ガレリア・イスカ通信

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2011年 12月 28日

ホルスト・ヤンセンのポスター(17)「Hamburger Schauspielhaus(2)」(1968)

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ホルスト・ヤンセンのドイツ劇場における舞台劇の初日公演を広告するポスター第二作は、芸術監督であったエゴン・モンク(Egon Monk, 1927-2007))が現代風の舞台演出を行ない、1968年の9月8日に上演された、ドイツの劇作家ヨーハン・クリストフ・フリードリッヒ・フォン・シラー(Johann Christoph Friedrich von Schiller, 1759-1805)の第一作目の戯曲『群盗(Die Räuber)』ためのもの。シラーの『群盗』は、いわゆる“疾風怒涛(シュトゥルム・ウント・ドラング )時代”の末期にあたる1781年に出版された戯曲で、批評家からはヨーロッパのメロドラマの進展に影響を及ぼした作品と考えられている。1782年1月13日のマンハイムでの初演は観客の度肝を抜き、一夜にしてセンセーションを巻き起こした。これを観た多くの若者が盗賊になろうとした、とある。筋書きは、カールとフランツ・モールという二人の貴族の兄弟の間の確執を中心に展開していく。カリスマ性を持つ一方で反抗的な学生のカールは父に深く愛されているが、弟のフランツは冷酷で計算高い悪人で、カールの相続財産を取り上げてしまおうと企む。劇が進むにつれて、フランツの様々な計略とカールの無邪気で英雄的行為がともにコンプレックスであることが明らかになる。この公演は1969年の11月23日にテレビ放映された。

エゴン・モンク(Egon Monk, 1927-2007)の舞台演出は、ハンブルクの国立舞台の保守的な観客の度肝を抜き、大きなスキャンダルとなり、モンクはドイツ劇場の芸術監督から降ろされることになる。在任期間は僅か74日であった。

ヤンセンはカールとともに盗賊になった五人の学生を描いており、それぞれの配役を記している。盗賊の間から顔を見せる小柄な女性は、カールに恋するアマーリア。そして画面左下から伸びる手は、フランツの謀略によって殺されたことになっている父親の老モール伯爵である。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Premiere "Die Räuber"
●サイズ:867x609mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:2000
●発行:Hamburger Schauspielhaus(Das Deutsche Schauspielhaus in Hamburg)
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1968
●目録番号:Meyer-Schomann 33

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鉛筆によるモノグラムサイン。画面右下角には刷り込みのサインと年記。


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by galleria-iska | 2011-12-28 11:15 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2011年 12月 26日

ホルスト・ヤンセンのポスター(16)「Hamburger Schauspielhaus(1)」(1968)

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ホルスト・ヤンセンは社会変革への要求の波が頂点に達する1968年の秋、ハンブルクにある国立のドイツ劇場(Das Deutsche Schauspielhaus in Hamburg)で上演された三つの劇の初日を広告するポスターを制作している。最初のポスターは、『"Über den Gehorsam" -Szenen aus Deutschland, wo die Unterwerfung des eigenen Willens unter einen fremden als Tugend gilt (”服従について”-見知らぬ者に対して自分の意志を従属させるのが美徳であるとするドイツの場面』という劇のためのもので、ヤンセンとは二つ違いの、日本では映画「史上最大の列車強盗」の製作者として知られる俳優、映画監督、脚本家、作家のエゴン・モンク(Egon Monk, 1927-2007)が、劇作家クラウス・フーバレック(Claus Hubalek) とともに脚本を書き、芸術監督を務めた。この初日公演はドイツの舞台史上初めてテレビで、しかもカラーで生中継されている。

その当時発行されたドイツの週刊誌「シュピーゲル(Der Spiegel)」によると、この劇はその当時のドイツの置かれていた時代背景を色濃く反映した政治的な諷刺劇として書かれたものらしく、ヤンセンは、抑止力としての銃と、当時ナチスの強制収容所との関係を取りざたされていたドイツ連邦共和国(西ドイツ)の第二代大統領ハインリッヒ・リュプケ(Heinrich Lübke, 1894-1972)を描いている、とあるのだが、ドイツの、特に現代史の中で、服従というものが如何に変質してしまったのか、と云うことが、幾つかの例を挙げながら語られる。ヤンセンは中心人物の胸のバッジに“Make Love to Monk"という言葉を書き込んでいるが、それにはドイツの現代演劇の歴史的転換となるモンク(の作品)に対する求愛というか、最大限の賛美の気持ち込められているのだろうか。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Premier "Über den Gehorsam"
●サイズ:866x512mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:2000
●発行:Hamburger Schauspielhaus(Das Deutsche Schauspielhaus in Hamburg)
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1968
●目録番号:Meyer-Schomann 32

