ガレリア・イスカ通信

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2013年 10月 30日

ベルナール・ビュッフェの招待状「Village Felli:Galerie d'Art」(1981)

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ベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet, 1928-1999)の招待状は、その多くがオリジナルデザインのもので、パリの有名な版画工房ムルローで厚手のアルシュ紙を使って印刷されていることから、ひとつの版画作品とも言えなくもない。またビュッフェ独特の手書きの案内文が、さらにその魅力を高めており、仄かに残るインクの匂いも、視覚や触感とともに、額装されてしまった版画では味わえない嗅覚を刺激し、ビュッフェのファンならずとも食指を動かされる。

この招待状は、1979年にフランス東部の都市ブザンソン(Besançon)に設立されたヴィラージュ・フェリ(Village Felli)画廊が、設立二周年として開催したベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet, 1928-1999)展の初日に行なわれた、フランスの政治家で歴史家のエドガール・フォール(Edgar Faure, 1908-1988)の主宰のヴェルニサージュ(Vernissage)への招待状として発行したものである。招待状にはエドガール・フォールによる祝辞が添えられている。画廊のあるブザンソンはスイスと国境を接するフランス東部のドゥー県 (Doubs)の県庁所在地で、緑豊かな丘陵とドゥー川に囲まれ、自然の要塞に守られるようにして築かれた城塞都市である。『ノートルダム・ド・パリ』や『レ・ミゼラブル』の作者として知られるフランス・ロマン主義の詩人、小説家ヴィクトール=マリー・ユーゴー(Victor-Marie Hugo, 1802-1885)は、共和派でナポレオン軍の軍人であった父の赴任先であったこの地で生を受けている。

招待状に描かれているのはビュッフェの妻のアナベル(Annabelle)で、1980年にビュッフェの専属画廊であるパリのモーリス・ガルニエ画廊(Galerie Maurice Garnier)で開催された裸体(Nus)をテーマとする作品展の招待状として制作されたものを転用しており、年記部分は省かれている。同じ構図で作られた告知用ポスターがあり、こちらもガルニエ画廊で使われたものを転用している。

●作家:Bernard Buffet(1928-1999)
●種類:Invitation
●題名:Annabelle
●技法:Lithograph
●サイズ: 197x151mm(197x302mm)
●印刷:Atelier Mourlot, Paris
●制作年:1981年

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こちらは、1980年にパリのモーリス・ガルにエ画廊で開催されたビュッフェ展の招待状だが、他の招待状とともに知人に譲ってしまったため、今は手元にない。

●作家:Bernard Buffet(1928-1999)
●サイズ:200x155mm(200x310mm)
●題名:Visages Annabelle
●技法:Lithograph
●印刷:Atelier Mourlot, Paris
●目録番号:『Catalogue raisonné Bernard Buffet Lithographe』Vol 2, page 26, référence #338bis
●制作年:1979
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告知用のポスター、650x500mm、限定7000部(内4000部がガルニエ画廊用、3000部がヴィラージュ・フェリ画廊用)




2014年8月6日追記:

1980年2月にガルニエ画廊で開催された「裸体画(Nus)」展の招待状を再度入手することができた。
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●作家:Bernard Buffet(1928-1999)
●種類:Invitation
●サイズ:196x154mm(196x310mm)
●技法:Lithograph
●紙質:Arches
●印刷:Atelier Mourlot, Paris
●制作年:1979
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by galleria-iska | 2013-10-30 12:48 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)
2013年 10月 25日

エル・リシツキーのブックデザイン「The isms of art 1914-1924(Reprint)」(1990)

