ガレリア・イスカ通信

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2013年 04月 30日

キース・へリングのポスター「Keith and Andy and Andy Mouse」(1986)

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ポップ・アートの旗手で映像作家でもあったアンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1928-1987)と親子ほど年が離れた若きポップ・アーティスト、キース・へリング(Keith Haring, 1958-1990)のコラボレーションが1986年、20周年を迎えたモントルー・ジャズ・フェスティバル(Montreux Jazz Festival)の公式ポスター(註1)において実現する。同じ年、ヘリングは、もうひとつの重要なコラボレーションとして、ウォーホルを題材にしたシルクスクリーンによる4点の連作版画「Andy Mouse」を制作している。“アンディ・マウス”と名付けられたその版画集は、ポップ・アートのアイコンと化したウォーホルへのオマージュとして制作されたもので、ヘリングはウォーホルを、ミッキー・マウスやドル紙幣といったアメリカの大衆が好むものと重ね合わせて描いている。ウォーホルは、画家になる切っ掛けになったドル紙幣を描き成功し、その顔はドル紙幣の顔ぐらい売れ、ドル紙幣に囲まれ、スターとして支持される。それはウォーホルがまさに“人気があって売れているものが売れる”を実践した作家であるからに他ならない。ウォーホルは、ドル紙幣や漫画のキャラクターがそうであるように、実体としての対象ではなく、実体を剥ぎ取られた殻、つまり記号化された表面を描くことによって無限の反復を可能とし、一回性を重んじてきた美術界に現代社会のシステムを持ち込むことで、大衆の注目を集めることに成功した。一方、へリングはアートそのものを大衆化することで、若者の支持を得た。

この版画集はウォーホルのファクトリーで制作されたようで、ウォーホルが版画制作にしばしば用いた38x38”(965x965mm)のフォーマットを用い、刷りを1977年の「ハンマー・アンド・シックル(Hammer and Sickle)」からウォーホルのマスター・プリンターとなったルパート・スミス(Rupert Jasen Smith, 1953-1989)が行なっている。これはそのポスター・ヴァージョンとも言えるもので、版画と同じくシルクスクリーンで制作されており、刷りもルパート・スミスによるものとのことである。ヘリングとウォーホルがサインを入れた限定30部の版画集「Andy Mouse」は、一点あたり35000ドル以上するため、おいそれとは手が出せないが、稀少性や資産価値を求めない向きには、これで十分楽しめる。イメージの下には、20世紀のアメリカ現代美術を代表する数々の作家達と交友関係を持ち、いち早くヘリングの天才を発見した美術評論家、キュレーターのヘンリー・ゲルツァーラー(Henry Geldzahler,1935-1994)(註2)が版画集に寄せた一文「Keith and Andy and Andy Mouse」が記載されている。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Poster
●テキスト:Henry Geldzahler(1935-1994)
●サイズ:1000x780mm
●技法:Silkscreen
●限定:300
●印刷:Rupert Smith, New York
●発行:George Mulder Foundation, Inc.
●制作年:1986
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註:

1.ウォーホルとヘリングのコラボレーションによる「第20回モントルー・ジャズ・フェスティバル」の公式ポスター。Silkscreen poster printed by Albin Uldry, Bern. 100x70cm
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2.ヘンリー・ゲルツァーラー(Henry Geldzahler,1935-1994)は1935年、ベルギーのアントワープにユダヤ人家族の子として生まれる。1940年、家族は難を逃れるためにアメリカに移住。1957年にイェール大学(Yale University)を卒業する。在学中はイェール大学の秘密結社のひとつ”マニュスクリプト・ソサエティ(Manuscript Society)のメンバーであった。1960年、メトロポリタン美術館のスタッフに加わるためにハーヴァード大学の大学院を中退する。そこでアメリカ美術のキュレーターとなり、後に20世紀美術の最初のキュレーターとなって、1969年に彼のランドマークとなる展覧会「New York Painting and Sculpture:1940-1970」を企画する。彼のユニークな点は、その当時の他のキュレーターたちと違い、興味をもった作家たちと友人となり、同じ美術界の仲間として親しく交際したところである。彼が親交を持った作家としては、ウィレム・デ・クーニング、ジャスパー・ジョーンズ、ラリー・リヴァース、フランク・ステラ、アンディ・ウォーホル、デイヴィッド・ホックニーやジャン=ミシェル・バスキア、そしてキース・へリングである。
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ニューヨーク市マンハッタンにあるメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)で開催された「New York Painting and Sculpture:1940-1970」の図録。408 b & w plates 48 color plates, 494pp. published by E.P.Dutton & Co.,Inc., New York, 1969
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by galleria-iska | 2013-04-30 19:44 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2013年 04月 16日

