ガレリア・イスカ通信

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2014年 04月 21日

キース・ヘリングの紙袋「Pop Shop Paper Bag(Yellow, Medium)」(1986)

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1999年に亡くなった世界屈指のバッジ(Buttons)コレクター、マーシャル・レヴィン(Marshall Levin)が所蔵していたキース・ヘリング(Kieth Haring,1958-1990)のポップショップ(Pop Shop)の紙袋。通常見かけるのは白い紙袋であるが、この紙袋にはオレンジ色に染色された用紙が使われ、シルクスクリーンによる印刷にはブルー・グリーン系のインクが使われている。サイズは白い紙袋のミディアムサイズにあたる296x216mm。

興味深いのは、レヴィンが紙袋の裏側に“6/1986”と入手時期をメモ書きしていることだ。1986年6月といえば、ポップショップの開店(1986年4月19日)からまだ日も浅く、グリニッチ・ヴィレッジ (Greenwich Village) に居を構えていたレヴィンが、ヘリングのバッジを購入するためにソーホーにあったポップショップに足を運んだとしても不思議ではない。が、注目すべきは、このメモ書きが、この紙袋がポップショップの初期に使われたものである証となっている点である。この紙袋には、ビニールバッグと同じイメージが使われているが、レイアウトと配色がデザインを学んだヘリングの意図するものであったのか疑問が残る。白い紙袋と並べてみると判るのだが、この紙袋の方がイメージが若干小さい。その僅かな差でもイメージがずっと小さく見えてしまうのだが、さらに地のオレンジ色が強過ぎて、イメージが背景に沈んでしまい、ポップショップの顔として描かれたイメージをインパクトのないものにしてしまっている。それが理由で白い紙袋に変更あるいは統一されたのだとしたら、この紙袋の使用期間は1986年のごく一時期に限られることになり、もしそうであれば、紙物マニアの心をくすぐるものになると思うのだが...。

●作家:Keith Haring(1958-1990)
●種類:Paper bag
●サイズ:296x216mm
●技法:Silkscreen
●発行:Keith Haring for Pop Shop, New York
●制作年:1986
●来歴:Excollection Marshall Levin(19??-1999)
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by galleria-iska | 2014-04-21 19:29 | キース・へリング関係 | Comments(0)
2014年 04月 03日

ロイ・リキテンスタインのポスター「A New Generation of Leadership」(1992)

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感情を排した知的で明快な作風で知られるポップアーティストのロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein, 1923-1997)の作品の中でも異彩を放つこのポスター「A New Generation of Leadership (The Oval Office Poster)」は、オーバル・オフィスと呼ばれる大統領執務室を描いたもので、日本人には何かしら違和感を感じるモティーフであるが、当アメリカ国民にとっては、権力の中枢としてのホワイトハウスの中にあって行政の中心を成す大統領執務室は、自由の象徴としての自由の女神像と同様、アメリカという国のまさにシンボル的存在であり、自由の女神を描いたポスター「I Love Liberty Poster」とともに、なかなかの人気を得ている。

リキテンスタインはその大統領執務室を正面から左右対称の構図として描いているのだが、事前に執務室内部を調査し、実際に掛けられていたことのある絵画を含む装飾的な細部を忠実に画面に組み入れている。その意味では写実的な絵画とも言えなくもないが、リキテンスタインの絵画の特徴である太い輪郭線と青、黄、赤の三原色による平面性を強調した画面は一方で、ピクトグラムのように高度にシンボライズされた視覚記号としての意味を持つものになっている。このポスターの成立背景は、リキテンスタンの版画目録などによると、次ぎのようなものである。

1992年、ロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein, 1923-1997)は、表現の自由に賛同するアーティストのプロジェクト(the Artists for Freedom of Expression project)の一環として、民主党のクリントン/ゴア(Bill Clinton/Al Gore)の選挙キャンペーン中に、民主党全国委員会(Democratic National Committee)のために、他の15人のアーティスト(Ida Applebroog, Jennifer Bartlett, Jim Dine, Jimmie Durham, Leon Golub, Red Grooms, Jenny Holzer, Joan Mitchell, Elizabeth Murray, Edwin Schlossberg, Julian Schnabel, Cindy Sherman, Nancy Spero, Carrie Mae Weems, and William Wegman)ともに作品の制作を依頼され、オーヴァル・オフィス(The Oval Office)と呼ばれる大統領執務室を描いたシルクスクリーンの版画作品を制作する。このイメージはクリントンの当選後、大統領就任委員会によって大統領就任記念ポスターのひとつに選ばれ、民主党全国集会の先立って制作された。版画作品とポスターが発売された後、リキテンスタインは1993年1月に同じイメージを用いた絵画作品「The Oval Office」を完成させている。

