ガレリア・イスカ通信

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2012年 08月 28日

ロバート・ラウシェンバーグのカシェ「Population and Development」(1994)

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ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg, 1925-2008)が1994年に国連支部建設のための資金調達を目的とする国際連合協会世界連盟(WFUNA=The World Federation of United Nations Associations)の依頼で制作したオリジナル作品は、限定750部のリトグラフ「Bulkhead(Day Lights」に起こされるとともに、人口問題に関する国際的な取り組みとして、同年エジプトのカイロで開かれた「国際人口開発会議(International Conference on Population and Development=ICPD)」のファーストデイカバー(FDC)のカシェとして使われた。このFDCにはウィーンの国連機関内の郵便局が1994年に発行した国連切手が貼られており、図案はフィンランドの織物作家オイリ・マキ(Oili Mäki, 1925-2011)による「世界の創造(Creation du Monde)」である。ラウシェンバーグがカシェとリトグラフのために制作したオリジナル作品は、ラウシェンバーグの環境への取り組みの一環として、フォトコラージュで制作された図像を写真撮影し、それを環境に配慮した野菜の色素を原料とする新しい染料を用いた転染法(vegetable dye transfer)(註:1)でプリントしたものである。画面の下半分は判然としないが、上半分は、交通信号機と商店のテントという、人口増加と経済発展の見本とも言える日本のいたるところで見かける光景を切り取ったもの。

●作家:Robert Rauschenberg(1925-2008)
●種類:Cachet
●サイズ:92x164mm
●技法:Offset lithograph
●限定:25000
●発行:WFUNA
●制作年:1994
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"From a vegetable dye transfer on paper by Robert Rauschenberg, USA"とある。



註:
1.1930年代半ばにコダック社(Eastman Kodak )によって紹介され、1946年に現在の方法に改良されたダイ・トランスファー(Dye Transfer Printing)は、東京都写真美術館の技法解説によると、“カラー写真を三色(イエロー、マゼンタ、シアン)分解して、画像をレリーフでつくったマトリクスと称される支持体に染料を染み込ませ、専用の紙などに転染してカラー写真をつくる方式。クリアな発色と保存性にすぐれているとされ、カラー作品のオリジナル・プリントを制作する技法として使われたが、公害問題が発生し現在は行われていない”とある。作業工程が複雑で、熟練を要するためにコストも高く、量産には向いていないプリント方式であるが、カラー分解による微妙な色の調整や暗部の階調描写が可能なため、作者の意図を十分に表現するのに適した技法と言える。エリオット・ポーター(Eliot Porter, 1901-1990 )、ウィリアム・エグルストン(William Eggleston, 1939-)、ハリー・キャラハン(Harry Callahan、1912-1999)といったカラー写真の可能性を切り開いた写真家や、ポップアートの先駆者的存在として、早くから写真イメージを合成した作品を制作したチャード・ハミルトン(Richard Hamilton, 1922-2011)らがカラープリントに用いている。
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by galleria-iska | 2012-08-28 19:59 | その他 | Comments(0)
2012年 08月 15日

菅井汲のリトグラフ「Petit Lac」(1965)

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八月も半ばとなり、町はお盆で静かである。ただ青い空に白い雲といった真夏の風景はどこえやら、今日も朝からどんよりとした天気で蒸し暑く、じっとしていても汗がにじむ。こんな時は涼を求め、川遊びにでも出掛けてみたいと思うが、老体が一人で出掛け事故に遭っても誰も気付かないのではないかと思うと、尻込みしてしまう。涼しげな絵でも見れば気分も変わるかと思い、大野麦風の『大日本魚類図集』(1935年)の“鮎”の図があったのではないかと探してみたが、もう随分と前に手放してしまったのかもしれない。せめて青い色でも眺め、涼を得ようと取り出してきたのが、これである。沼も女陰も深みに嵌れば抜け出せない。

1963年に開催された展覧会を契機にハノーファーのブルスベルク画廊と契約した菅井汲(Sugai Kumi, 1919-1996)が1965年に制作したリトグラフの小品「小湖(Petit Lac)」(300x193mm)である。同じ年に制作された「青い太陽(Soleil Bleu)」(760x560mm)のヴァリアントではないかと思われるが、印刷所が異なる。前者は同じくブルスベルク画廊の契約作家であったヴンダーリッヒがリトグラフの刷りを研究したパリのデジョベール工房(ピカソの初期のリトグラフの刷りを行ったエドモン・デジョベール(Edmond Desjobert)が設立、その息子ジャック(Jacques Desjobert)が引き継いだ )で、後者はこちらもパリのリトグラフ工房で版画の出版も行なっている1954年設立のミシェル・カッセ(Michel Cassé)。ムルロー工房と比べると、この二つの工房の刷りの違いは殆んど無いように見える。ここで取り上げるのは、出版された100部とは別に刷られ、デジョベール夫人に献呈されたもの。菅井の洒落であろうか。

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●題名:Petit Lac
●サイズ:300x193mm
●技法:Lithograph
●限定:100
●紙質:BFK Rives
●発行:Galerie Brusberg, Hannover
●印刷:Desjobert, Paris
●制作年:1965
●目録番号:114
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by galleria-iska | 2012-08-15 18:41 | その他 | Comments(0)
2012年 08月 10日

アンディ・ウォーホルのカシェ「UNDRO against disaster」(1979)

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国連のA級諮問民間団体で、国連に加盟する各国の国際連合協会(UNA)を統括する国際連合協会世界連盟(WFUNA=The World Federation of United Nations Associations)は、教育活動の資金を得る為に、世界の著名な作家にオリジナルの版画の制作を依頼しており、その図柄は国連切手のファーストデイカバー(FDC)のカシェ(Cachet)として使われている。アンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)も《WFUNA》の依頼で1979年に「U.N. Stamp(国連切手)」(F.S.II.185)という題のリトグラフを制作、それは国際連合郵便(United Nations Postal Administration)が発行した国連災害救済機関(UNDRO=United Nations Disaster Relief Organaization)の活動を広報する二種の切手「UNDRO Against Fire & Water」のファーストデイカバー(1979年3月9日)のカシェとして使われた。

●作家:Andy Warhol(1928-1987)
●種類:Cachet
●サイズ:92x164mm
●技法:Offset lithograph
●限定:25000
●発行:WFUNA
●制作年:1979
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カシェの部分
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封筒の裏側。〈PHOTO-COLLAGE BY ANDY WARHOL(U.S.A)〉とある
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by galleria-iska | 2012-08-10 12:43 | その他 | Comments(0)