ガレリア・イスカ通信

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2012年 07月 31日

リチャード・ロングのポスター「Richard Long New Work」(1980)

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イギリスの彫刻家、写真家、画家リチャード・ロング(Richard Long, 1945- )の作品を初めて見たのは、名古屋の錦にあったコウジ・オグラ・ギャラリー(Kohji Ogura Gallery)であったと記憶する。見晴らしの良い草地に巨石が円状に並べられたストーン・ヘンジもそのひとつであるストーン・サークルやケルト文化との関係性を仄めかすような、加工されていない様々なサイズの石が円を形作るように置かれていた。石を配置するために使われるのは写真だったように思う。円は様々な民族とって生や死、また神の存在とも結びついた特別な意味を持つ形態であるが、ロングの作品では、無機的な石を使って単純でありながら最も完全な形である円を構成することによって人知を超えた何かとの交感を示そうとしているのだろうか。その方法論はミニマルアートの概念に繋がるものとされている。このポスターにはメキシコで制作されたサークルをロング自身が撮影した画像が使われている。ロングのこのような行為=作品はランドアートとして捉えられるが、人口の自然を作り出すような大掛かりなものではなく、自然に大きな負荷を掛けない、作家個人の身体性の痕跡を示すものである。

●作家:Richard Long(1945-)
●種類:Poster
●題名:Circle in Mexico 1979
●サイズ:482x647mm
●技法:Offset lithograph
●発行:Anthony d'Offay, London
●制作年:1980
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by galleria-iska | 2012-07-31 19:19 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2012年 07月 27日

コンテンポラリー・アーテイストの塗り絵本「just add color」(1991)

知的障害者のための施設の設立を目的とする非営利組織「ホームワード・バウンド(Homeward Bound)が1991年に発行した塗り絵本。対象は子供たちであるが、漫画や映画のヒーローだけではなく、現代美術にも触れさせてあげたいという意図で、36人の作家に塗り絵用のドローイングを依頼したものである。1989年の年記のあるドローイングを提供したキース・ヘリングは発行時にはすでに亡くなっているが、生前に制作していたのであろうか。ドローイングはリトグラフによる片面印刷なので、切り離し、カラーマットを使って額装すれば、モノクロの版画として鑑賞することもできる。ドローイングは縦位置(19)と横位置(17)の構図に分けられ、表裏両面表紙という方法で装丁が行なわれている。

●作家:36 artists
●種類:Coloring book
●題名:Just Add Color, A coloring book with drawings by contemporary artists
●サイズ:357x255mm(255x357mm)
●技法:Offset lithograph
●発行:Homeward Bound Project, Inc., New York
●発行年: 11/28/1991
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縦位置のドローイング用表紙
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アメリカの美術史家ロバート・ローゼンブルム(Robert Rosenblum, 1927–2006)が縦位置用の序文を書いている
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ドナルド・バチェラー(Donald Baechler, 1956-)のドローイング
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エリック・フィッシェル(Erik Fischl, 1948-)のドローイング
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キース・ヘリング(Keith Haring, 1958-1990)のドローイング

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横位置のドローイング用表紙
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横位置用の序文はアメリカの美術評論家ピーター・シェルダール(Peter Schjeldahl, 1942)が書いている
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ケニー・シャーフ(Kenny Scharf, 1958-)のドローイング
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ドナルド・サルタン(Donald Sultan, 1951-)のドローイング
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トム・ウェッセルマン(Tom Wesselman, 1931-2004)のドローイング
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by galleria-iska | 2012-07-27 21:14 | その他 | Comments(0)
2012年 07月 25日

デイヴィッド・ホックニーのポスター「Los Angeles 1984 Olympic Games」(1982)