アールデコのデザイン(3)「Deco España-Graphic Design of the Twenties and Thirties」(1997)

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サンフランシスコのクロニクル・ブックスからフランス編に続いて刊行されたアール・デコ・デザイン・シリーズのスペイン編。スペインのアール・デコは、あまり紹介されることはないように思うが、服飾(Mode)やコスメチック(Cosmetic)などのデザインはフランスの優雅で洗練されたデザイン感覚に影響を受けており、工業(Industry)分野ではアメリカにおける流線型を特徴とするデザインを感じさせるものが多く見られ、そこに地中海やアフリカといった異国情緒が加わる。後半部分ではタイポグラフィにかなりのページが割かれているが、こちらもフランスのアール・デコのスタイルやドイツの合理主義に基づく簡潔な書体を取り入れたものが主流となっている。いずれせよ、どこか垢抜けなさが残るのは否めない。その中でスペインの独自性が発揮されているのが、1930年代中頃に勃発したスペイン市民戦争を題材とする政治的なポスター群で、赤と黒を多用した独特な色彩感覚が目を奪う。

●種類:Design
●題名:Deco España-Graphic Design of the Twenties and Thirties
●著者:Steven Heller & Louise Fili
●サイズ:204x223mm
●技法:Offset
●発行:Chronicle Books, San Francisco
●制作年:1997
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by galleria-iska | 2013-04-16 20:43 | その他 | Comments(0)
2013年 04月 13日

アールデコのデザイン(2)「French Moderne-art deco graphic design」(1997)

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サン・フランシスコのクロニクル・ブックス(Chronicle Books)のアール・デコ・デザイン・シリーズ(Art Deco design series)の第5巻として刊行された「フレンチ・モダン(French Modern)」は、アール・デコ発祥の地であるフランスの、服飾やワインといったフランス文化を象徴するものから工業に至るまで、生活のあらゆる分野に浸透していったアール・デコの洗練されたデザイン・エッセンスを紹介している。表紙のデザインには、当時発掘が相次いだ古代エジプト美術の流行を反映したパリの百貨店のカタログ"Catalogue au Bon Marché"の表紙を用いている。

●種類:Design
●題名:French Moderne-art deco graphic design
●著者:Steven Heller & Louise Fili
●サイズ:204x223mm
●技法:Offset
●発行:Chronicle Books, San Francisco
●制作年:1997
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by galleria-iska | 2013-04-13 18:11 | その他 | Comments(0)
2013年 04月 13日

アールデコのデザイン(1)「Dutch Moderne-Graphic design from De Stijl to Deco」(1994)

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ご存知のようにアール・デコは、1925年の4月から11月にかけてパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels modernes)」の略称であるアール・デコ博を由来とする呼称であり、フランスを中心とするヨーロッパやアメリカにおける工芸・建築・絵画・ファッションなどの分野に広く波及した装飾美術の様式である。1925年様式(Le Style 1925)ともいわれ、昭和初期の日本にも影響を及ぼしている。アール・デコのデザインというと、歴史的建築や高価な装飾品といった時代を象徴するような遺産に目が行きがちであるが、当時の人々の身近にあった日用品の中にもアールデコのデザインのエッセンスを感じるものが数多く存在している。ただ、それらの多くが消費され捨てられる運命にあることから、これまで見過ごされてきた感があるのは否めない。サン・フランシスコにある出版社、クロニクル・ブックス(Chronicle Books)から"Art Deco Series"と銘打って刊行された、アール・デコのグラフィック・デザインに焦点を当てたシリーズは、1920年代初頭から第二次世界大戦が始まるまでのイタリア(1993年8月刊)、オランダ(1994年4月刊)、日本(1996年4月刊)、フランス(1996年11月刊)、スペイン(1997年9月刊)、イギリス(1998年5月刊)、ドイツ(1998年9月刊)のアール・デコのデザインを国別に取り上げ、コンパクトに纏められた解説と豊富なカラー図版によって、その国の文化や市民生活とどのように関わっていたのかを知ることが出来るばかりでなく、その国独自の傾向も併せて知ることが出来る、なかなか興味深いシリーズである。価格も$17.95と手頃である。アール・デコに特別関心を持っている訳ではないが、よく通った書店のセールで見つけ、そのデザインの多様性に興味を覚え、オランダ、フランス、スペイン編を購入した次第。当時はまだイギリスとドイツは刊行されていなかったと思う。