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by galleria-iska | 2011-12-26 20:43 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2011年 12月 22日

フランチェスコ・クレメンテの挿絵本「The White Shroud」(1983)

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1960年代初頭にインドのペナレスに数年間隠棲した経験のあるアメリカのビート・ジェネレーションを代表する詩人、アレン・ギンズバーグ(Allen Ginsberg, 1926-1997)と、イタリアのナポリに生まれローマ大学で建築を学んだ後アーティストとなり、1973年から79年までマドラスを制作の拠点としていた画家、フランチェスコ・クレメンテ(Francesco Clemente, 1952-)とのコラボレーションによる挿絵本「白いかたびら(The White Shroud)」は、1984年にバーゼルのクンストハレで開催されたクレメンテの個展の際に発行された。本の印刷と装丁は、クレメンテが制作の拠点としていたインドのマドラスで行なわれている。表紙にはインドの手織綿布が使われ、赤、紫、青、緑の四色の綿布が用意された。題字は金箔押し。この本を購入した古書店の話では、インドから船便で輸送中に相当数が湿気によるダメージを受けた為、残っているものは少ない、というものであったのだが...。

ギンズバーグによれば、夢の中で母親のナオミ(Naomi Livergant Ginsberg, 1894-1956)-有能な教師である一方で熱心な共産主義者で、ギンズバーグをしばしば集会に連れて行くが、後に精神病を患い入院してしまう-に対して抱いていた相反する感情を解決する詩「白いかたびら」は1983年10月5日の朝5時30分から6時35分の間にベッド脇で最初ノートに記され-その詩にインスパイアされクレメンテがペンと鉛筆と水彩によるドローイングを制作-同じ年の12月20日の午後、クレメンテのフォリオ(445x679mm)に書き改めた、とある。クレメンテは1980年、マドラスでの制作を切り上げ、ニューヨークに初めて滞在し、1983年には家族と共に定住を決めている。

クレメンテの絵画にはいわゆる絵画的な実在性を構築するための構造がなく、クレメンテの意識の変遷を垣間見せるかのように、時間の揺らめきに中に漂う視覚的な断片が、エーテル状の夢幻的空間の中に浮び上がり、やがて消えていく。そのような表現方法は、クレメンテの、聖と俗、生と死が一井の生活なかで日常的に隣り合うインドでの体験が反映されたものと言えるのかもしれない。つまり我々が目にしている現実社会は大いなる幻影に他ならず、地上にある真実とは、聖なる死と俗なる生以外には何もない。

●著者:Allen Ginsberg(1926-1997)
●挿絵:Francesco Clemente(1952-)
●種類:Illustrated book
●サイズ:400x311mm
●限定:1111
●印刷:Kalakshetra Publications, Madras, bound in green hand-woven cotton cloth
●制作年:1983

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口絵。シルクスクリーンによるオリジナル
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by galleria-iska | 2011-12-22 16:15 | その他 | Comments(0)
2011年 12月 16日

ホルスト・ヤンセンの折り本シリーズ(3)「Missverständnisse」(1973)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)の折り本による連作シリーズ第三作「勘違い(Missverständnisse)」は、フラ・アンジェリコ(Fra Angelico), ドガ(Degas), エゴン・シーレ(Egon Schiele), レオナルド・ダヴィンチ(Leonardo), ミケランジェロ(Michelangelo), ゴットリーブ・シック(Gottlieb Schick), ルノワール(Renoir), エミール・ノルデ(Emil Nolde), ピカソ(Picasso), パウラ・モーダーソン=ベッカー(Paula Modersohn-Becker)といった西洋絵画の巨匠たちの作品の絵葉書を用い、それに「転覆」と同じように重ね描きを施すことにより、一種のパロディとして成立させるとともに、自らと巨匠とを同化させ、画家としてのアイデンティティが、現代のアカデミズムではなく、自らの選んだ絵画史の中に位置づけられるとする、ヤンセンの自己表明として見ることが出来る。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Accordion book(Leporello)
●題名:Missverständnisse
●編集:Gerhard Schack
●サイズ:201x184x10mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)+Offset
●発行:Hans Christians Verlag, Hamburg
●制作年:1973