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本書の原書である『The isms of art 1914-1924(芸術のイズム 1914-1924』(註1)は1925年に、ロシア・アヴァンギャルドの中心的存在のひとり、エル・リシツキー(El Lissitzky, 1890-1941)とダダイストのハンス・アルプ(Hans Arp, 1887-1966)の共同編集により、ドイツの出版社Eugen Rentsch Verlag, Erlenbach-Zürich, München, Leipzig から刊行されたもの。テキストはドイツ語、フランス語、英語の三ヶ国語併記。装丁、タイポグラフィ、レイアウトをリシツキーが担当しており、三ヶ国語のテキストに対応するように、黒の垂直の線と水平の三段グリットからなる建築構造的なデザインによる目次やテキストが11ページ、次いで48ページからなる図版がフォト・モンタージュや構成主義的な造形を感じさせる見せ方で配置されている。テキストは各主義を代表する作家によるもの。本書はそれを忠実に復刻したもので、1990年にドイツの出版社Lars Müller Verlag, Badenから刊行され、1995年と1999年に再版されている。また本書には、同じく三ヶ国語併記による別紙印刷物として、現在バーゼルにある《Hochschule für Gestaltung und Kunst der Fachhochschule Nordwestschweiz/ University of Art and Design. University of Applied Sciences, Nordwestschweiz》の教授を務めるAlois Martin Müllerによる芸術前衛についての解説「Letzte Truppenschau/Derniere Revue des Troupes/The Last Parade」が添えられている。

たまには虫干しと思って取り出してきたわけだが、購入当時は全く内容も知らず、ロシア構成主義のデザインとアメリカの現代美術、特にハードエッジやミニマルアートとの関連性に惹かれて購入したものの、想像していたものとは全く違っていたことから、ずっと仕舞いっぱなしなっていた。本書に紹介されている美術運動としての“イズム”の多くは、1910年代から1920年代にかけての、産業の近代化による社会情勢の変化や第一次世界大戦やロシア革命といった大きな社会変動を背景にして生まれてきたものである。第二次世界大戦後の著しい経済成長により繁栄を謳歌したアメリカで始まった大量生産・大量消費という今日的な社会風景は、ソ連崩壊による冷戦終結がもたらした資本主義の勝利によってさらに加速し、それまでのイデオロギー的な国家を成立させている理念や社会構造自体を経済が飲み込んでいくこととなる。今日の、国家そのものが世界を巻き込んだ貪欲な経済活動によって際限なく消費される状況下では、人間の精神的遺産さえも消費の対象となっており、絵画においても、複製、引用、借用、転用と言った手法の名の下、自然に代わる新しい風景として、人間が作り出したイメージを再現なく消費し続け、オリジナルが持つアウラを限りなく希薄なものにしてしまっている。そして、作る喜び、生み出す苦しみ、育てる力、繋げる努力、そういったものを成立させる前提としての世界そのものが内部崩壊しつつある中で、かつてのように理想を追求する純粋な思想というものを創出し得るエネルギーが失われてしまっているのかもしれず、また何かしらの思想や哲学といった時代に先行する世界観を作家の直観力によって提示してきた美術とっても、新たな創造を目指すことの意味を探り出すことが困難になってきているように思えてしまう。

さらに言えば、世界は永遠であることが揺らぎつつあることを予感しながらも、その危機を乗り越える想像力を地にしがみ付いて生きる人間の手の内に見い出すことは、もはや不可能なのかもしれない。あまたのSF小説にあるように、人類の存亡を掛けて宇宙に進出していかねばならないという話は、空想や活字の中の絵空事ではなく、現実に起こり得る事として、国際宇宙ステーションの建設や火星への有人飛行計画が現実味を与えているように見える。その時、たとえば絵画は「黙示録」以外に人類にどんなヴィジョンを提示することができるのであろうか...。

