ガレリア・イスカ通信

galleriska.exblog.jp
ブログトップ

<   2014年 08月 ( 1 )   > この月の画像一覧


2014年 08月 07日

ベルナール・ビュッフェの招待状「Galerie Matignon」(1981)

a0155815_11194286.jpg
フランスの具象画家ジャン・ジャンセム(Jean Jansem, 1919-2013)夫妻がパリ8区のマティ二ヨン通り(Avenue Matignon)に開いたマティ二ヨン画廊(Galerie Matignon)は、今は娘のフローラ・ジャンセムに運営が任されているが、1980年2月にベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet, 1928-1999)のリトグラフのレゾネ刊行記念の展覧会「Lithographies l'oeuvre complete」を開催している。同じマティ二ヨン通りには、ビュッフェの版元のひとつで、1977年から専属画廊となったガルニエ画廊(Maurice Garnier, 1900-2014)もあるのだが、ビュッフェの展覧会歴の無いマティ二ヨン画廊が会場になったのは、作家、画廊、出版社の権利関係からだろうか、ちょっと不思議な気もする。マティ二ヨン画廊には一度訪れたことがある。その時は展覧会は開かれておらず、ジャンセムの大きなキャンバスが数点壁に掛けられていたように記憶する。

ビュッフェが開会式のためにデザインしたのがこの招待状。様式化されたテーブルの上に置かれた花瓶や鉢植えの花は今も人気のある画題で、この招待状もつい最近ヨーロッパのネットオークションで二万円余りで落札されている。ビュッフェの招待状のうち、リトグラフで制作されたものについては、彼の刷り師であったムルロー工房のシャルル・ソルリエ(Charles Sorlier)によって印刷されており、招待状とは別刷りで画家が署名を入れた版画ヴァージョンも存在している。

ビュッフェと言えば、荒廃した戦後の虚無感の中で、自らの痛みを告発するかのような、時代の不条理を切り裂く刺々しく鋭い描線で一世を風靡した画家であるが、1950年代は色彩よりもフォルムに重点が置かれ、冷たく静的な画面を特徴とする。1960年代に入ると抽象表現主義風の大げさな身振りが加わり、我々が思うところのビュッフェのイメージが出来上がり、1970年代を通してビュッフェのスタイルとして広く知れ渡り、パリの画壇でも押しも押されぬ立場になる一方、時代の証人として役割は終わり、マンネリとの批判の中で、一時そのスタイルを破棄したこともあったようだが、1980年代になると、その画風に再び変化が現れる。見ようによっては現代美術における平面性に多少なりとも接近しているのかもしれない、塗り絵のような薄っぺらな画面が登場する。技法の果てにあるマンネリは、ある種の洗練さや成熟度を醸し出す一方で、改革的であろうとする創造行為を停滞させる澱みのようなものである。自ら作りだした様式が時代精神を色濃く反映したものであるが故に、逆にその時代に縛られてしったビュッフェの悲劇を我々は目撃することとなる。

ビュッフェのリトグラフのレゾネ『Bernard Buffet Lithographe』(註1)について言えば、確か1980年の中頃までは300フラン(約7500円。1F=25円で換算)で購入できたが、バブルの到来ともに、日本国内での価格は天井知らずとなり、一時期20万円を超えるまでになった。今は価格も落ち着き、3万円前後といったところであろうか。

●作家:Bernard Buffet(1928-1999)
●種類:Invitation
●サイズ:198x155mm(198x310mm)
●技法:Lithograph
●紙質:Arches
●印刷:Atelier Mourlot, Paris
●制作年:1980
a0155815_1120158.jpg




註:

1.『Bernard Buffet Lithographe』は刷り師のシャルル・ソルリエによって編まれたビュッフェのリトグラフのレゾネ第一巻。ビュッフェが1952年から1979年にかけて制作した325点のリトグラフを収録している。235ページ、仏語。
[PR]

by galleria-iska | 2014-08-07 18:13 | 案内状/招待状関係 | Comments(0)