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by galleria-iska | 2011-12-16 12:55 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2011年 12月 15日

ホルスト・ヤンセンの折り本シリーズ(2)「Subversionen」(1972)

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ホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)の折り本による連作シリーズ第ニ作となる「転覆(Subversionen)」は、ヤンセンの東洋の美術への関心、なかんずく、北斎、広重、春信らの浮世絵に対する傾倒が示されている。ヤンセンの浮世絵への接近にはパウル・ヴンダーリッヒの影響があったものと思われるが、ヤンセンはここでは逆さまにした日本と中国の名画の絵葉書に重ね描きを施し、元図をコラージュのように取り込み、まったく別の作品に創り上げている。ヤンセンは絶えず、自らの師と仰ぐの作家の模倣や剽窃,引用を行なうことによって、その作家の精神性を吸収し、自らの創造の糧として取り込んでいく方法論を取り続けた。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Accordion book(Leporello)
●編集:Gerhard Schack
●題名:Subversionen
●サイズ:200x182x8mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)+Offset
●発行:Hans Christians Verlag, Hamburg
●制作年:1972


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by galleria-iska | 2011-12-15 12:30 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2011年 12月 14日

ホルスト・ヤンセンの折り本シリーズ(1)「14 Biber」(1971)

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1969年に一気に四冊もの挿絵本を完成させたホルスト・ヤンセン(Horst Janssen,1929-1995)であるが、1970年代に入ると、風景の発見と同時に、名画や歴史上の人物に対する関心や敬意をパロディの手法によって表現した、折り本形式の連作シリーズを1971年から1973年まで毎年一冊づつ制作している。装丁は三冊ともヤンセン自身が行なっており、テキストも執筆している。1971年に制作・刊行された第一作は「14の髭(14 Biber)」で、歴史上の人物、職業、地位が、顔の造作ではなく、顔髭によって特徴付けられることを、のっぺりした卵と多様な表情を持つ顔髭との組み合わせによってアイロニカルに描き出している。描かれている人物は、Th. Körner, Napoleon III, Graf Bismarck-Bohlen, Graf Henckel von Donnersmarck, Emile Ollivier, Antonius von Paduaなどである。

表表紙に著者名、題名、出版社名がヤンセンの手書き文字で記され、裏表紙には19世紀プロセイン管区指導官、フェリックス・フォン・ベートマン(Felix von Bethmann, Hollweg,1824-1900)の肖像と、その口髭のように見える愛犬ジャッキーが描かれている。また、表紙の内側にあたる部分にヤンセンの手書きのテキストを収録しており、それらはすべて亜鉛版エッチングで印刷されている。表表紙に鉛筆による日付(1971年12月7日)と署名。この連作シリーズの表紙には純白の用紙が使われているが、酸化しやすい紙質なのか、日焼けしたものが多い。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Accordion book(Leporello)
●題名:14 Biber
●編集:Gerhard Schack
●サイズ:199x154x8mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)+Offset
●発行:Hans Christians Verlag, Hamburg
●制作年:1971
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by galleria-iska | 2011-12-14 20:30 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2011年 12月 09日

マン・レイ自伝「Self Portrait」(1963)

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マン・レイに特に執心していた訳ではないが、今から二十七、八年ぐらい前に、ポール・エリュアール(Paul Éluard, 1895-1952)の二人目の妻ニュッシュ(Nusch, 1906-1946)のヌード写真が挿絵として使われているエリュアールの詩画集『容易(Facile)』(1935年刊)(1)に心惹かれ、何度か注文を試みたことあるが、落手には至らなかった。その頃のパリの古書店の価格は、通常版で5000フラン(約12万円)ぐらいだったと思う。現在は3700ユーロ(約38万)ぐらいか。