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第30回オリンピック競技大会(Games of the XXX Olympiad )となるロンドン・オリンピック(London 2012 Olympic Games)の開幕も間近となってきたが、現在のような高い放映権やスポンサーの協賛金によって大会の運営費を賄うという、いわゆる商業主義の発端となったのが、1984年にロサンゼルスで開催された第23回オリンピック競技大会(Games of the XXIII Olympiad)である。赤字が続いたオリンピックへの政治的介入を避け、大会を維持する方法論として採られたのだが、世界共通言語となった貨幣経済の論理は、誰にも分かり易く、かつ合理的なやり方なのかもしれない。広報用に作られた公式ポスターも収益を得るグッズのひとつであり、作家がサインを入れた限定750部の愛好家向けヴァージョンも作られている。ポスターのデザインは、ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg, 1925-2008)を始めとする15人の名だたる現代美術作家が行なっており、その内のひとり、1964年にロサンゼルスに移住したデイヴィッド・ホックニー(David Hockney, 1937-)は、水泳競技のポスターのデザインを行ない、ペイントされたプールで泳ぐスイマーをモチーフにしたポライロイド・コラージュ(註:1)の作品を制作している。ホックニーは、1972年開催のミュンヘン・オリンピックの際にも水泳競技のポスターを手掛けており、その時はリトグラフで制作しているのだが、ポスターに描かれているスイマーが、その褐色の肌に似合わず、どこか病的な表情をしており、飛び込むというよりも墜落していくように見え、あまり評判が良くなかった。そのことを意識してか、ロサンゼルス・オリンピックのポスターでは、顔が見えないよう、スイマーを俯瞰的に捉えた画像を組み合わせ画面を構成している。
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●作家:David Hockney(1937-)
●種類:Poster
●題名:Swimmer
●サイズ:916x612mm
●技法:Offset lithograph
●発行:Knapp Communications Corporation, Los Angeles
●制作年;1982
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ロサンゼルス・オリンピックの公式ロゴ。ロバート・ラウシェンバーグは大会のシンボルであるこのロゴの中に様々な画像をコラージュしたデザインを行なっている。

註:
1.この年ホックニーはポンピドーセンターでの写真展に向けて盛んにポラロイド・コラージュの作品を制作している。
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by galleria-iska | 2012-07-25 19:22 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2012年 07月 19日

ロイ・リキテンスタインのポスター「I Love Liberty Poster」(1982)

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クマゼミがけたたましく鳴き初め、これから暑い夏をクーラーなしで過ごすのかと思うと、早くも気持ちが萎えそうになるが、みんな我慢しているのだから、何とか乗り切らねばと思う。この時期はポスターを始めとして紙類の撮影が大変で、汗だくになりながらポスターをうまくファインダー収めようとすると、なお一層緊張して汗が吹き出すという、かなり危険な状況になるので、しばらくはお休みということにし、ブログらしく日々の暮らしを、と思ったが、歩いて行ける範囲を越えて出掛けるでもなく、何か旨いものを食べるでもなく、人と話すでもなく、毎日ぶつぶつ言いながら一人で過ごしていると、妄想ばかり肥大し、あらぬことを書いてしまいそうになるので、おとなしくしているつもりである。リキテンスタインのポスター「私は自由を愛す」を眺めながら。

●作家:Roy Lichtenstein(1923-1997)
●種類:Poster
●サイズ:989x597mm
●技法:Offset lithograph
●発行:The artist and People for the American Way, Washington, D.C.
●限定:approximately 5000
●印刷:Alan Lithograph, Inc., Los Angeles
●制作年;1982
●目録番号:Corlett:III.29
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by galleria-iska | 2012-07-19 19:35 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2012年 07月 14日

菅井汲のリトグラフ「L'Eclipse au soleil」(1966)

