ガレリア・イスカ通信

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2013年 12月 28日

マリオ・アヴァティの年賀状「Galerie Sagot-Le Garrec」(1968)

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長谷川潔や浜口陽三と並び称されるメゾチントの名手、マリオ・アヴァティ(Mario Avati, 1921-2009)が、メゾチントを始めてから10年経った1967年にパリの版画専門画廊サゴ‐ル・ガレック画廊(Galerie Sagot-Le Garrec)の1968年の年賀状として制作したもの。水の女神エウリュノメとゼウスの愛の結晶である三姉妹が輪舞する「三美神(Les Trois Grâces)」を描いたものではないかと思われるが、アヴァティは、古典的な構図に倣いつつも、多くの巨匠が描いたような理想化された優美な裸体表現には向わず、新しい年を祝うに相応しい、輝き、喜び、花盛りといった寓意性に着目し、この主題を取り上げたようだ。静謐な画面を特徴とするメゾチントには意外かもしれないが、アヴァティはこの作品で、輪舞する三美神の肢体や巻き髪にキュビスム的な造形を取り入れることで、長谷川潔や浜口陽三の作品には見られない躍動感やリズム感を生み出している。

●作家:Mario Avati(1921-2009)
●種類:Greeting card(Cartes de vœux)
●サイズ:125x151mm(125x302mm)
●技法:Mezzotint(Manière Noire)
●紙質:BFK Rives
●発行:Galerie Sagot-Le Garrec, Paris
●制作年:1967
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by galleria-iska | 2013-12-28 15:21 | その他 | Comments(0)
2013年 12月 19日

ホルスト・ヤンセンの絵草子「Laatzen's Bilderbogen: 2 Folge:Bogen II 1」(1967)

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図版:Laatzen's Bilderbogen: 2 Folge:Bogen II 1

18世紀後半、人間の骨格に基づく「外面の表情というものは、要するにそこから内面を識るためのものである」という類型学的な見地による観測によって、「道徳的に善であればあるほど美しく、道徳的に悪であればあるほど醜い」という主張を行ない、“観相学”を学問として確立しようとしたラファーター(Johann Kaspar Lavater, 1741-1801)の『観相学断片』(1775年-1778年)に対し、『観相学について:観相学者への反論』(1778年)を著し、感情表現によって人格を読み解こうとする“感情表出学”を提唱した18世紀ドイツの物理学者ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク(Georg Christoph Lichtenberg, 1742-1799)はまた、格言家としてもその名を残しており、画家ホガースの版画研究でも知られている。これはそのリヒテンベルクをテーマにホルスト・ヤンセン(Horst Janssen, 1929-1995)が亜鉛版エッチング(Strichätzung)で制作した絵草子「Lichtenberg's Bilderbogen」のひとつとしてを作られたもので、出版元は1960年代にヤンセンの書籍や亜鉛版エッチングによる作品を数多く出版したハンブルクの書肆ヘルマン・ラーツェン(Hermann Laatzen, Hamburg)。

画面の中央には、リヒテンベルクの肖像なのであろうか、アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo, 1527-1593)にも通じるかもしれない幾つも生き物が組み合わさって合成された複雑・怪奇な様相を見せる頭部が描かれているように見えるのだが、いまひとつ判然としない。というのは、まだ実物を目にしていないからであるが、さらにそこに騙し絵的な要素が加わることで、画面は一層複雑化し、見る者の理解を妨げようとする意志さえ感じさせるが、そのエニグマと化した図像とは対照的に、画面右下には、すぐにそれと判るヤンセンの自画像が描き込まれている。ヤンセンは、かつてレンブラント(Rembrand van Rijn, 1606-1669)がそうしたように、目撃者として加わり、また創作者の証として、画面に自身の肖像を残そうとしているようである。このポスターについては、これまで何度かドイツのネットオークションで入手を試みたが、常に今一歩(100円そこそこの差)ところでライバルに持っていかれるという、なんとも悔しい思いをしている。次回運良く入手することが出来たら、画面を仔細に観察してみたいと思う。