●作家:El Lissitzky(1890-1941)
●種類:Book Design
●サイズ:265x205mm(257x195mm)
●技法:Lithograph
●印刷:Waser Druck AG, Buch/ZH
●発行:Lars Müller Verlag, Baden, 1990
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註:
1.『The isms of art 1914-1924』was published by Eugen Rentsch Verlag Erlenbach-Zürich, München, Leipzig in 1925. Black and offwhite boards decorated with typography in red, black and white by El Lissitzky. First edition; cover, design and typography by El Lissitzky; printed in red and black by Stähle und Friedel, Stuttgart. 256 x 196 mm.; pp. XI + 48: coated paper with 76 photographs of artists and works, illustrating brief descriptions of art movements of 1914-1924: Constructivism, Verism, Prouns, Neoplasticism, Dada, Simultaneity, Suprematism, Cubism, Futurism, Expressionism, Purism, Metaphsysical art, Abstraction, Merz.
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by galleria-iska | 2013-10-25 12:34 | その他 | Comments(0)
2013年 10月 19日

キース・ヘリングの紙袋「Pop Shop Tokyo Paper Bag」(1987)

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南青山にあったポップショップ・東京には、オン・サンディーズを訪ねた折りに一度だけ立ち寄ったことがある。その時はヘリングが展開するポップショップに“あざとさ”のようなものを感じてしまい、個々の商品には関心を持てなかったのだが、ポップ・ショップ・東京のロゴをあしらったデザインのティーシャツには好感が持てた。記念にと思い値段を尋ねると、最後の一枚というような話で、思いのほか高かったので、買うのを諦めた。

東京店にもニューヨーク店と同じように、ティーシャツやビニールバッグと同じイメージがプリントされた、購入した商品を入れる紙袋が用意されていたようで、これはそのティーシャツを入れるのに使われたサイズのものである。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Paper bag
●サイズ:370x302mm
●技法:Silkscreen
●発行:Pop Shop Tokyo
●制作年:1987

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ヘリングの版上サイン

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東京店で販売されていたビニールバッグ。



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by galleria-iska | 2013-10-19 12:35 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2013年 10月 12日

ドゴン族の彫刻術「Dogon Statuary」(1995)

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マリ共和国のニジェール川流域のバンディアガラの断崖で農耕を営むとされるドゴン族。外界との距離を置きその独自性を保っていたが、テレビ番組でその特異な社会制度や文化が取り上げられたりして、西欧社会との接触が増えるに従い、なかば観光地化されてしまったように思われる。昨今は日本のテレビや観光客も少なからず訪れているようであるが、物珍しさも手伝って、どこか自然公園で動物を観察するのにも似ていなくもない。とは言え、動物と違って意思の疎通が可能であるため、そこに何らかの利益の交換という図式が生まれ、生活の向上を求め観光客目当てのお土産屋も現れることとなる。結果、神話世界の精神性が序々に失われていくこととなるが、似たような事例はどこにでも転がっている。ドゴン族の木彫についても、20世紀初頭のパリでアフリカの彫刻が人気を博し、西欧人によって収集し尽くされた他のアフリカの原始彫刻と同じように、神話世界の表象としての意味が解かれ、通貨的な交換物として土産屋に並ぶようになる。つまり模倣が始まるのである。そして模倣はマンネリを生み、退廃し、失せていく運命にあるが、ときに回帰を生み出し、革新的な存在によって復興を遂げる場合もある。

そのドゴン族や他の部族がそれぞれの世界を成立させ自立した社会を保っていた頃に作られた木彫を調査、その様式や技法を体系的に分類する研究の成果として著された大著がフランスのストラスブールの出版社Éditions Amez,から1995年に刊行された。その前年に出版予約の案内がどこからか舞い込み、1200フランという高価なものであったが、ドゴン族の木彫をコレクションしているという現代美術のリチャード・セラ(Richard Serra )とゲオルグ・バゼリッツ(Georg Baselitz)が、自らの作品の関連性についてコメントを載せてているとの紹介に釣られて予約購入した。ただ如何せん立体音痴のため、なかなかその魅力を見い出せないでいる。

●題名:Dogon Statuary
●著者:Hélène Leloup
●種類:Sculpture
●サイズ:332x223x47mm
●技法:Photoengraving
●発行:Éditions Amez, Strasbourg
●制作年:1994~1995
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by galleria-iska | 2013-10-12 13:08 | その他 | Comments(0)