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今年は天体ショー(?)の当たり年とかで、パウル・ヴンダーリッヒの命日にあたる6月6日には金星の太陽面通過が見られるとのことであった。金星といえば、普段は月の近くで輝いているのを眺めるだけだが、太陽と金星と地球が一直線に並ぶと、逆光を浴びる形になり、金星のシルエットを見ることができるのだそうだ。とは言え、5月21日の金環日食(annular eclipse )の時と同様、肝心の観測用の眼鏡を用意しておらず、もっぱらテレビの映像でその現象を見ることになったのだが、ようやく金星が一個の天体であることを実感した次第。自然の成すことに対してはケチを付ける事ができないからか、日本中が沸いた金環日食。当地方では実に932年振りとのことだとかで、どうせなら太陽がすこしつづ欠けていく様子を見てみたいと思い、朝六時頃に起きて空を見上げたが、生憎の曇り空で、太陽の姿はどこにもなかった。このまま金環日食を見ずに終わってしまうのかと思っていたところ、雲が少し薄くなり、雲のフィルターを通して金環日食を少しだけ拝むことができた。それにしても、リング状の太陽など、予め知識を与えられているからいいようなものだが、天文学的な知識を持っていなければ、今の時代であったとしても、その姿に何かよからぬ兆しを見て取ったのではないだろうか。

観察用の眼鏡も用意しない無精な人間だからであろうか、それともボケの前兆であろうか、折角の機会をより愉しむことが出来たかもしれないのに、その時はまったく思い付かないというポカをやらかしてしまった。というのは、少し前に、先に取り上げた菅井の年賀状のことを調べていて、菅井汲が1966年に制作した「日蝕(L'Eclipse au soleil)」というリトグラフがあったことを思い出したのである。今思うに、季節の掛け軸ではないが、何日か前に取り出して飾っておけば、天体ショーもグッと盛り上がったのではなかろうか。二ヶ月近くも経ってから、こんなことを書くのもどうかしているのかもしれないが。

菅井は1950年代から60年代にかけてヨーロッパの主要な国際版画展で立て続けに大きな賞を受賞し(註1)、その名を広く知られるようになるが、この「日蝕」は、1966年に創設されたポーランドの国際版画ビエンナーレ(通称:クラコウ国際版画ビエンナーレ)の第一回展で大賞を受賞した作品である。菅井はこの時期、オートルートとともに、森と太陽のシリーズに取り組んでおり、この作品では、月ではなく、森がその役を果たしているいるのだろうか。この作品、総目録によれば、アルシュ紙に刷られていることになっているが、手持ちのものはリーヴ紙に刷られており、年記も65となっている。総目録に掲載されている図版でも年記は65なのだが、制作年は66年とされている。菅井の表記ミスなのであろうか。

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●題名:L'Eclipse au soleil
●サイズ:665x535mm(760x560mm)
●技法:Lithograph
●紙質:BFK Rives
●発行:Galerie Brusberg, Hannover
●印刷:Michel Casse, Paris
●制作年:1966
●目録番号:118

註:
1.
1959年:第三回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ.....国際買上げ賞
1960年:第二回東京国際版画ビエンナーレ.........東京近美賞
1961年:第四回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ.....第三席
1961年:第二回グレンヘン色彩版画トリエンナーレ.....大賞
1962年:第三十一回ヴェネツィア・ビエンナーレ(版画部門)デイヴィッド・ブライト基金賞
1965年:第八回サンパウロ・ビエンナーレ(版画部門)...最優秀賞
1966年:第一回クラコウ国際版画ビエンナーレ.......大賞
1972年:第一回ノルウェー国際版画ビエンナーレ......名誉賞
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by galleria-iska | 2012-07-14 19:33 | その他 | Comments(0)
2012年 07月 12日

田中一光展の案内状「The Museum of Modern Art, Toyama」(1998)

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現在、富山県立近代美術館で第10回「世界ポスタービエンナーレトヤマ」(6月3日~9月3日)が開催されている。三年に一度開催されるこのポスター公募展は、実際に印刷発表されたものと自主制作のオリジナルのニ部門で募集が行なわれる。今回は世界53の国と地域から両部門合わせて4622点の応募があり、日本人が初めてグランプリを受賞したとのことである。これまでの日本人デザイナーの活躍を思えば、もっと獲っていてもおかしくないのだが、それでは自画自賛になりかねないので、名のあるデザイナーには応募を控えるよう御達しが回っているのかもしれない。ともあれ日本人の意匠表現が群を抜いていることは確かのようである。