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それから暫らくして、「現代芸術の予言と魔術-マン・レイ展」という大規模な展覧会の会場で『容易』を発見し、またぞろ所有欲が沸き起こったが、どうもマン・レイよりも被写体であるニュッシュに惹かれていただけのような気がする。もう少しマン・レイのことを知っておくべきかもしれないと思い購入したのが、1963年に刊行されたマン・レイの自伝「Self Portrait」。初版本であったが、状態があまり良くなかったので、5ドルぐらいで入手することができた。表紙には、マン・レイが1941年に撮影した自画像をもとにしたイメージが使われているが、装丁のために幾分上部が切り詰められている。この写真は1947年にリトグラフ、1972年にはシルクスクリーンに置き換えられ、版画作品として限定出版されているので、自伝の表紙にはリトグラフのイメージが使われたということになるのだろう。裏表紙はマン・レイの手形。

●作家:Man Ray(1890-1976)
●種類:Autobiography
●サイズ:240x160x40mm
●出版:Little, Brown and Company, Boston, Toronto, 1963

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註:
1.20世紀に出版された写真集の意義と価値を標準化するために書かれたアンドリュー・ロス(Andrew Roth)の『The Book of 101 Books - Seminal Photographic Books of the Twenties Century』には、"A fluent but not at all facile collaboration between the poet, the photographer, the model and muse, and the publisher"と紹介されている。
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by galleria-iska | 2011-12-09 23:32 | その他 | Comments(0)
2011年 12月 07日

ホルスト・ヤンセンのポスター(15)「Kunsthalle Hamburg」(1968)

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1946年、ホルスト・ヤンセンは16才でハンブルク美術学校に入学する。ヤンセンより二才年上のパウル・ヴンダーリッヒは1947年に入学しているので、一年先輩となるのだが、美術学校の入学資格は18才で、伯母のアンナが書類を書き換え、年齢を偽って入学したのである。とは言え、その画才は新入生の中では群を抜いており、恩師となる、画家、グラフィックデザイナー、イラストレーター、版画家のアルフレート・マーラウ教授(Alfred Mahlau, 1894-1967)に見い出されることとなる。そしてマーラウ教授の下、在学中に早くも二冊の絵本を出版している。このポスターは、そのマーラウ教授の没後1年後にハンブルクのクンスト・ハレで開催された素描と水彩の展覧会の告知用に制作されたものである。このポスターの作画スタイルはヤンセンが1968年用の年賀状として制作した作品に近しいものがあるが、絵画的な形式に沿った画面構成ではなく、フリージャズの即興演奏のように画面全体が混沌としており、一見しただけでは何が描かれているのが判らない。鳥や魚のようなものに混じって、ヤンセン自身も描かれているようなのだが、それと識別することは難しい。白地の部分には、マーラウ教授の教え子の名が散りばめられている。

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ホルスト・ヤンセンの年賀状、1968年

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Alfred Mahlau
●サイズ:650x860mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●発行:Kunsthalle Hamburg
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1968
●目録番号:Meyer-Schomann 31

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by galleria-iska | 2011-12-07 18:38 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(1)
2011年 12月 05日

ホルスト・ヤンセンのポスター(14)「Galerie Brockstedt Hamburg」(1967)

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ハンブルクのブロックシュテット画廊で1967年12月から翌年の1月にかけて行なわれた画廊設立10周年の展覧会を告知するために作られたポスター。ヤンセンはこのポスターから亜鉛版エッチングで多色刷りを行なうようになる。また中間トーンの表出に向かないという亜鉛版エッチングの特徴であり弱点でもある性質を補うため、画像では解像度が低いために潰れてしまっているが、ヤンセンは無数の描線を書き連ねることで諧調を作り出している。この手法は、それまで黒ベタで描かれていた人物の着衣に用いられ、アドルフ・ヴェルフリの展覧会ポスターでは部分的だったものが、ゲオルク・グレスコの展覧会ポスターでは全面的に取り入れられ、逆に黒ベタの部分が画面から消えてしまっている。このポスターでは幾分バランスを図っているのだが、人物の描写については、もはや人の顔とは見分けられないくらいデフォルメされており、画面中央に描かれている管楽器を演奏する人物はヤンセン自身なのかもしれないが、その姿は蟹を想像させる。向って右側の耳の上に、最初の文字ははっきり読み取れないが、《Degressiven Zwang 》というような書き入れがあり、続けて《 -x-=+》と数学の法則が書かれている。また画面右上の方にも《+》の記号が見える。何を意味しているのだろうか。

