と愛の交感は、世に類をみない『ふしぎの国のアリス』として
実を結んだのです。

ではみなさま、どうぞこの貴重な美しい果実をうけとってください。
そして、国境を時代を超えてかよいあうことのできる馥郁たる人の心
の豊かさあたたかさを、ご家族そろって味わってくださるよう、私は
心から願っております。

  1974年12月
             
            日本オリベッティ株式会社
            代表取締役社長 ルチアーノ・コーヘン



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by galleria-iska | 2011-06-10 12:46 | その他 | Comments(0)
2011年 06月 08日

ホルスト・ヤンセン生誕80年展図録「Galerie Vömel」(2009)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)生誕80年となる2009年にオルデンブルクのホルスト・ヤンセン美術館(Horst-Janssen-Museum Oldenburg)で開催された回顧展に合わせ、デュッセルドルフのヴォーメル画廊(Galerie Vömel)で行なわれた生誕80年展の図録。ヴォーメル画廊では、デッサン、水彩、初期の木版、銅版画、リトグラフが展覧されたが、残念ながら、初期のリトグラフや亜鉛版エッチングによるポスターや招待状の展示はなかった。ソフトカバー、19ページ、ドイツ語。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Catalogue
●サイズ:297x210mm
●技法:Offset
●発行:Galerie Vömel, Düsseldorf
●発行年:2009

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by galleria-iska | 2011-06-08 21:26 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2011年 06月 08日

ブルース・ウェーバー特集号「PER LUI LUGLIO/AGOSTO 1985-N.29」

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写真家にもそれぞれ得意とするジャンルがあるのだろうが、もともとは自己の外部の世界を記録するための道具であったはずである。が、写真がそれまで絵画の要素である記録性という側面に取って代わると、相互に影響し合い、それぞれの持つ性質が互いに入り込んでいった結果、相容れない矛盾を抱え込んだ、今ある写真の概念が出来上がったようだ。従って、そこには常に冷徹な記録性と撮影者の対象を見つめる眼差しの奥底にある何らかの想いのようなものが交差している。監視カメラの映像や画面に映し出されているフラットな世界の断片を見れば、写真というものが深く人間の身体性に関わっているかが分かるはず。写真は静止した画像であるが、その記録性が人々の見たいという要求や願望を実現する術となり、さらに印刷技術の進歩により、オフセット印刷による大量の印刷が可能となると、あらゆるものが写真の対象となり、視覚世界を無限に拡大してきた。が、更に写真自体がひとつの擬似的な世界を提供し、その中に人間の持つ様々な想いが投影されていくこととなる。

1982年のカルヴァン・クラインの下着写真の成功を機に、一躍人気商業写真家に躍り出たブルース・ウェーバー(Bruce Weber,1946-)であるが、芸術家の仲間入りは少し遅いようだ。彼の写真集は被写体となったモデルの話題性も手伝い、人気が高い。今手元に残っているのは、スミソニアン協会出版(Smithsonian institution Press))から刊行されていた写真家入門シリーズとも言える“Photogaphers at Work"の中の「Hotel Romm with a View」だけで、もう一冊、写真集とは言えないが、ウェーバーという写真家のフィールドが良く分かるという意味で、ウェーバーをフューチャーしたイタリアの男性版ヴォーグ「Per Lui」の1985年7/8月号がある。1989年にエイズで亡くなったロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethope, 1946-1989)と同じ1946年生まれのウェーバーは、男性ヌードをひとつのジャンルにまで高めた功績は評価されるのであろうが、ファッションのコードの超える何かが見えてこない。

●作家:Bruce Weber(1946-)
●種類:Men's magazine
●題名:Per Lui Edizione Speciale: USA by Bruce Weber
●サイズ:280x212mm
●技法:Offset
●発行:Edizioni Condé Nast, Milano
●制昨年:1985


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by galleria-iska | 2011-06-08 19:48 | その他 | Comments(0)