そんな日本が輩出したグラフィックデザイナーの代表格ともいえる田中一光(Tanaka Ikkou, 1930-2002)の大規模な回顧展が1998年に富山県立近代美術館で開催された。これはそのときの案内状である。尾形光琳の「紅白梅図屏風」の水の流れを彷彿させる意匠を盛り込んだデザインは田中一光によるものであろうか。この年の夏、一泊二日の日程で、友人と一緒に初めて富山を訪れた。富山と言えば、幼い頃に目にした大きな風呂敷包みを担いでやって来る薬売りが有名であるが、北陸の工業地帯としてアルミ産業も盛んであり、版画やポスター用のスマートな額もここで作られている。このときの目的は美術館ではなかったが、時間に余裕が出来たので立ち寄ってみたところ、この展覧会が開催されていた。会場に入ると、シルクスクリーンのポスターも販売(1000円だったか?)しているとのアナウンスが聞こえてきたが、生憎の雨模様で購入するのを諦め、この案内状を何枚かいただいてきた。

今から30年前に開館した富山県立近代美術館は主に20世紀以降の美術を収集しているが、設立当初からデザイン分野の紹介にも力を注いでおり、1985年から世界ポスタートリエンナーレトヤマを開催し、受賞作を収蔵するなど、現代作家のポスターにも注目している。また館の企画展のポスターのデザインはすべてグラフィックデザイナーの永井一正氏が行なっている。

展覧会は「第七回 現代芸術祭 伝統と今日のデザイン 田中一光」展と題され、戦後の日本のデザイン界を牽引してきたデザイナー田中一光(Tanak Ikkou, 1930-2002)のデザインの歩を辿るものであった。デザインと美術の境界を跨ぐ仕事の部分に多少興味があったが、モダン・デザインに日本的な要素を上手く溶け込ませる手法や古都で培った色彩感覚を活かしたソリッドな構成は、日本人よりも海外の目により新鮮に見えたのではないかと思えた。自分としてはもう少し“くすぐり”とか“ひねり”に期待したのだが、その辺はこのデザイナーのデザイン思想には無い要素なのかもしれない。常設展示の方ではポスター・コレクションの一部を見ることができた、また、その時まで知らなかったのだが、この美術館には富山県出身の瀧口修造の常設展示室があり、デカルコマニーの作品を初めて目にすることができたのは、思いがけない収穫であった。

もうひとつ、展覧会とは関係ないことだが、富山県の郷土料理で駅弁でも知られる「鱒寿司(ますのすし)」に、駅弁以外にもいくつも種類があることを知った。中には一日限定数百個というものもあって、四種類ほど購入し食べ比べてみた。酸味の利いたもの、甘味のあるもの、さっぱりとした口当たりのもの、それぞれ特徴があり、楽しく頂いた。富山の人たちは自分の舌にあったものを求めているのだろう。もう十数年も前の話である。

●作家:Tanaka Ikkou(1930-2002)
●種類:Annoucement
●サイズ:150x105mm
●技法:Offset
●発行:The Museum of Modern Art, Toyama
●制作年:1998

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by galleria-iska | 2012-07-12 11:57 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2012年 07月 08日

パウル・ヴンダーリッヒのポスター「Galerie Negru」(1978)

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1978年10月17日から12月16日にかけてパリのオクターヴ・ネグル画廊(Galerie Octave Negru, Paris)で行なわれたパウル・ヴンダーリッヒ(Paul Wunderlich, 1927-2010)のエロティックなドローイング34点による展覧会《Homo Sum(ホモー・スム)》の告知用に制作されたオリジナルデザインのリトグラフポスター。同じイメージを用いた版画作品も同時に制作されている。この展覧会の題名となった《ホモー・スム》という言葉は、ローマの喜劇作家テレンティウス(Terentius)が書いた『自虐者』という喜劇の「Homo sum, humani nihil a me alienum puto」(私は人間である。人間に関わることで私に無縁なものは何もない)という台詞にかけたものらしく、ヴンダーリッヒはそれを「私はホモである」と読み、1959年に制作したリトグラフ12点の連作版画「自ずと説明されるもの(qui s'explique)」以来の“同性愛(ホモセクシュアル)”をテーマとして取り上げている。このポスターでは、合わせ鏡のように向き合って立つ男と女それぞれ一組のカップル-両者の間には深い断裂がある-によって“同性愛”が示されており、背景自体も人体の一部が拡大されているように見えるのだが、告知用のポスターとあって、直接的な表現は避けているようである