ポスターは版画作品と同様、リキテンスタインと共にポップアートを先導したアンディ・ウォーホル(Andy Warhol, 1927-1987)の1980年代の版元のひとつとして、『神話(Myth)』(1981)、『危機に瀕した種(Endangered Species)』(1983)、『広告(ADS)』(1985)といった10点組みの版画集を手掛けたニューヨーク市のロナルド・フェルドマン・ファイン・アーツ(Ronald Feldman Fine Arts, Inc.)が発行。版画目録によれば、作家が署名を入れたものが100部ほどあり、限定6000部のうち350部は表紙用の用紙〈85# cover weight]〉、後の5,650部は本文用の用紙〈110# text weight〉を使って印刷されている。発行されたポスター全てという訳ではないと思うが、今回取り上げるものを含め、これまで手にしたものは何れも巻き皺や折れなどの欠点があった。これは購入先の業者の話によると、ポスターがボランティアで販売に参加した障害を持つ人たちの手によって巻かれたためであるとのことであった。

このイメージは、1994年の10月から95年の1月にかけてワシントン DCのナショナル・ギャラリー・オブ・アート(National Gallery of Art, Washington, DC)で開催されたリキテンスタインの版画の回顧展のポスター(670x645mm) にも使用され、リキテンスタインが亡くなった1997年には、厚手の上質紙を用いて復刻(限定1000部)されている。

●作家:Roy Lichtenstein(1923-1997)
●種類:Poster
●題名:A New Generation of Leadership(The Oval Office Poster)
●サイズ:865x965mm
●技法:Offset lithograph
●限定:6000
●発行:Ronald Feldman Fine Arts, Inc., New York
●印刷:Zarett Litho, Inc., New York
●制作年:1992
●目録番号:Corlett III.40
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参考文献:
Corlett, Mary Lee. The Prints of Roy Lichtenstein: A Catalogue Raisonne 1948-1993. Hudson Hills Press, New York, 1994.
Corlett, Mary Lee. The Prints of Roy Lichtenstein: A Catalogue Raisonne 1948-1997(Second, reviced edition). Hudson Hills Press, New York, 2002.







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by galleria-iska | 2014-04-03 12:54 | ポスター/メイラー | Comments(0)
2014年 04月 03日

デイヴィッド・ホックニーの写真展図録「Photographs by David Hockney」(1986-1988)

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          図版:デイヴィッド・ホックニー“英国大使館での昼食”1983年2月16日、東京(117.3x211.6cm)                          
             (David Hockney: Luncheon at the British Embassy Tokyo, 16 February 1983)

3月16日の日曜日、家庭の日(毎月第3日曜日)最後の無料観覧を利用し、食にまつわる作品を国内各地の美術館から集めて開催中の展覧会『ア・ターブル!―ごはんだよ! 食をめぐる美の饗宴―』を観るために、三重県立美術館に出掛けた。そこで偶然にもデイヴィッド・ホックニー(David Hockney, 1937-)の大きなフォトコラージュ『英国大使館での昼食 1983年2月16日、東京(Luncheon at the British Embassy Tokyo, 16 February 1983)を観ることができた。縦117.3cm、横211.6cmと、ホックニーのフォトコラージュの中でも最大クラスの作品で、キュビスムの複数の視点から捉えられた対象を再構成する手法に倣って考案されたホックニー独自の写真術(註1)によって、カメラのレンズを通して捉えられたホックニーの視点の移動を追体験できるように画面が構成されており、同時にそれは、単一の静止画面である一枚の写真からは得られない、重層的な時間体験を可能にするものである。個々の写真は、落ち着いた色調の壁面や床と呼応するダークブラウンのボードに重なり合うようにコラージュされ、和やかに進む食事会のインティメイトな雰囲気を映し出しており、フェルメールを想起させるようなガラス窓から差し込む柔らかな外光が、人物やテーブルの上に置かれた食器やグラスに印影と立体感を与え、ホックニーの絵画における自然主義的な端正で正確な画面を見るような美しさを放っていた。

この図録は1986年から88年にかけてワシントンD.C.の《International Exhibitions Foundation》によって企画され巡回したホックニーの写真展に合わせて刊行された図録で、ホックニーが1983年にロンドンのビクトリア・アルバート美術館で行なった写真についての講演から書き起こしたエッセイを収録している。

●作家:David Hockney(1937-)
●種類:Exhibition catalogue
●サイズ:255x203mm
●技法:Offset
●発行:International Exhibitions Foundation, Wahington, D.C.
●印刷:Schneidereith & Sons, Inc.,
●制作年:1986
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註:
1.ホックニーは自身の写真術について次のように語っている:
“僕は新しい写真をキュビスムの思想に従って並べてみた。キュビストの静物画の一種の模倣をやってみようと、ギターを借りて伝統的静物画のモティーフらしくしつらえると、おもしろいことにピカソやブラックの作品に見えてきた。1枚きりの写真よりは、この方がずっと本当らしく見える。この方法はたちまち多くのモチィーフに及んだ。手間のかかるのは肖像画だった。全体の部分を1枚1枚カメラで撮る時は、一つの目でみていることにしかならないが、完成した全体を見渡すなら、二つの目を使って見たというリアリティが強調されてくる。全体を見ようとすれば目は動き続けるけれど、それが、生の体験とちょうど同じなのは言うまでもない。”("David Hockney Photographs",Petersburg Press, London,1982)より

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by galleria-iska | 2014-04-03 12:32 | 図録類 | Comments(0)