展覧会には、ウイーン分離派を代表するクリムト(Gustav Klimt, 1862-1918)やエゴン・シーレ(Egon Schiele, 1890-1918年)、ドイツ象徴主義のマックス・クリンガー(Max Klinger, 1857-1920)、新即物主義のクリスティアン・シャッド(Christian Schad, 1894-1982)、オットー・ディックス(Wilhelm Heinrich Otto Dix, 1891-1969)、ゲオルク・グロス(Georg Ehrenfried Groß, 1893-1959)などに加え、契約作家のフンデルトヴァッサー(Friedensreich Hundertwasser, 1928-2000)、ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)、ヴンダーリッヒ(Paul Wunderlich, 1927-2010)、ベルメール(Hans Bellmer, 1902-1975)、ピット・モレル(Pit Morell, 1939-) 、アウトサイダー・アートのゾンネンシュターン(Friedrich Schröder-Sonnenstern, 1892-1982)の作品が出品された。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:10 Jahre Galerie Brockstedt
●サイズ:631x847mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●発行:Galerie Brockstedt, Hamburg
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1967 13.11
●目録番号:Meyer-Schomann 30

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画面右下の余白に入れられたヤンセンのモノグラム・サインと年記。靴のつま先にもサインとポスターの制作年月日が書き込まれている。
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by galleria-iska | 2011-12-05 17:55 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)
2011年 12月 01日

ホルスト・ヤンセンのポスター(13)「Overbeck-Gesellschaft Lübeck」(1967)

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1967年8月20日から9月17日にかけて北ドイツの都市リューベックにあるオーヴァーベック協会で行なわれた画家兼版画家ゲオルク・グレスコ(Georg Gresko, 1920-1962)の追悼展(1)のポスター。日本ではあまり紹介されることのないゲオルク・グレスコであるが、パウル・ヴンダーリッヒとホルスト・ヤンセンの共通の友人である。グレスコは戦後の数年間をベルリンで過ごし、1949年に作家自ら版画を安価で売ることで生計を立てる活動を組織する。1952年、ベルリン市の栄誉市民となり、ベルリンの《Meisterschule für Graphik und Buchewerbe》の講師の職に就く。1957にハンス=ヴェルナー・フォン・オッペンによってハンブルク造形芸術大学(=ハンブルク美術大学)の教員に任命され版画科を受け持つ。1960年に教授に就任、ブロックシュテット画廊で個展を開催するが、1962年死去。パウル・ヴンダーリッヒは1963年にパリから戻り、ハンブルク造形芸術大学の版画科の教授となっていることから、グレスコの跡を継いだのかもしれない。

このポスターにも上下二枚の亜鉛版が使われている。ヤンセンの描く人物像は戯画化されたり大仰な身振りで描かれることが多いが、没後5年を経て描かれたグレスコの肖像は、全身全霊で対象を捉えようと、まるで仁王像の阿形が如き形相で絵筆を運んでいる。その背後には何やら得体の知れない亡霊のようなものが忍び寄り、様子を伺っている。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Georg Gresko
●サイズ:847x610mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:500
●発行:Overbeck-Gesellschaft, Lübeck
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1967 9.8
●目録番号:Meyer-Schomann 29

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当時の販売価格はヤンセンの署名入りで10ドイツマルク。

註:
1.オーバーベック協会での展覧会の際に刊行された図録:ヤンセンの版画目録を編纂したカール・フォーゲルによる版画目録付き。
Carl Vogel: Georg Gresko 1920-1962, Gedächtnisausstellung. Mit einem Werkvezeichnis der Druckgraphik 1928-1962(George Gresko, 1920-1962. Memorial Exhibition. With a list of his prints 1928-1962) Overbeck-Gesellschaft, 1967. 196 pp., Ed.3000
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by galleria-iska | 2011-12-01 19:59 | ホルスト・ヤンセンのポスター | Comments(0)