常人にとって《倒錯》した性愛であるホモセクシュアルの愛の諸相を描いたこの連作ドローイングは、ヴンダーリッヒの鉛筆による流麗な描線に水彩による淡彩あるいは油絵の具のアクセントが加えられ、シュルレアリスムにも通底するであろうサディスチィックな不気味さとともに妖しい美しさを解き放っている。しかしながらそれは、ヴンダーリッヒ自身の性的志向を表したものではなく、あくまでも絵画的表象によるエロスの表出を目した、ヴンダーリッヒの幻視が生み出した虚構の世界である。ヴンダーリッヒは、反道徳、反倫理、異端という言葉に象徴されるように、敢えて誤解を生みそうなホモセクシュアルというスキャンダラスなテーマを取り上げ、何一つ表明はなされていないが、ホモセクシュアルを、様々な制度を作り出してきた生殖という行為から人間の性を解放し、破壊や殺戮を繰り返す人間存在の空しさを埋め、また道徳や宗教を超えた人間の存在意義の根幹をなすものとしての、創造や美の原動力とも成り得るエロスの可能性を示す手段として捉えようとしているのだろうか。

自らの言葉では語らないヴンダーリッヒであるが、その画題についていえば、〈私は人間である。人間に関わることで私に無縁なものは何もない〉という言葉によって“自ずと説明される”のかもしれない。

●作家:Paul Wunderlich (1927-2010)
●種類:Poster
●題名:homo sum
●サイズ:649x496mm
●技法:Lithograph
●発行:Galerie Negru, Paris
●限定:500
●制作年:1978
●印刷:Matthieu AG, Dielsdorf
●目録番号:R.587
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画面左上にはヴンダーリッヒが1970年から通うことになるスイスのディールスドルフ(Dielsdorf)にある版画工房、マチュー(Matthieu AG)の名が記されている。

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展覧会に合わせてネグル画廊から刊行された画集『Homo Sum -34 Oeuvres Par Paul Wunderlich』(Text. Yves Navarre)ソフトカバー。一方、ヴンダーリッヒの版元であるオッフェンバッハのフォルカー・フーバーからはスリップケース付きのハードカバー『Homo sum - 34 Zeichnungen』(Text. V. Fritz J. Raddatz)が限定2000部で刊行されている。
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by galleria-iska | 2012-07-08 16:56 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2012年 07月 05日

パウル・ヴンダーリッヒのポスター「Kunst & Knoll International」(1963)

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アーティストポスターの魅力は作家の自由な発想によるイメージもさることながら、それと組み合わされるタイポグラフィの用い方も重要なポイントになる。一方、古くはアールヌーボーのポスターに象徴されるように、作家自身によるレタリングを用いた、ある意味完全なオリジナル・デザインポスターは、ポスターの機能的な役割を越え、ひとつの作品として成立する場合もあり得る。パウル・ヴンダーリッヒの初期のポスターにも、ピカソやマチス等と同じように、そのような例が幾つか見られる。1963年にヴンダーリッヒの契約画廊で版元のひとつであったハノーファーのブルスベルク画廊(Galerie Brusberg, Hannover)で行なわれた、ヨーロッパの現代美術作家が一堂に会した展覧会「Kunst & Knoll International」の告知用ポスターもその内のひとつであろう。このポスターでは、絵画的形象は、画面左側に描かれている個人としてのアイデンティティーをすべて剥ぎ取られた裸体の人物だけで、あとは全て、ヴンダーリッヒによる軟体動物を思わせる字体で描き込まれた展覧会情報や参加した作家の名前である。リトグラフの技法のひとつである解き墨(ラヴィ)を用いて濃淡を付けられた文字は、記号としての機能を残しつつも、人物像と同化し、また有機的な形象として画面に不思議な文様を作り出している。