●種類:Design
●題名:Dutch Moderne-Graphic design from De Stijl to Deco
●著者:Steven Heller & Louise Fili
●サイズ:204x223mm
●技法:Offset
●発行:Chronicle Books, San Francisco
●制作年:1994

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by galleria-iska | 2013-04-13 18:05 | その他 | Comments(0)
2013年 04月 06日

菅井汲の年賀状「Bonne et heureuse année!」(ca.1960)

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菅井汲(Sugai Kumi, 1919-1996)の年賀状は既に何度か取り上げているが、今回のものは初期の「書(Calligraphy)」を思わせるスタイルで制作されたもので、菅井が自宅のアトリエに石版用のプレス機を据え付けた1960年に制作された版画作品と共通の特徴を見い出すことが出来る。菅井はこのプレス機を用い、この年から翌年にかけて精力的に自ら刷りと出版を行なっており、それは、第二回東京国際版画ビエンナーレ(1960年)、第二回グレンヘン色彩版画トリエンナーレ(1961年)、第四回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ(1961年)といった国際版画展での入賞と結びついている。そんな中で制作されたであろうこの年賀状は、力強い筆触による記号性を孕んだ形象が、造形性の強い古伊賀のどっちりとしたフォルムを彷彿させるが、それは、菅井が本来意図したものかどうかは別として、彼の内なる日本的なものが無意識に発現したものといえようか。

●作家:Sugai Kumi(1919-1996)
●種類:Greeting card(Carte de voeux)
●サイズ:109x140mm(109x280mm)
●技法:Lithograph
●紙質:Arches
●発行:Sugai Kumi, Paris
●印刷:Sugai Kumi, Paris
●制作年:ca.1960
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年賀の挨拶 "Bonne et heureuse année! Kumi et Mitsuko Sugaï" 菅井は1956年にパリで出会った広島県出身の画家川本光子(Kawamoto Mitsuko, 1930-)と結婚しており、この年賀状の差出人も連名となっている。菅井夫人となった光子はその後、菅井光(Sugai Mittsu)の名で銅版画の制作を中心とする創作活動行なう。

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by galleria-iska | 2013-04-06 18:00 | その他 | Comments(0)
2013年 04月 03日

キース・へリングのビニールバッグ(2)「Pop Shop Plastic bag」(1985)

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キース・へリング(Keith Haring, 1958-1990)がポップ・ショップから売り出したビニール・バッグには少なくとも6種類のカラーバリエーションがあることは前にも記したが、ヘリングのファンが手放さないのか、既に捨てられてしまったのか、なかなか出てこない。先日ドイツのインターネット・オークションにヘリングが天使のドローイングと直筆サインを加えたポップ・ショップ・トウキョウのものが出品されていたが、278,88ユーロと、美術品として見ればまだ安いかもしれないが、それなりの価格で落札された。僅かな金額でアートを万人のものにというヘリングの当初の思惑は、ポップ・ショップを通じてある程度達成されたと思われるが、数十年も経つと、多くのものが傷んだり失われていくことから、稀少性が加味されていくのは当然のことかもしれない。当方としては、ノーマルのものでいいので、マルティプル・アートとして認知される前に何とか手に入れたいと思う。今手元にあるのは4種類である。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●題名:Pop Shop Plastic bag
●サイズ:484x425mm
●技法:Silkscreen
●製造:PAK 2000, New Hampshire
●制作年:1985
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ビニールバッグを製造した《PAK 2000》は、1972年にスイスの大手の包装用容器メーカーによって設立されたビニール製買い物袋の製造メーカー。紙製の買い物袋や包装箱の製造も行なっており、顧客には世界的なブランドが名を連ねている。
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by galleria-iska | 2013-04-03 18:53 | キース・へリング関係 | Comments(0)