●作家:Horst Janssen(1929-1995)
●種類:Plakat
●題名:Laatzen's Bilderbogen: 2 Folge:Bogen II 1
●サイズ:637x444mm
●技法:Strichätzung(Zinkätzung)
●限定:1000
●発行:Hermann Laatzen, Hamburg
●刷り:Hans Christians, Hamburg
●制作年:1967

その他の作品には以下のものがある。

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Laatzen's Bilderbogen: 2 Folge:Bogen 1A
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Laatzen's Bilderbogen: 2 Folge:1. Bogen (印刷に使われた紙には、白い紙と無漂白の紙の二種類あり、画像は後者のもの)
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by galleria-iska | 2013-12-19 19:20 | ホルスト・ヤンセン関係 | Comments(0)
2013年 12月 04日

フェルナン・レジェの案内状「Galerie Louis Carré」(1954)

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フェルナン・レジェ(Fernand Léger, 1881-1955)と言えば、太い輪郭線による単純なフォルムと明快な色彩を特徴とするスタイルで現代美術にも大きな影響を与えたフランスの画家であるが、そのレジェがムルロー工房を主宰するフェルナン・ムルローを勧めでリトグラフの制作を始めるのは、戦後間もない1947年のことである。リトポスターの制作はそれよりも早く、レジェがナチス・ドイツ軍のフランス侵攻を避けてアメリカに亡命する1940年にパリのルイ・カレ画廊(Galerie Louis Carré)で行なった個展の告知用ポスターをムルロー工房が制作、レジェをリトグラフの制作に向わせる糸口が開かれる。その後、ムルロー工房は1969年までフランスで行なわれたレジェの展覧会の告知用ポスターの殆んどを手掛けることになるのだが、その中でオリジナル・ポスターと言えるのは、レジェが1951年にパリの《Maison de la Pensée Française》で行なった個展の際に建設労働者をモチーフにデザインしたポスターが唯一のものである。その他のものにはガッシュなどの作品が用いられており、告知用のポスターと並行してレジェが署名を入れたエスタンプと呼ばれる複製版画も同時に作られている。ムルロー工房がレジェのポスターを手掛けることになったのは、ムルロー工房は戦前から国立美術館のポスターの制作を一手に引き受けており、その評判が画廊にも届くようになったからである。

ここで取り上げるのは、レジェが晩年の1954年に契約画廊のルイ・カレ画廊で行なった個展「レジェ作品における風景画(Le Paysage dans l'oeuvre de Léger)」の際に作られた案内状である。表紙のカットはレジェによるもの。案内状に付けられた出品目録によると、この個展には1905年から1953年までに制作された26点の絵画作品が出品されている。ルイ・カレ画廊は、グリス、クレー、マチス、ピカソ、そしてレジェなど二十世紀美術の錚々たる画家の展覧会を企画したルイ・カレ(Louis Carré, 1897-1977)が1938年にパリ8区のメシーヌ通り10番地(10 avenue de Messine, Paris 8)に開いた画廊で、1980年代にはエルヴェ・ディ・ローザ、フランソワ・ボワスロン、ロベルト・コンバスといったフィギュラシオン・リーブルの作家と契約、現在も同じ場所で活動を続けている老舗画廊である。

●作家:Fernand Léger(1881-1955)
●種類:Annoucement
●サイズ:270x190mm(270x380mm)
●技法:Lithograph(?)
●発行:Galerie Louis Carré, Paris
●制作年:1954
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図版:同展の告知用ポスター、制作年:1954、サイズ:580x430mm、印刷:ムルロー工房

参考文献:
図録「ムルロ工房リトグラフ展-リトグラフ50年の歩み」株式会社西武百貨店美術部、1984年
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by galleria-iska | 2013-12-04 18:19 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)