ここで取り上げるのは、フランスのリト工房、デジョベールでリーヴ紙を用いて刷られた限定50部のもので、画面の右下余白に署名、左下の余白には限定番号が書き込まれている。

●作家:Paul Wunderkich(1927-2010)
●種類:Poster(Plakat)
●題名:Kunst + Knoll International
●サイズ:690x520mm
●技法:Lithograph
●限定:50
●紙質:BFK Rives
●発行:Galerie Brusberg, Hannover
●印刷;Desjobert, Paris
●制作年:1963

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by galleria-iska | 2012-07-05 19:26 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2012年 07月 04日

菅井汲の年賀状「Carte de voeux 1968 & 69 」(1968 & 69)

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菅井汲(Sugai Kumi, 1919-1996)が版画の制作を始めるのは、パリに渡って三年後の1955年からであるが、それと時を合わせるように、オリジナルデザインの賀状(Carte de voeux)を作り始める。それらは販売に供されることは無く、菅井と生前交流のあった者だけが知るものとなっていたが、最近になってそのうちの何点かを入手、ようやくその存在を知り得た次第。それらを見てみると、その時々の版画のスタイルが賀状のデザインに反映しており、菅井は賀状の制作を通して、本人も気付かない内に小さな版画宇宙を作り上げていたのかもしれない。既に何点か取り上げているが、ここでは、デザイン的な特徴を踏まえ、1968年と69年の二点の賀状を取り上げてみる。

1968年の賀状の構成は、1967年から68年にかけて制作された「森と二つの太陽」「太陽の森」「緑の太陽」における赤い太陽と緑の森の組み合わせに呼応している。菅井の森に対する興味というか関心は、今日の自然回帰や環境問題といったエコロジー的な視点によるものではなく、もっと根源的な日本人の自然観に根ざしたものというか、日本人の精神構造の根幹を成していたアミニズム的要素を含んだものであり、直接的には高速道路、殊にアウトバーンの両脇に続く緑の塊(マッス)としてのドイツの森の印象から得られたものではないかと思われる。

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●種類:Greeting card(Carte de voeux)
●サイズ:156x135mm
●技法:Lithograph
●紙質:Arches
●発行:Sugai Kumi, Paris
●印刷:Sugai Kumi, Paris
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菅井汲の版上サイン

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1969年の賀状では、車のフロントガラスを通して差し込んでくる太陽の光が表現されている。この太陽の光を表す意匠は、1965年の「オートルートの朝」や「日蝕」に現れ、前述の「森と二つの太陽」「太陽の森」にも用いられている。

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●種類:Greeting card(Carte de voeux)
●サイズ:159x123mm
●技法:Lithograph
●紙質:Arches
●発行:Sugai Kumi, Paris
●印刷:Sugai Kumi, Paris
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菅井汲の版上サイン

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菅井汲のカラーリトグラフ「日蝕」

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●題名:L'Eclipse au Soleil
●サイズ:665x535mm(755x560mm)
●技法:Lithograph
●限定:100
●紙質:BFK Rives(レゾネにはArchesとある)
●発行:Galerie Brusberg, Hannover
●制作年:1966


版画家としての菅井汲の40年に渡る版画制作の概要を知るには、1996年に阿部出版から刊行された版画総目録『SUGAI Catalogue raisonne de l'oeuvre grave 1955-96』が有用であるが、編者の意図、あるいは作家の意向なのであろうか、欧米の作家の総目録では当たり前となっているポスターや案内・招待状、賀状といった、菅井汲が生きた時代の証であり、共にその時代を生きた者の記憶を辿る糸口となり、更には記憶と深く結びついたに時代の空気感や匂いまでも蘇らせてくれるフェメラの項目が設けられていないのが残念である。
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by galleria-iska | 2012-07-04 20:07 | その他 | Comments(0)